きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「その女アレックス」文春文庫(ピエール・ルメートル)
監禁された女の物語は、殺人を犯す女の物語へと変容し、
孤独で虐げられた女の物哀しい人生の物語に帰結する。
と同時に、これは綿密に練り上げられた復讐の物語でもある。
檻の中に裸で閉じ込められ、命の火が消えかけながらも、
生きることに執着した彼女の理由がとても哀しい。
そして女として、とても悔しい。
砂漠に埋もれた砂を探すような警察官たちの地道な捜査には、
ひたすら拳を握り続けたわけですが、
最後の最後であ~!と声を上げてしまった理由。
彼らには復習に加担するのではなく、司法できっちりと決着をつけてほしかった。
そうあるべき立場の人たちなのだから。
とはいえ、最後までドキドキハラハラしながら一気に読ませる構成はお見事でした。
内容(「BOOK」データベースより)
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。
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「最後の晩ごはん ふるさとだし巻卵」椹野 道流(角川文庫)
ありのままの自分を受け入れてくれる場所があって、
自分を無条件に信じてくれる人たちがいれば、
たとえ、この瞬間がどんなに苦しくても、明日に想いを繋ぐことができる。
濡れ衣をかけられて人生をめちゃくちゃにされ、
行くあてもなく、頼る人もいなく、暴力に晒されながら命を諦めかけた海里が夏神に救われ、
そんな海里が現実に絶望した幽霊を救う。
夏神のもとで料理人になることを決意した海里。
自分に何ができるのか。何をしたいのか。
気付いた時からやり直しがきくのが人生なんだと思っています。
ご飯は美味しそうだし、掛け合いは小気味よいしで、楽しく読み切った物語でした。
内容(「BOOK」データベースより)
若手イケメン俳優の五十嵐海里は、ねつ造スキャンダルで活動休止に追い込まれてしまう。全てを失い、郷里の神戸に戻るが、家族の助けも借りられず…。行くあてもなく絶望する中、彼は定食屋の夏神留二に拾われる。夏神の定食屋「ばんめし屋」は、夜に開店し、始発が走る頃に閉店する不思議な店。そこで働くことになった海里だが、とんでもない客が現れて…。幽霊すらも常連客!?美味しく切なくほっこりと、「ばんめし屋」開店!
「槐」月村了衛(光文社)
【愛する人を守るための戦い。
そのためには、まず自分が生き残らねばならない。】
表紙と中表紙の綺麗さと、突如として繰り広げられる虐殺現場の凄惨さのギャップに、
まずぎょっとした。
絶体絶命の状況に恐怖に戦く公一たちと同じように息を呑みながら頁を捲り、
「槐」というタイトルの意味が明確にされたとき、物語に対する見方が変わる。
そこからさらに加速がついて一気読み。
自分本位だった少年少女たちが次第に互いのために全力を傾けるようになり、
子どもたちを守るために、大人もまた捨て身の覚悟で戦いに挑む。
恐怖と緊張を強いられた一夜の間に展開された壮絶なバトル。
亡くした命もあったけれども。
傷を抱え込まずに成長の跡が見て取れた子供たちの姿に安堵した。
さすが月村了衛氏。
一気に読ませるスピード感に乗せられるまま走り切り、どっと疲れた読後でした。
ラスト一文、すごくよかった!
内容(「BOOK」データベースより)
弓原公一が部長を務める水楢中学校野外活動部は、夏休み恒例のキャンプに出かけた。しかしその夜、キャンプ場は武装した半グレ集団・関帝連合に占拠されてしまう。彼らの狙いは場内のどこかに隠された四十億円―振り込め詐欺で騙し取ったものだ。関帝連合内部の派閥争いもあり、現金回収を急ぐリーダー・溝淵はキャンプ場の宿泊客を皆殺しにし、公一たちは囚われの身に…。そのとき、何者かが関帝連合に逆襲を始めた!圧倒的不利な状況で、罪なき少年少女は生き残ることができるのか!?
「チョコストロベリーバニラ」彩景でりこ(バンブーコミックス)
拾の自覚のない残酷さによって形成される歪んだ関係。
ミネの戸惑いと反発。
タケの苛立ちと開き直り。
どれもこれも「好き」の気持ちが根底にあってのゆらぎ。
一人が二人に、二人が三人になれば、空気感は変わるし、関係性だって微妙に変化する。
好きな人を手に入れるために受け入れなければならない状況に
乱された感情を咀嚼して呑みこんで。
着地したところに作り上げられたのは、見事なトライアングル。
当事者全員が納得して受け入れた歪みは、歪みではなくなる。
そこに在るのはこれしかない、と、妙に納得させられた愛の形。
うまいなー、と思いました。
拾が何故三人だとダメなのか、ということを理解した上で三人での関係を肯定する流れと、
ミネとタケのそれぞれに対する感情が変化していく様が綺麗に描かれていたのがとてもよかった。
「一瞬の風になれ 第三部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【人生は、世界は、リレーそのものだな。
バトンを渡して、人とつながっていける。】
青空の下を全力で駆け抜けたような爽快感。
読後に胸を満たすのはそんな感情です。
新二がいたから陸上を続けることができた連。
連がいたからより速く走ることができた新二。
親友でライバル。そしてかけがえのない仲間。
一緒に走ることが楽しくて。とても楽しくて。
だからこそ、負けたくはないし、相手より前を走っていたい。
勝負に無頓着だった連が「勝ちたい」という意欲を貪欲に示すようになっていく様子に、
そして、常に速さを希求し続けた新二に、頁を捲る私の方もわくわくした。
彼らはどこまで風に近づくことができるのだろう?と。
途中彼らと一緒に泣きながらも、楽しく読み切った小説でした。
全力で何かに打ち込むことの素晴らしさを改めて思いました。
あのひたむきさ、私の中にもまだあるかな?
内容(「BOOK」データベースより)
いよいよ始まる。最後の学年、最後の戦いが。100m、県2位の連と4位の俺。「問題児」でもある新人生も加わった。部長として短距離走者として、春高初の400mリレーでのインターハイ出場を目指す。「1本、1本、走るだけだ。全力で」。最高の走りで、最高のバトンをしよう―。白熱の完結編。
「threesome…」榎田尤利(リブレ出版)
「現実世界でなくしたものが、夢の中で蘇る。
そして夢から覚めた途端に、再びすべてを失ってしまう」
何かが欠けていて、どこかが壊れていて。
淋しさに気付かないふりをして、愛を嗤う。
甘さのない乾いた世界。
だからこそ、そこに介在する情が哀しい。
当人を目の前にしながらも、写真にしか手を伸ばすことのできなかった櫛田。
辻が財津とも菊池とも築くことのできない絆を確かに彼は持っていたのに。
「さよなら」
その言葉を言わせたのは、櫛田自身だ。
疲れ切った辻を労わるように甘やかす財津と菊池。
明日また、活力を伴って目覚めるために。
残酷で厳しい現実世界の中で、彼ら二人に愛を囁かれながら、
愛を語らない辻は、これからもしたたかに生きていいくのだろう。
乾いた切なさが尾を引く読後感でした。
やっぱり榎田さん、好きだわ。
内容(「BOOK」データベースより)
快楽主義で女好きの極道・辻良典は、あるきっかけから、男ふたりと肉体関係を持つようになった。切れ者弁護士の財津と、使い走りの舎弟・菊池―ふたりから鬱陶しいほどの愛を捧げられながらも、辻が愛するのは常に自分だけだったが…。大人気エロティック短編集「erotica」内の続編が、長編書き下ろしで登場。
「一瞬の風になれ 第二部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【でも、もう、降りることのできない山を登っているのだと思った。
仲間たちと。苦しさと喜びをともに。】
今日と同じ走りを再現することはできない。
すべては、一回きりの走りだ。
だからこそ、その一回がとても大切で、その瞬間にすべてを賭ける。
その一瞬に、様々な想いをぶつけ、感情を揺さぶられ、責任を感じ、
悔しさを噛みしめて、喜びに沸く。
試合で勝てない自分を思い描いたとしても、
明日走ることの出来なくなる自分を思い描いている者はいないだろう。
守屋のために連のみせたこだわりと本気。
健一の怪我がきっかけでぶつけ合う悲鳴のような言葉。
離れようとした部に再び戻っていく新二の姿。連の言葉。
後半は本当に涙が溢れて仕方がなかった。
次巻は「走りたい」という想いを再び胸にいた新二たちの最後の学年の物語。
ドキドキします。
内容(「BOOK」データベースより)
オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、二年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へ―。新二との連の第二シーズンが始まる。吉川英治文学新人賞、本屋大賞ダブル受賞。
「一瞬の風になれ 第一部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【神様にもらったものを粗末にするな。
もらえなかったヤツらのことを一度でもいいから考えてみろ】
共に戦う仲間がいるからこそ、そして、
絶対に負けたくない相手がいるからこそ、更なる速さを目指して頑張れる。
憧れるだけではなく、いつかは彼以上のスピードで走りたいと、希う。
部活に対する姿勢の温度差でぶつかりあいながらも、
次第にチームとしてまとまっていく姿。
他校の選手たちと試合ごとに顔見知りになり、言葉を交わしていく姿。
指導者に対する反発
恋愛事でのもやもや。
家のこと、犬のこと、家族のこと、兄弟のこと。
どれをとっても、10代のその瞬間でしか味わうことのできない感性が滲んでいて、
読んでいて清々しい気持ちになれました。
彼らの成長が楽しみ。
三年間部活としてかかわった陸上部。
フィールドの雰囲気、スタート前の緊張感、先輩への憧れ、限界を認識した時の悔しさ。
等々を懐かしく思い出しました。
内容(「BOOK」データベースより)
春野台高校陸上部、一年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感…。ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート。
「遺体」石井光太(新潮社)
津波で亡くなった一人でも多くの方々を家族の元へ帰そうと、
そして、土葬が検討される中、何とか火葬して供養できるようにと、
一心不乱に努力した数多くの方々へのインタビューをまとめたルポルタージュ。
遺体を丁寧に扱い、語りかけ、身元を示すものを見つけ出そうと、
懸命に努力する数多の人たち。
一人一人がそれぞれの立場で今の自分にできることを。
模索しながら十分すぎる程心血を注いでいるにもかかわらず、
それでも、他にもっとなにかできることが、と、自らに問う姿勢に胸を打たれた。
津波に流されて建物が何もなくなった土地に、
穏やかな日差しが降りかかる光景を見た時、涙が溢れて仕方がなかった。
内容(「BOOK」データベースより)
あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業にのぞむ。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母親。冷たくなった友人…。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族のもとへ帰したい一心で現実を直視し、死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描いた渾身のルポルタージュ。
「ワンダーリング」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
分かり合えないからこそ惹かれ、相容れないからこそ、
相手の存在に苛立って、もどかしくなる。
雪が藤堂にだけズバズバ物が言えて突っかかれるのは、
裏を返せば彼にだけ甘えられるということ。
素直になれないのは、ありのままの自分を認めてもらえないことへの反発。
柔和で穏やかな性質だと思っていた藤堂が見せつけた強心臓っぷりがかっこよくて、
裏カジノでのやりとりにはドキドキしました。
そして悔しさに泣く雪は、本当にルーレットが好きなんだなぁ、と。
令輝のけじめのつけ方は、相当粋な計らいだった。
ここでの雪の涙は安堵と感謝の涙。
藤堂の包容力は底なしだと思うので、安心して振り回すとよいと思います(笑)
前作から想像していた藤堂と雪のイメージがまったく違っていて、
最初は戸惑いつつも、脳内で軌道修正(笑)
藤堂は思っていたよりも真っ当な感覚を持った常識人で、
雪は思っていたよりも随分と複雑な性格をしていました。
良い意味で裏切られた感じ。
こたつのエピソードは相当可愛すぎました。
内容(「BOOK」データベースより)
七つの年にラスベガスのカジノで拾われた芦原雪。自分を拾ったシンガポール華人の令輝から徹底的にルーレットを仕込まれ、雪は一流の腕を持つまでになる。厳しい育ての親とは対照的に、“雪”に名前をつけ、無条件に甘やかそうとするのが令輝の腹違いの弟、藤堂だった。雪にはそれが煩わしくて仕方ない。現在は藤堂が社長を務める東京の公営カジノで働く雪だが、どんなに素っ気なくしても藤堂の態度は変わらず…?
