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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「神々の山嶺 上」夢枕獏(集英社文庫)



【この地上にただひとつしかない場所。地の頂。そこにこだわりたい】

翼をもたない人間は、大空に憧れ、鋼鉄の翼を作った。
空には自力では舞い上がれない。
けれども、聳え立つその山の頂には、自らの足で登り立つことができる。
選ばれし、ごく一握りの人間にのみ立つことを許されたその場所は、
この地上のどこよりも天に近い場所。
マロリーのエヴェレスト初登頂の是非の謎。
山に魂ごと取り込まれたかのような羽生の人生。
そして、マロリーの謎と羽生に惹かれる深町。
あたかも、高度数千メートルの山に立っているかのような臨場感あふれる描写に
ひたすらのめり込む様に頁を捲り続けて上巻終了。
先の展開がまったくわからないので、本当にドキドキしています。


長谷と羽生。
日常では接点のない二人が「山」を介してこれほど密につながっているというのが
なんだか不思議。
そして、二人の在り方がとてもいたたまれない。


内容(「BOOK」データベースより)

カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。

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「ヴェネツィアに死す」トーマス・マン(光文社古典新訳文庫)



【なるほど、私を待っていたのは海と浜辺ではなかったのだ。
 おまえがいる限り、私はここにとどまろう!】

水の都、ヴェネツィア。
その街の美しさと醜悪さを描く描写。
比類ない美しさを備えた少年の描写。
そして、孤高の老作家の内面の描写。
情景がとてつもなく鮮明に脳裏に浮かび、
心理がひしひしと押し迫る描写にくらくらとするような眩暈を覚えながら読了。
身も蓋もなく言ってしまえば、老作家はストーカー。
少年にしてみれば、見知らぬ老人につけ回される気味の悪い話である。
が、少年と老作家の視線が交わった瞬間の描写はあまりにも美しく、
鳥肌が立つかと思いました。
一度は逃げ出そうとした街に再び戻らざるを得なかった老作家。
多分、その瞬間から彼の運命は決まっていたのだろう。
彼を奈落の底へと呑みこんだのは少年の存在か、或は、芸術という概念そのものなのか。
私には計り知れない。

内容(「BOOK」データベースより)

高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。

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「怒りの葡萄 下」スタインベック(新潮文庫)



【あたしたちのすることは、どんなことでも
 生きていくことを目指しているんだと思うだよ】

旅の途中で物語は幕を閉じる。
とてつもない虚脱感を抱えたまま、彼らの明日に想いを馳せる。
散り散りになった家族。
満たされることのない空腹。
拭い取ることのできない疲労感。
それでも、明日に命を繋ぐために彼らは進みつづける。
これは、搾取され続ける現実に翻弄されながらも、
明日を生きることを諦めなかった人々の物語。
泣き言ばかり言っていた娘の示した慈愛と、
最後まで揺らぐことのなかったジョード家の母親の強さがとても印象的でした。
優しくはない大地に立つ彼らの明日への力の源は怒り。
ならば私は、その怒りが凪ぐ日が訪れることを、願いたい。

淡々としていながらも、力強い情景描写に圧倒されました。
そして『あたしたちのすることは、どんなことでも
生きていくことを目指しているんだと思うだよ』
この母の言葉にひたすら頷くしかありませんでした。


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「ラブレス」桜木紫乃(新潮文庫)



【どこへ向かうも風のなすまま。
 からりと明るく次の場所へ向かい、
 あっさりと昨日を捨てる。捨てた昨日を惜しんだりしない】


人には自分ひとりだけの人生の物語がある。
何を幸せと感じ、何を不幸せと感じるのか。
それは、その人生を生ききった当人にしかわからない。
これは、三世代にわたる女たちの人生を描いた物語。
詰りあっても、嫌悪しても、時に血の繋がりが枷となっても。
「家族」という絆を断ち切ることのなかった彼女たちの物語。
喜びも裏切りも、じっと耐えてきた苦しみも大きな虚無も。
すべてを抱きしめて慈しむ、大きな愛。
そんな愛を静かに胸の内に抱いていた百合江の最期に向けた
彼の囁きに、読後しばらく涙が止まらなかった。
「生ききった」のだと思う。
彼女は彼女の人生を。

同じく「生ききった」のであろう、ハギの孤独が胸に刺ささった。
教えられた文字で書きつづった言葉がとても哀しい。
理恵と過ごせた時間が、彼女の光になってくれているといい。



内容(「BOOK」データベースより)

謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた―。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始める…。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。

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「檻」北方謙三(集英社文庫)




【昔、一緒に生きた。
 同じものに賭け、同じ夢を見て生きた。】

気づかなければ良かったのに。
自分が檻の中にいることに。
だけど彼は、気づいてしまった。
自分の牙はまだ抜けていないことを。
そして再び出会ってしまった。
同じ夢を見て生きた、かつての戦友と。
友の抱えた厄介事を、見て見ぬふりはできなかった。
眠った獣は既に目覚めている。
望んで修羅に飛び込みたがっている自分を、彼は知っている。
思い出されるのは、自分を導いてくれた男の背中。
滝野と高安の人生に絶大な影響を残した桜井生き様がぐっとくる。
そして彼は走る。
狭い檻から解き放たれるために。
あまりにも愚直。だからこそ、哀しくて愛おしい。

高樹と対峙した幸江が、寂しかったけど、静かに強くて、
とても印象的でした。
初読の時は覚えなかった感情。

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「愛する」菅野彰(キャラ文庫)



【今日より少しでも、先生が幸せな明日に】

濁りを知らない、純粋で透明な水彩のような感情は、
ほんの少しの黒を混ぜることで、より強くなる。
悪意に晒されても、妬みをぶつけられても、濁らず、壊れない強さ。
それは、やさしく慈しまれて、支えられ、
自由で伸びやかな未来を与えてもらったからこそ、持ちえた強さ。
人は多分、綺麗なままでは生きていけない。
大なり小なり後悔と罪の意識は抱えていると思う。
苦しい時には手を差し伸べ、
お互いがお互いの光となり得る関係は、尊いと思います。
「今日よりは少しでも幸せな明日に」
とても素敵な言葉を拾いました。
反芻するだけで、今は涙が出そう。

やっぱり私、菅野さんの書く文章と感性が大好きです。


内容(「BOOK」データベースより)

「卒業しても、先生に絵を習いたい」苛めで不登校になりかけた由多を、幼い頃から支えてくれたのは、絵画教室の講師・桐生凌。美大進学を機に、募る想いをついに告白!!必死な由多に絆されてか、二人は恋人になることに。けれど入学早々、才能に注目され始めた由多に、凌はなぜか冷たい。嫉妬や中傷も、先生がいれば怖くないのに―由多は初めて、凌が自分を見ていないことに気づき…!?

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「怒りの葡萄 上」スタインベック(新潮文庫)



【大丈夫かどうかって問題じゃないよ。
 やるつもりがあるかどうかの問題だよ】

いつの間にか呑まれてしまった理不尽という名の河の流れに押し流されるかのように、
西へ向かう人々。
その河の水は流される人々の汗と血と涙と、
そして彼らの失った大地の土とで混濁している。
運命に抗う術を持たぬ彼らは、土地を奪われ、家を壊され、
その理不尽に憤りながらも、流されるしかない。
向かったその先に幸いがあると、己自身に言い聞かせて。
「残された者は家族だけ」
母親の言葉が胸に刺さる。
その家族ですら、過酷な現実に奪われていく。
1930年代アメリカ。
彼らの抱いた縋るのような思いを踏みにじらないでほしい願いながらも、
最後の一文に息を呑む。
そして、次巻へ。

気力と体力がそれなりに充実していないと、
文章に圧倒されて読み進めることがキツイな、と思いました。
初版が1939年。
90年近くの時を経ても尚、これだけのエネルギーを感じさせる物語。
一呼吸おいて、次巻に備えます。

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「わすれられないおくりもの」スーザン・バーレイ(評論社)



大人になった私が自分のために買った絵本。
そういえば、ちびっこたちに見せてないなー、と思いながら今回改めて読みましたが、
多分私、泣いて読み聞かせになりません。
自分に、家族に、近しい人に、いずれ訪れる「死」。
語りあえるたくさんの思い出を友だちに遺して逝ったアナグマ。
喪失はとても哀しいけれども、思い出はその先を生きる力になる。
たとえ、夢の中でも、自由に駆けることができてよかったね、と、
アナグマに言ってあげたい。
おやすみなさい。
そして、ありがとう。
今まで見送った大好きな人たちに心から伝えたいと思いました。

何度読んでも心に沁みる良い話です。


内容(「BOOK」データベースより)

アナグマは、もの知りでかしこく、みんなからとてもたよりにされていた。冬のはじめ、アナグマは死んだ。かけがえのない友を失った悲しみで、みんなはどうしていいかわからない…。友だちの素晴しさ、生きるためのちえやくふうを伝えあっていくことの大切さを語り、心にしみる感動をのこす絵本です。

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「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン(新潮文庫)



【酔っていると、人はほんとうのことを言うが、誰もそれを信じない。】

無邪気で罪深い人たちの物語。
読後、時間が経つほどに、引き攣るような想いがジワジワとこみあげてきて、
共感と反発を覚えた彼らの想いが、流れ込んでくる。
若さ故の傲慢な思い上がり。
思い込みの正しさ。
各々が抱いた自己愛と独占欲。
そんな感情に起因する行動からは、思いやりと想像力が欠落していて、
互いを傷つけずにはいられない。
起こるべくして起こった悲劇。
それでも彼らの時間は前へと進みつづける。
17歳のセシルにとってこのひと夏の出来事が、
あたかも、美しい蝶への化身を遂げるための
甘くて苦い蜜であったかのようで、ゾクリとしました。
悲しみよ、こんにちは。
少女時代の終幕。

流れるような美しい文書がとても素敵。
何度も噛みしめたくなるような言葉と情景が、そこには広がっていました。
哀しいわけじゃないけど、何故か涙が零れそうです。


内容(「BOOK」データベースより)

セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ…。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。

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「最果ての空」英田サキ(SHY NOVELS)



凛とした強さと厳しさ、そして果てのない孤独を宿した男の物語。
近しい者たちが恋人を得、家族を得、それぞれの安らぎを手にしていくなかで、
ひとり、孤高で在りつづける彼が、とても哀しい。
だけど、それは彼自身が選んだ人生。
篠塚は孤独であっても、独りではない。
迷いなく歩き続けるその姿に痛ましさはない。
それでも、ラストの挿絵を見た瞬間、なんだか涙が溢れました。
椎葉と宗近の安定したその後が見れたのが個人的には嬉しかった。
宗近と篠塚の距離感もとても好き。
シリーズの締め括りに、とても素敵な話を読ませていただきました。
貸してくれたお友達に感謝です。

「誰の言葉だ?」
「宗近圭吾って男の言葉だ」
このやりとりはお気に入り(笑)
英田さん、うっかり集めてしまいそうな自分がいます。ヤバイ……

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