きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「サクラ咲ク」夜光花 (リンクスロマンス)
中学の先輩だった櫻木に、15年近くも想いを抱き続けた怜士。
だけど、好きになった相手が同じように自分を想ってくれるとは限らない。
誰に対しても心が動くことのなかった櫻木は、
そのことををきちんと伝えた上で怜士との距離を縮め、
取引を持ちかけられて怜士を抱いた。
その先を勝手に期待してしまった怜士の気持ちもわからなくないけど、
手の内を全部晒した櫻木のことは責めるのは筋が違う。
どうなることかと思ったけど、
「恋が分からなかった男が、好きだって言ってるんだ」
この言葉にすべてが集約されている気がして。
なんかもう、胸が熱くなった。
導入のインパクト。
事件の謎解き。
櫻木と怜士の気持ちの変化。
前作の大輝・秦野・塚本もうまく絡んで、最初から最後までグイグイ読まされました。
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「ロマの血脈(下)」ジェームズ・ロリンズ (竹書房文庫)
孤独も、恐怖も、哀しみも。
その小さな身体で受け止めて、友だちを……いや、多くの人々を救うために
戦った彼の姿に涙しかない。
破滅へと向かうこの世界を救うために何を成すべきなのか。
自分たちに何ができるのか。
子どもたちがそれを知り、行動に移してしまったことがただ哀しい。
とても哀しい。
事の発端が選民意識丸出しの大人の身勝手さってどうなのよ。
アメリカ、インド、そしてウクライナ。
各所で戦っていたシグマのメンバーたちも、彼に誘われるようにウクライナへと終結する。
脅威が去った後にはその犠牲の痛ましさに嗚咽。
大きな打撃を被った組織の立て直しと、
グレイの身に降りかかる不穏な予言が気になりつつ次巻へ。
今回はイラストもとても重要な意味をもつわけだけど、ラスト一枚。
小説という文字を読む媒介に置いて、イラストの視覚的効果がここまである作品には
なかなか出会えない。と思う。
「忘れないでいてくれ」夜光花(リンクスロマンス)
殺害された両親の復讐を誓って生きてきた清涼と、
父親から受けた虐待の記憶を抱えて生きてきた秦野。
苦しんでもがきながらの人生を歩んできた二人救済の物語。
「結局は自分なんだ」というラストに零れた秦野の台詞が
ものすごく刺さった。
そうだよなぁ、と、そう在りたい、と、両方の意味で。
泥臭くぶつかり合った二人だからこそ、築くことのできた関係。
本音と弱さを晒せる存在がそこに在ることはとても心強い。
朝南さんのイラストのおかげでスパダリか!?と思った秦野が
実はそうじゃなかったところが個人的にギャップ萌え。
終り方がとても良かった。
謎だらけで強烈な印象を醸し出す清涼の友人、
塚本がとってもとっても気になった。
この人はどんな恋愛をするんだろう?と。
スピンがなさそうなのは残念だけど、別の方のスピンが控えているので、
そちらを楽しみに♪
「動物と話せる少女リリアーネ1 動物園は大さわぎ!」
動物と話ができ、植物に花を咲かせることのできるリリアーネ。
そのことが原因で数度の転校を繰り返し、
引っ越した先で出会った隣家のイザヤ。
彼もまた、秘密を抱えていた。
突出した能力を持った子供が弾かれるのは何処の国でも同じなのね、と
世知辛く思いつつ読み始める。
偶発的に秘密を暴露しあうことになった二人。
秘密に対して前向きに向き合い、
周囲の人との関係を変えていこうとする努力にまで持っていけたのは、
一人じゃなかったからだろうなぁ。
友だちって偉大だ。
そしてリリと動物たちの交流が微笑ましくて可愛い!
私もクマに救助されたい。←違う。
姪っ子ちゃんが遊びにくるので用意してみた本。
先日動物園の飼育体験をしてきたみたいで、タイミング良かったわ。
気に入ってくれるといいなー。
「ロマの血脈(上)」ジェームズ・ロリンズ (竹書房文庫)
何に向かってそこまで懸命に突き進もうとしているのか。
彼らは何を成そうとしているのか。
わからないながらも、子どもたちとチンパンジー・マーサの
命懸けの前進が痛々しい。
それを手助けする唯一の大人が彼であることが、ただひたすら嬉しい。
彼らから遠く離れた場所でグレイたちが繰り広げる死闘。
彼らの戦いの先に在るのは、子どもたちの戦い。
デルポイの巫女の神託からはじまる物語。
特殊な能力を強制的に増幅し、操ろうとするのは冒涜。
人の心の痛みがわからない輩には嫌悪感しかない。
私もマーサにハグされてみたいなぁ、と思いつつ、下巻へ。
チェルノブイリの原発事故からもうすぐ33年。
そして福島原発事故からは8年。
あれから〇年……と、ずっとカウントされ続けていく重大な事故。
人が物を作り出す力はとてつもなく素晴らしいものだと思う一方で、
制御できないものを生み出してしまう恐ろしさも孕んでいるのだとも思わせられる。
今回は薀蓄が少なく、最初から最後までハラハラドキドキしっぱなし。
「菫の騎士」榎田尤利 (SHY NOVELS)
誤解は言葉を尽くせば解消できるが、
身勝手な悪意はどうしたって振り払えない。
人と人。
信じた分と同じだけの信頼が返ってくるわけではないけれども、
信じることによって良質な変化を来すことは少なからずある。
裏切られるリスクがあるとしても、
アルヴィンは「信じる事」を貫いていいと思う。
理想論だけを述べているわけではなく、
経験から導かれた言葉だからこそ重みがある。
降りかかった火の粉は頼もしい騎士たちがきっと振り払ってくれる。
何より、精霊たちの加護もある。
人は「強い」のではなくて「強くあろうとしているから強くいられる」のだと
改めて噛みしめる。
良質なファンタジーと安定のBLの融合。
ダンテが己を守るために身につけざるを得なかった「強さ」が、
これからはアルヴィンを守るための「強さ」になることが嬉しい。
「楠木正成 下巻」北方謙三(中公文庫)
わかってる。
わかってるけど悔し泣き。←顕家が都に駆けてきたところで。
朝廷と新田の馬鹿さ加減には怒りしかない。
諦念しかなかった正成。
父に裏切られた大塔宮。
彼らが追い求めたものが、そして築こうとしたものが
幻だったと気づいたときの無力感が半端ない。
自分のことだけを考えていたのなら、もっと穏やかに暮らせただろう。
だが、彼らは考えた。
この国の在り様を。
未来を。
その結果がこれ!?と理不尽に震える。
すべてを俯瞰していた尊氏。
今回初めて尊氏の人となりをかっこいいと思った。
最後の尊氏と正成の邂逅がとても好き。
そして読後には虚しいため息。
馬鹿だなぁ、私。と思いつつ、顕家を思って号泣。
そして正成と大塔宮の諦念を思ってまた涙。
地図があったら良かったなーと、関西方面の土地勘が全くない私は思いました。
尋ねてみたい場所がいくつか。特に千早城。
それは今後の旅のお楽しみに。
「君だけが僕の奇跡」千地イチ (ラヴァーズ文庫)
白黒のモノトーンしか認識できない視界の中で生きてきた慎吾の眼に飛び込んできた極彩色。
それは世界がひっくり返るだろう。
その色を与えてくれた武にすがるように執着するのも理解できる。
そんな色を慎吾に与えた武は、過去の出来事に囚われたまま、
世間から身を隠すように生きてきた。
慎吾の歌声はそんな武の閉ざされた世界を解き放っていく。
ミュージシャンと画家。
二人が出会った瞬間から織り成される奇跡の物語。
子どもたちや仕事仲間、友人知人。
彼らが多くの人との接点を持ちながら成長や変化を遂げていく様が良かった。
とても綺麗なおとぎ話。
なんだけど!→
基本的にはあるがままを受け入れる派だし、
リバも気にしない。むしろウェルカム。
でもどういうわけか、この作品に限っては読み進めるうちに右左勝手に固定化されちゃって、
ああ、私の中では逆だったの~~!と、呆然。
うっっっ、私が悪い。
「ドリアン・グレイの肖像」ワイルド (光文社古典新訳文庫)
彼の人生における分岐は二つ。
一つはヘンリー卿に出逢ったこと。
ドリアンが自らの言葉に影響される様に悦びを見出し、
彼の精神を意図的にコントロールしようとし、それを楽しむ嗜好に
込み上げる腹立たしさ。
もう一つはそのことに気付きつつも、
ドリアン自身の意志でヘンリー卿の示した在り様に甘んじたこと。
その瞬間、彼の運命はすべて己自身の選択の上に積み重ねられていく。
彼の悪行を写し取って歪んで行った肖像画。
たった一度の善行で、何故今まで積み重ねてきた悪行が消化されると思ったのだろう?
変わらない絵に絶望したドリアンにはやるせなさしかない。
ヘンリー卿に天罰が下ればいいのに、と、
ギリギリとした想いを噛みしめた読み始め。
破滅に至ったのはドリアンの精神の弱さかな。
ヘンリー卿並み、もしくはそれ以上の精神力があったら、
全ての悪行を背負って微笑みの仮面をつけたまま生きていけた気がする。
思っていたほど練ったり凝ったりした文章じゃなく、
読みやすかったのは想定外。
これはまた再読したい。
その時はもっと時間をかけてじっくりと味わいたい。
←初読の時はどうしても先へ先へと駆け足になっちゃうので。
【ガーディアン必読 80/1000】
「華の闇」榎田尤利 (SHYノベルズ)
「幸福になる勇気」という言葉が刺さる。権利ではなく勇気。
吉原で暮らす遊女たちの生き様はあまりにもやるせない。
男遊女として吉原に身を置く華嵐とかつて想いを寄せた貴師との再会から始まる物語。
離れ離れになってもそれぞれの心に熾火のように残っていた想い。
立場の違いも相俟って、
歪にゆがみ、素直になりきれず、露悪的に振る舞って強情を張る。
そんな二人の想いが次第に浄化されて濁りのないものになっていき、
ただ純粋に愛しさ吐露して永遠の愛を誓う。
そこに至るまでの二人の在り様が見事に描かれていた。
雪の中での貴師の告白、良かったなぁ。
ああいった形での男の弱音の吐露。
胸キュン以外の何物でもない。
一度読んで手放して、買い直しての再読。
内容全く覚えてなくて、どんな読み方してたんだ?自分?とガッカリというか、びっくりというか(苦笑)
おかげで楽しく読めたのは……いいことってことにしておこう。
宮木さんの『花宵道中』が読みたくなる。