きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2018.08.29 「死刑にいたる病」櫛木理宇 (ハヤカワ文庫JA)
- 2018.08.05 「浄夜」花村萬月 (双葉文庫)
- 2018.07.31 「金閣寺」三島由紀夫(新潮文庫)
- 2018.07.24 「アンフィニッシュト」古処誠二 (文春文庫)
- 2018.07.20 「UNKNOWN」古処誠二 (講談社ノベルス)
- 2018.07.16 「三国志 6 ~陣車の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.07.07 「三国志 5 ~八魁の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.07.01 「ハンサムは嫌い」榎田尤利(SHY NOVELS)
- 2018.06.28 「もしも俺たちが天使なら」伊岡瞬 (幻冬舎文庫)
- 2018.06.26 「調律師」熊谷達也(文春文庫)
「死刑にいたる病」櫛木理宇 (ハヤカワ文庫JA)
依存している自覚があるならまだいい。
影響されているとわかっていれば、自分が見えている。
自分の意志で行動しているつもりが、実は相手の意のままだったとしたら?
迫られた選択の回答ですら、決められたものだったら?
無意識のコントロールが一番怖い。
植え付けられた選民意識の件がぞっとした。
シリアルキラーと対話を重ね、目に見える変化を遂げた彼。
明らかになる真実。塗り込められた嘘。そして、悪意。
絡みつく鎖を断ち切ったことは、今後彼の人生において大きく作用するだろう。
「おれは、おれの話をしてるんです」
キミは大丈夫。
雅也と母親との関係が好転することを願って読了のお借り本。
天性の「人タラシ」な人っているけど、
そこに「悪意」が加わったら手に負えない。
「あなただけが特別」と囁く言葉は自尊心をくすぐり、
囁いた相手には好意を向けるようになる。
騙されたくないわ~、と思うけど、何が嘘で何が本当か。
瞬時に見抜くことは難しい。
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「浄夜」花村萬月 (双葉文庫)
なんだろう、この吸引力。
汚物や汚泥に塗れた据えた臭いが充満する世界を
息苦しさを感じながら浮遊している気分になるわけだけど。
どうしたって目が離せない。
嫌悪感を抱く汚物の中にハッとさせられるものがあったり。
時折キラリと光る綺麗な言葉に胸を付かれたり。
結局、彼らの流れ着くところが気になって、読み続けてしまう。
過食嘔吐にもサドマゾにもネクロフィリアにも同調できない私は、
どこまでも編集者だった桐島の視点に安堵する。
桐島が置き捨てられた山の中で、寿命に想いを馳せる場面がとても印象的。
いつかは尽きる命。
どう生きるかは結局は自分次第だ。
感覚が麻痺したのか、笑ってる場合ではない場面で
何故か笑ってしまった不謹慎さ。
私だけかな?
カルチャースクールの小説教室が舞台の一つになっていて、
小説って習って書くモノなの?と終始思っていたわけですが。
「習うもんじゃない」というのが著者の見解でちょっと安心した。
「金閣寺」三島由紀夫(新潮文庫)
自己完結した世界の中で、ひたすら妄想の中に生き、
都合の悪い現実からは目を逸らし続けた溝口。
内に内に向けられた、肥大化する自意識。
金閣寺に対するあまりにも一方的な偏愛。
金閣寺にしてみれば、ただの迷惑だ。
美しく荘厳にそこに佇む金閣寺は、移ろいゆく時代と共に在るものであり、
彼の美意識の為にあるものでも、彼の自己愛の為にあるものでもない。
金閣寺はあなたなんて眼中になかった。
人間と、いや、自分とすらまともに向き合うことができなかった彼の選んだ愚行。
それは狂気ですらない。
果たして、これで彼は解放されたのだろうか?
生きることを選んだ彼のこの先の人生が気になる。
情緒もへったくれもない今風な言葉で言ってしまえばこじらせすぎた中二病。
やることもやらないで求めるばかり。
挙句は自らやるべきことを全放棄した甘ったれの妄想のとばっちりを受けて
燃やされてしまった金閣寺。
ああ、やっぱり金閣寺的には大迷惑だと思うの。
「アンフィニッシュト」古処誠二 (文春文庫)
今回の事件は自衛隊内での小銃紛失事件。
前作に引き続き、朝香二尉と野上三曹が事件解決の任を受け、いざ、伊栗島へ。
二人の相変わらずな軽妙な会話の合間合間に浮かび上がってくるのは、
島の在り方、そして自衛隊の在り方に関する問題点。
そして、島民たちの憂いと隊員たちの危機感。
最後はそれらについて考え込んでしまった。
やり方は間違っていても、彼らの言い分は間違っているとは言い難い。
意見を具申したところで容易には通らない。
じゃあ、正しいやり方って?
答えを導き出すことは難しい。
彼らの乗った未完の船。完成する日はくるのかな?
何かが起こってから講じられる対策。
それでもいい場合もあるし、それしかない場合もあるし、それじゃあダメな場合もある。
「安全神話なんかではありません。それは安全願望です」
震災後に耳にした言葉がどうしても忘れられない。
「UNKNOWN」古処誠二 (講談社ノベルス)
自衛隊の基地内で起こった盗聴事件。
二人の自衛隊員が、基地の中をひたすら歩きまわりながら、
隊員たちにヒヤリングを行っていく物語。
会話が軽妙で面白い。
そして、登場人物たちの言動がなんだか愉快。
とはいえ、同時に語られる自衛隊に対する周囲の認識と、内部の問題が重い。
今の時代は、自衛隊の評価はもっと高い。
特に、震災を経験した後であるから、尚更。
その職に就いているだけで色眼鏡で見られてしまうことは残念だ。
事の顛末はあまりにも阿保らしくて「馬鹿ですか!?」と言いたくなるわけですが。
朝香二尉の残した言葉に心から頷き、成長著しい野上三曹に清々しい思いで読了。
サラッと楽しく読める本は結局積読棚ではなく、既読棚から発掘☆
ひたすらコーヒーを飲んでいる朝香二尉の姿から、何故か姿(@機龍警察)のことを思ってみました。
似てはいないんだけどなぁ。
「三国志 6 ~陣車の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
何故劉備は人材に恵まれる?
羨んだところで、曹操は劉備には成りえない。
己のやり方で道を究めるしかない。
「覇業」という言葉が相応しい男の辿る道は、孤独が付き物だ。
漸く軍師を得た劉備。
ここにきて明確に発せられた「力が欲しい」という言葉。
雌伏の時は終わったのだと、震えが走る。
旧き者たちは去り、新しい力が頭角を現し始める時流の中で、
守るべきものを守りきり、
未来ある若者が命を落としたことがやるせない。
そして、足場を固め、現状を見極め、慎重に時を計る孫権。
天下三分に向けて本格的に動き始めた乱世から目が離せない。
孔明が劉備たちの陣に加わったことで、
これからの蜀の動きがとても楽しみ。
孔明好きの友だちはこの巻から買いそろえていました。
おかげで私は北方三国志は6巻まで!という
誤った認識を植え付けられたことがあります。
正しくは、彼女が買った北方三国志は6巻から!
本棚を見て「なんで北方三国志、ウチにはこんなにあるのかしら?(13巻完結)」と
ビックリした記憶があります(笑)
「三国志 5 ~八魁の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
帰趨の決していない乱世に生きる男たち。
戦いの最中にありながら、きっちりと描かれる人間模様に魅せられる。
妻を得、子を成し、時に友と語らい、或は己の未熟に嘆く。
乱世に生まれた男が描く夢。
即ち、天下。
そこに至る道は数多あれども、手にすることができる者はただ一人。
数年後を見据えての、駆け引き。
自分に在るものと欠けているもの。
自覚しているからこその強さが確かにある。
曹操が計略を巡らせなかったら、劉備と彼の人との出逢いは果たしてあったのか?
ゾワっとするところで次巻へ。
本当の始まりはここから……って、言い過ぎ?(笑)
失敗を人のせいにはしない彼らの潔さがとても好き。
北方三国志における張飛の在り方は、本当にかっこいいと思う。←イチオシは違う人だけど。
ここで初めて見せた孫権の無謀さ。
無事だったから言えることだけど、周瑜と同じく、好ましいものだと思う。
周瑜と孔明。
こうして名前を並べるとこどうしても私設が読みたくて仕方なくなる。
「もしも俺たちが天使なら」伊岡瞬 (幻冬舎文庫)
スマートな詐欺師、探偵稼業の元刑事、腕っ節の強いヒモ男。
「神様のいたずら」によって引き合わされた三人が織り成す三重奏。
バラバラに奏でられていた音が
少しずつまとまり、反発して不協和音を奏で、一つの目的の為にまとまっていく。
水面下で進行する不穏な事態を阻止しようと大きな絵図を描き、
綺麗にまとめあげたコンダクターの手腕はお見事。
それぞれ過去に事情を抱えた三人が
苦境に陥りかけた人たちのために(一部自分のメンツのために・笑)
現状をどうにかしようと奔走する姿に前のめりになり、
何かを乗り越えたであろう彼らの姿に清々しく読了。
スワンボートを漕いでいるイケメン二人を想像して思わず笑顔。
映画「俺たちは天使じゃない」は楽しく聴済み……
なんだけど、ハンフリー・ボガート版だったのか、ロバート・デ・ニーロ版だったのか
イマイチはっきりしないポンコツな記憶。
「調律師」熊谷達也(文春文庫)
亡くなった妻・絵梨子を想い続ける鳴瀬に対して
「私をお姉ちゃんだと思って」と言った
由梨子の言葉に「何言ってるんだろう?この人」と漲った反発。
姉に対しても鳴瀬に対しても、そして自分に対しても失礼だ。
イラッとしながら読み続けたわけですが。
心の枷を解くのは、その枷の原因となった当人。
鳴瀬の立ち直りの様を描いた描写は見事だった。
鍵盤から立ち昇る香りから想起させられる弾む音・濁る音・嬉しい音等々。
脳内で溢れる音の世界に浸るのは心地よかった。
章ごとに綴られる、ピアノの音と鳴瀬と弾き手の関係がとてもやさしい作品だった。
ノンフィクションやドキュメントとしての震災関連本は
積極的に読んでいきたい。
だけど、物語世界に差し挟まれると、楽しく読んでいる作中から
グラグラ揺れた現実世界に引き戻されるから個人的にはまだ触れたくない。
トラウマっているわけではないけど、そんな気分になるんだなぁ、と改めて思った。
でも「書く」というスキルや感性を持っている作家さんには
是非描いていってもらいたい。というのも本音。
