きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「天使たちの探偵」原尞(ハヤカワ文庫JA)
天使たち。
即ち、子どもたちの係わる6篇が収録された短編集。
人と人。
その関わり方が、どれも少しずつ物悲しくて、胸が疼く。
天使たちの探偵はスーパーマンではないけれども。
誠実に彼らと、そして仕事と向き合い、
絡み合った糸を紐解いていく。
『少年の見た男』聡明さ故に、少年の背負ったもの。この先の彼の人生に影を落としませんように。
『歩道橋の男』人の弱さは他人が計るものではない。彼女はあんなにもしなやかだ。
『選ばれる男』清々しい政治家に久しぶりに出会った。少年の笑顔がただ嬉しい。
あとがきにかえての書き下ろし。
その短さで、その密度。
凄いわ!と、唸るしかなかった。原尞、全力でおススメします!
「残念ながら、探偵は無口なのです」
この台詞でなぜか「おしゃべりな殺し屋」を連想した。
原尞と北方。ハードボイルドつながりの、佐賀つながり。
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「交渉人は休めない~榎田尤利100冊記念特別版~」 榎田尤利(SHYノベルス)
今回は『夏のリング』のみ再読。
久留米と魚住のその後を書いてくれて、本当にありがとう!
シリーズ一作目から再読をはじめて、
ここまで読み切って改めて幸せに泣けました。
長い長い遠距離恋愛の終焉が
まさかあんな形での着地になるなんて、思ってもいなくて。
びっくりして、嬉しくて。
ジワッと泣けました。
作中で彼らは38歳。
全く変わっていないと思っていた彼らの在り方だけど、
久留米の想いも、魚住の想いも、更に確固たる方向へ変わっていて。
一歩踏み出した魚住の変化が、私とても嬉しかった。
サヤカと良樹のカップルも可愛らしくて素敵。
みんなお幸せに☆
記念本らしく様々なカップルが登場しますが、
私やっぱり轡田さんとユキが大好きです。
この流れだったら次は『ラブ&トラストシリーズ』か?って感じですが。
次は未読で積んである『nez【ネ】』にいきます。(笑)
「黒龍の柩 下巻」北方謙三(幻冬舎文庫)
時代の波に乗り切れなかった近藤勇。
滲む彼の諦念が、とても哀しい。
そして土方は、時代と共に駆け抜けたのか、
或は、時代に抗ったのか。
いや、彼は最後の瞬間まで彼の人生を駆けていた。
夢のかけらをその胸に抱いて。
かけらが砕けて散った時、彼は別な男へと生まれ変わる。
男たちは掲げた夢のために一丸となって戦っていた。
一刻を争う激動の時代において、
時を待とうとしたことが夢を壊した。
これは、時代の波に乗り切れなかった男たちの物語。
そして、移り変わる時代を精一杯生きた男たちの物語。
ハードボイルドな幕末小説。
北方浪漫、ここにあり!
「戦に、限界があると思っているのか。
あるのは、勝つか負けるか。
生きるか死ぬか。
それだけだ」
彼を迎え入れるためにそこまでの覚悟で戦っている男たちがいるのに。
「待つ」ことを是とした彼。
だったら何故北を目指した!?と、言いたくなったけど。
彼にはほかの誰もが担えない責任と思いがあった。
ならば、「無念」という言葉は彼にだけは口にしてほしくなかった。
こうなることを選んだのはあなたなのだから。
そんな時「BAKUFUって統べろう!」を思い浮かべてみたら、憤りも消えました。←色々台無し(笑)
「I’m home―魚住くんシリーズ・メモリアル」榎田尤利(光風社)
魚住くんシリーズ完結記念本。
アメリカに留学した魚住と日本に残った面々とのメールのやりとりが
あたかも彼らがそこにいるかのようなリアルさで、
思わず口元が緩んでしまいます。
各々のメールの文面が彼ららしくて、その存在感が半端ないの。
表紙絵にはじまって、茶屋町さんのイラストを
ひたすら眺めていられるのも嬉しい。
おまけに漫画まで!
動いている彼らが見られるってとても幸せ。
ホントこれだけでも私、満足です。
あとはキャラ紹介や、作品ダイジェスト(これも茶屋町さんのモノクロイラストが秀逸)
榎田さんへのインタビュー等々が収められています。
これ、出版時にちゃんと買っておけばよかったっとちょっと後悔。
あの時は、ま、いっか、って流したんだよね。
結局、手に入れるのに3倍近く払ったけど、それに関しては後悔はまったくなし。
ただ、短編が収められているわけではないので、
これからの入手を検討される方はそこだけは要注意です。
……と打ちつつ、今Amazon見たら、売値の桁が違っててびっくりした。
どゆこと!?
「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
この世界に在るものの、一切の肯定。
そして、あるがままの我々の在り方の肯定。
一度は世俗に塗れたシッダールタの、否定の一切ない、
あたたかく愛に満ちたまなざしが胸に沁みる。
そんな彼とて、完璧ではない。
彼は父を顧みず、或は、息子を縛る。
痛みを知り、挫折を知り、哀しみを知る。
だからこそ、他者にやさしく、どこまでも寛容で在れる。
シッダールタの人生を例えるなら、まさしく「川」に他ならない。
たゆとう流れの中で、多くのことを知り、或は習得する。
流れの中で出会った他者との対話を通して、さらなる高みを極めていく。
ヘッセ自身が解脱者であるかのような壮大な物語。
その世界の美しさに、ただ、溜息。
今回の高橋氏のツボ訳は「ひげぼうぼう」でした。
ヒゲボーボー……原文、気になる(笑)
これは二度三度読んで身になる物語だと思いました。
完成度の高さ(って言うのかな?これだっていう言葉がみつからない)半端ない。
「リムレスの空~魚住くんシリーズ5」榎田尤利(クリスタル文庫)
変わったのは魚住だけではなかった。
二人の関係の変化は、久留米をも変えていく。
人は、その一点に留まっていることはできなくて。
大なり小なり変わっていく。
個々の人生がある以上、
必ずしも心浮き立つような変化ばかりではなく、
それぞれが立ち向かっていかなければならない壁が存在する。
ハピエンでありながら、ちょっと切なくなるような思いを抱えての読了。
だけど、これ以外ない選択だと思うのです。
自分の脚できちんと立っていながら、深い想いを抱えて寄り添っていられる
この二人の距離感がたまらなくいい。
本当に素敵な作品です。
「風が吹いているときに船をお出しなさい。
背中を押す追い風を感じたら、それがタイミングなのよ」
魚住の祖母のこの台詞、凄く響いた。
うん。頑張ろう、私。
「過敏症~魚住くんシリーズ4」榎田尤利(クリスタル文庫)
感動的とすら言える恋愛の成就。
なんかもう、ホント良かった。
幸せを噛みしめて感無量。
腹を括った久留米の行動力はカッコよかった。
ああいう割り切り方ができるって、すごいなぁ。
過去に魚住と係った人たちは、みんな零れるようにいなくなってしまったけれども。
いま、この瞬間に魚住と係わっている人たちはみんな、やさしいぬくもりを伴ってそこにいる。
彼らにひっぱられて、情緒豊かになっていく魚住の変化がただ嬉しい。
マリの母の言い草はどうなの?とい思ったけれども。
「それでも娘に会いに来るのよね」の言葉にハッとさせられた。
最後の最後。
セーブしていたと言った久留米の漢気(?)に脱帽。
魚住、ホント大事にされてるね。
甘ったれた声で久留米を呼ぶ魚住。
この描写がホント好き。
久留米は良くも悪くも直球の男なんだなぁ。
そのまっすぐさが私はとても好き。
人との関わり方に奥行というか、深みのある良書だと思う。
10年以上ぶりに再読して、改めて作品の良さを噛みしめ中。
次回、最終巻!
「メッセージ 魚住くんシリーズ3」榎田尤利(クリスタル文庫)
押し殺していた感情の放出。
泣けて良かった、と思うけれども。
そこに至るまでの過程がとても辛い。
ようやく見つけた幸福の在りどころ。
幸せを……大好きな人を失う恐怖に耐えきれないのならば、
自分を消してしまえばいい。
そんな極論に至るまでの陰には、どれほど大きな愛と孤独が隠れているのだろう?
幸せって何?
不幸って何?
問いかけずにはいられない。
彼女からのメッセージ。
汲み取ってほしい。
多分彼は、貴方なしで生きていくことは難しい。
だけど。
読み進めれば、不安定さから抜け出した魚住の様子に安堵する。
もう大丈夫。
そんな安心感が、ただ嬉しい。
この引き、ずるい!
ってゆーか、めっちゃドキドキしたんですけどー!←再読です(笑)
バターサンド、萩の月、ういろう、赤福、ちんすこう。
北から南へ。
全部食しました!そして、地元の銘菓がちゃんと入っていることが嬉しい。
個人的にはちんすこう大好き!
沖縄料理大好き!
今回もやっぱりイラストがたまらなく秀逸。
「黒龍の柩 上」北方謙三 (幻冬舎文庫)
史実と虚構の見事な融合。
もう、これが史実でいいんじゃない?と言いたくなる、北方流新選組。
己の描いた通りの死に様を見事に貫いた男。
切ないまでに散り際を模索し続ける男。
そして、変革する時代の先を見極めようとする男。
決してまみえるはずのなかった男が語った国の在り様が、彼を北の大地へと誘うのだ。
「誠」の旗の元に集った男たち。
肩で風を切って闊歩していた時代も、確かにあった。
だが、自らの意思ではどうにもならない時勢に流されながら、
何時しか彼らの道は分かたれていく。
大局のその先を見据えた男の行く末はどうなるのか。
下巻、読むしかないよね。
そもそもが「兼定」がきっかけで再読しようと思った私の動機は
どうなの?って感じではありますが。
動機はさておき、きっかけがあったおかげで再読できているわけで、結果オーライ?
五稜郭にもう一度行きたいな。
水滸伝シリーズありきの見方になっちゃうけど、
ここから水滸伝……というより、楊令伝の方に通じるものがあっちこっちで感じられて
なんだか感慨深い。
大河をまともに見ていたわけではないのに、
沖田総司のビジュアルは藤原竜也以外の何者でもなくて
よっぽど印象深かったのね、としみじみ思ってみました。
「プラスチックとふたつのキス 魚住くんシリーズ2」榎田尤利(クリスタル文庫)
人は、大なり小なり傷を抱えて生きているのだということを、
つくづくと思い知らされる。
その傷が、癒える方向に向かえばいいのだろうけれども。
呑み込むのか、消化するのか、忘れるのか。
或は、血を流し続けるのか。
傷との向き合い方は人それぞれ。
でも、癒えない傷の苦しさに他人を引きずり込むようなことをしてはいけない。
死神の誘いを振り切った魚住。
魚住を呼んだ久留米の声が、健全な生命力を伴って響いたことが嬉しい。
流れる日常の営みの中で、ゆっくりと近づいていく久留米と魚住の距離感がとても心地よくて、
だけど、時々差し込まれる痛みに泣きたくなる。
溜息を呑み込んで、次巻へ。
私の中では魚住くんシリーズと言えば茶屋町さん。
イラストの醸し出す空気感がたまらなく好き。
