きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「最後の物たちの国で」ポール・オースター
人間としての尊厳がまったく意味を持たないような底に堕ちても、
人は、希望を見出すことができる。
誰かを愛することができる。
奇跡に近い幸運に見舞われることが条件であったかもしれないけれども、
アンナはそれすら、自らの手で手繰り寄せたように思う。
昨日の方が今日よりはまし。
冒頭でそう記していたアンナが、一日生き延びた明日に夢を見ている終盤。
入口はあっても出口のない、最後の物たちの国。
そこではすべてが失われ、そして消えていく。
この国で暮らし、そして出会った彼らの物語の結末はわからない。
けれども、彼らが四人で夢を見ることのできた僥倖に、あたたかい余韻を噛みしめる。
どうやら私は、もっと殺伐としたディストピア的なものを想像していたらしい。
だからこそ、この物語の余韻が余計にあたたかく、泣きたく、切なく響いた。
時として人は、とても残酷で横暴で、傲慢になるけれども。
時として人は、こんなにも優しくて、あたたかい。
すばらしい本に出会えました。
今まで読んだオースターの作品の中ではダントツで好き。
内容(「BOOK」データベースより)
人々が住む場所を失い、食物を求めて街をさまよう国、盗みや殺人がもはや犯罪ですらなくなった国、死以外にそこから逃れるすべのない国。アンナが行方不明の兄を捜して乗りこんだのは、そんな悪夢のような国だった。極限状況における愛と死を描く二十世紀の寓話。
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