きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
『仮面の告白』三島由紀夫 新潮文庫
己の性癖に葛藤と煩悶を繰り返した少年時代。
この時代の描写が秀逸。
艶めかしさと婀娜めかしさ、そしてその背徳感に身震いを覚える。
紡がれる言葉の、なんと美しいこと。
隠匿すべき衝動に震える少年は、いつしか処世術としての演技を身に着ける。
同性への衝動を周囲の人間に気取られぬためには、
仮面を被った道化になるしかなかったのかもしれない。
女を愛せるという演技をし、園子とのつながりを欲し続けたのは、
「ふつう」で在りたいという願望の表れか。
マイノリティであるが故に、孤独で在ること畏れたのかもしれない。
人は画一的である必要はない。
だが、それは、今の時代であるからこそ言える言葉なのだろう。
鬼気迫るものが薄れてきた後半で、ようやく息が付けたものの、
前半部を読みながら、比喩ではなくクラクラしました。
言葉に絡みつかれるような、そんな感覚に囚われて。
内容紹介
「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム"を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。
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