忍者ブログ

きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「幸福な食卓」瀬尾まい子(講談社文庫)



読後にジワリと涙がこみ上げました。
不器用でも、回り道をしても、懸命に前にむかって歩いていこうとする人たちの物語。
ちょっとびっくりする宣言も、おおらかに受け入れる家族。
だけど、それは彼らがとても苦しい思いをしてきたから。
奔放なようで、実は誰よりも家族のことを考えているから。
そこここから滲むやさしさが、時に切なくてあたたかい。
「家族は作るのは大変だけど、その分めったになくならない」
懸命に言葉を紡ぐヨシコの慰めは、胸に響いた。
母だけは私を裏切らないと、どこかで確信できていた若かりし頃の人生の迷走期。
だから安心して迷えたし、決断もできた。
母に心から感謝ですね。
大浦くんの存在は本当に癒しでした。

「どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく」
それが、人の営み。
わかっていても、哀しい時は哀しい。
でも、涙は我慢する必要はないと思います。


内容(「BOOK」データベースより)

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。

拍手

PR

「一鬼夜行 花守り鬼」小松エメル(ポプラ文庫)



いつの時代も変わらずに咲き誇る桜の花。
ヒラヒラと舞い踊る蝶。酒を酌み交わす人々の喧騒。
ありふれた光景に身を置きながら、あちら側とこちら側を行き来する
不思議な浮遊感。
行きつ戻りつしながら垣間見られるのは綾子の過去。
美雪の想い、生い立ち。そして、喜蔵の想い。
誰もが何かに傷ついて、苦しんで、惑い悩んで。
時に笑顔を忘れてしまうけれども。
互いに手を差し伸べあい、思いやり、
そうやって笑顔を取り戻すことのできる仲間に囲まれた彼らの在り方が
とても素敵だと思いました。
小春の身の置き方が切ないけど、皆ちゃんと小春のことを思ってくれているのがうれしかった。

高市と桃爺のエピソードがとても好き。
真っ正直な誠意ってちゃんと伝わるんだよね。
小春の意図に気付いて
眠るまいと必死で腿を抓る喜蔵と小春のやり取りもとても好き。
なんだかんだこの二人は良いコンビだと思います。


内容(「BOOK」データベースより)

人嫌いの若商人・喜蔵が営む古道具屋を、旅の若者・高市が訪ねてくる。一緒に花見へと繰り出した妹の深雪たちを追いかける羽目になった喜蔵だが、料理だけを残して皆の姿は消えていた。不可思議な一日に翻弄される喜蔵を、待ち受けていたのは―?からくり人形が語り出す深雪の秘めた想い。綾子のかなしい過去。小春の意外な思い出…桜の中でそれぞれの心が交錯する。涙あり、笑いありの明治人情妖怪譚シリーズ第三弾。

拍手

「本当の戦争の話をしよう」ティム・オブライエン(文春文庫)



連なるいくつもの短編で綴られるのは、戦場での若き兵士たちの日常。
故国から遠く離れたヴェトナムの地で、
友と笑いあい、ジョークを交わし、彼女の話をする。
けれども、そこには地雷があり、砲撃があり、ふいに訪れる死がある。
逃げ出したくなるような恐怖心を押し隠しての行軍。
友の死に責任を感じ、殺した男の死を背負い、
帰国しても、彼らの心の片隅に常に在りつづける戦場。
個人的には『レイニー河で』が秀逸。
徴兵に怯えるティムをただ黙って見守り続けたエルロイの存在は大きかった。
何のための戦いだったのか?
それを問うことは一切なく、本書はただ、兵士たちの日常を語り続ける。
だからこそ、死についてい考えさせられ、じわじわとこみあげる想いがある。
生きて帰ることこそが、彼らの重要な任務。
そう思うことは、感傷だろうか?


内容(「BOOK」データベースより)

日ざかりの小道で呆然と、「私が殺した男」を見つめる兵士、木陰から一歩踏み出したとたん、まるでセメント袋のように倒れた兵士、祭の午後、故郷の町をあてどなく車を走らせる帰還兵…。ヴェトナムの・本当の・戦争の・話とは?O・ヘンリー賞を受賞した「ゴースト・ソルジャーズ」をはじめ、心を揺さぶる、衝撃の短編小説集。胸の内に「戦争」を抱えたすべての人におくる22の物語。

拍手

「疾走・下」重松清(角川文庫)



【あなたは生きてください。
 自分の生を一生懸命に生きて、他人の生を、慈しんでください】

「ひとり」を厭うた少年は、つながりを求めて受話器に手を伸ばす。
声がききたかっただけ。寂しかっただけ。抱きしめてほしかっただけ。
彼女たちもその呼びかけに応える。
たぶん、彼女たちも寂しかったのだ。
けれども……
その逢瀬が、新たな負の連鎖を呼び込んでしまう。
マイナスとマイナスで、さらなるマイナス。
人生はこんなにもままならない。
「逃がすために。守るために」
それが、少年の最期の願い。
最後に届いたメッセージは間に合ったのだと。
彼が微笑んで逝けたことが、せめてもの救いなのだと。
そう、思いたい。

僅か15歳の少年が、全てを背負わなければいけなかったことが、やるせない。
守ってあげられるのは親だけだったのに。
親もまた傷つき、疲弊し、自分自身を奮い立たせる術を持ち合わせてはいなかった。
最後まで傍観者に徹した語り部は、あくまでも見守るしかない他人。
雄二に会わせる事さえしなければ、と思うのは、私だけかな?






内容(「BOOK」データベースより)

誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。

拍手

「疾走・上」重松清(角川文庫)



【あの頃には二度と戻れない。
 すべてがあの頃とは変わってしまった】

知らず、泥沼に嵌りこんでいくような負の連鎖。
絡みつくような悪意。崩壊する家族。
こうなる未来を止めることのできる術があったのだとしたら。
シュウイチに対する両親の態度にあったかもしれない。
だが、親だという理由だけでは強く在ることができない人もいる。
そして、あるがままの自分を受け入れることができなかったのは、シューイチの弱さだ。
思い詰めたシュウジを引き留めたのは、あまりにも日常的な情景。
その日常が叩き壊されてしまったことが、なんだかやるせない。
その目に宿った闇。
願った方向とは真逆へと向かってしまったシュウジの人生。
息苦しさを引きずったまま、下巻へ。

「孤立」「孤独」「孤高」この定義にはなるほど、と、納得。
既視感を感じた語り口調。
何かと思ったら丸山健二の『争いの樹の下で』を彷彿とさせられました。
誰の視点なのか、下巻で明らかになるのかな?



内容(「BOOK」データベースより)

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。

拍手

「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮文庫)



【アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。
 アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ】

絵画は自らを語らない。
けれども、その絵画に込められた想いがある。
その想いがそれを汲み取った者の気持ちを揺さぶり、
時に、その者の人生を変える。
「夢をみた」
一枚の絵画に込められた謎と、その謎に翻弄される人々。
そして、語られる一人の画家の人生。
と同時に、それは、彼の周囲にいた人々の人生をも語っていたのだ。
ルソーに固執したバイラー。
その理由が明らかになった時、胸が震えました。
そんな人生も、あるのだと。
彼らの人生の物語は終幕を迎えたけれども。
ティムと織江の人生はまだこれから。
二人のカンヴァスに描かれる物語は、どんな色を織り成すのかしら?


「四百年もまえの絵が自分の目の前にある、ということは、単純に「すごい」ことだ」
一番共感したのは実はこの一文。
ルーブルで教科書の中でしか見たことのなかったレンブラントの絵を間近で見た時、
涙が溢れて仕方がありませんでした。
その理由がまさにそれ。
数百年の時間を越えて、いま、この場所に在る絵画を見ることのできる感動に、
ただ打ち震えました。



内容(「BOOK」データベースより)

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。

拍手

「逃れの街」北方謙三(集英社文庫)



【過ぎたことを考えたくはなかった。
 終わってしまったことからは、なにもはじまらない】

鮮烈な刹那。
いつか、終わりの来る明日。
けれども、いまはただ、この雪の中で今日をやり過ごしたい。
小さなぬくもりと共に。
当たり前の日常を繰り返していくはずだった。
ふいに訪れた同郷の男。
恋に落ちたと思っていた女。
そこから繰り出す歯車。
一度押されてしまった烙印。
それが誤りだったとしても。
一度噛み違えた歯車は、どこまでも噛み合わずにギシギシと軋んでいく。
幸二と過ごすことで、次第に子供らしさを取り戻していくヒロシ。
だが、二人が共にいられる時間は刻々と失われていく。
雪で覆われた軽井沢。
一切の言い訳をしなかった男の終着点。


ラストの黒木があまりにも粋すぎて、くぅぅぅ、と、痺れました。
なんだろう?
痺れすぎて上手い言葉が出てきません(笑)
あまりにもイロイロ読みすぎて、再読ではない北方現代物って、相当久しぶりに読みましたが。
キタコレ!!という北方作品に出逢いました。




拍手

「晴天の迷いクジラ」窪美澄(新潮文庫)



【絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ】

生きるって、こういうことだよなーと、思いました。
迷わずにまっすぐ道を歩いていける人も、もちろんいるだろうけど。
傷ついて、悩んで、後悔して。
いろんなことを抱えて苦しんで、一人じゃ息ができなくなって。
誰かに支えられて、それで、漸く前に進むことができる人もいる。
自分は「死んじゃおうか」と思っても、
近しい人が練炭を持っていたら、必死で止める。
そう思った瞬間から、「生きる」ことを考えている。
どこか壊れた家族。
他人の方が労わりあえる歪さが、哀しい。
だけど、寄り添える誰かがいてくれるだけで幸せなのだと。
そう思いました。

とりあえず、ガンバレ!と。
闘っていもがいているみんなにエールを送りたくなりました。
そして、自分にも(笑)

内容(「BOOK」データベースより)

デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた―。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。


拍手

「神々の山嶺 下」夢枕獏(集英社文庫)



【人には権利がある。
 何を奪われようが、何を失おうが、最後にただ一つ残された権利だ。
 それは、自分の選んだ生き方に、命を賭けてもいいという権利である】

聳え立つ山をひたすら睨みつづけて生きた羽生。
その羽生に魂ごと引き寄せられた深町。
拘り続けた前人未到の単独登頂。
拘ることは生きることと同意。
そんな厳しさをひしひしと感じた。
最も過酷な状況下での8000メートルの氷壁。
深町の叫び。
「それが、ビカール・サンだ」
その言葉で深町は救われ、私は納得できました。
物語はそこでは終わらない。
すべてが収束したかに思えた後での出逢いに震え、
涙が止まらなくなってしまった。
ありったけの心で想え。
その言葉のとおり、想い続けた羽生が示した生き様。
最初から諦めていては何も敵わないと、改めて教えられた気がする。

羽生の生き様がほんとうにたまらない。
気になるのに、怖くて一気に読めませんでした。でもこの本に出会えてよかった。
ここからは余談ですが……
私の数少ない登山経験の一つが槍ヶ岳です。
せっかく上った槍のてっぺんで、もやもやの濃霧に見舞われて何も見えなかった残念な私。
でも、翌日晴れ渡った山頂の景色を見て、この景色を見るために、ここまで来たんだなぁとジワリと思いました。
いつもの地上にいたら絶対に見ることの敵わない、澄んだ空気の中での美しい景色。
貴重な体験でした。


内容(「BOOK」データベースより)

その男、羽生丈二。伝説の単独登攀者にして、死なせたパートナーへの罪障感に苦しむ男。羽生が目指しているのは、前人未到のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。生物の生存を許さぬ8000メートルを越える高所での吐息も凍る登攀が開始される。人はなぜ、山に攀るのか?永遠のテーマに、いま答えが提示される。柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。

拍手

「神々の山嶺 上」夢枕獏(集英社文庫)



【この地上にただひとつしかない場所。地の頂。そこにこだわりたい】

翼をもたない人間は、大空に憧れ、鋼鉄の翼を作った。
空には自力では舞い上がれない。
けれども、聳え立つその山の頂には、自らの足で登り立つことができる。
選ばれし、ごく一握りの人間にのみ立つことを許されたその場所は、
この地上のどこよりも天に近い場所。
マロリーのエヴェレスト初登頂の是非の謎。
山に魂ごと取り込まれたかのような羽生の人生。
そして、マロリーの謎と羽生に惹かれる深町。
あたかも、高度数千メートルの山に立っているかのような臨場感あふれる描写に
ひたすらのめり込む様に頁を捲り続けて上巻終了。
先の展開がまったくわからないので、本当にドキドキしています。


長谷と羽生。
日常では接点のない二人が「山」を介してこれほど密につながっているというのが
なんだか不思議。
そして、二人の在り方がとてもいたたまれない。


内容(「BOOK」データベースより)

カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。

拍手

  

カレンダー

04 2026/05 06
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

フリーエリア

プロフィール

HN:
みやこ
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

Copyright ©  -- きままに読書★ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]