きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「丕諸の鳥」小野不由美(新潮文庫)
国の礎を担うのは民である、ということを改めて痛感させられた4編。
王が不在でも、国が荒廃しても、そこで生活を営まなければいけない民がいる。
そんな彼らが国を案じ、己にできることを必死でやり遂げようとする様に、胸を打たれる。
「丕諸の鳥」情景描写が溜息が零れるほど見事だった。
未来を諦めないでほしい。ここに人々の心の叫びを汲み取れる王がいるのだから。
「落照の獄」読後の苦い思いを形容する言葉がみつからない。
「青条の蘭」災害を食い止めようと王宮を目指してひたすらに走り続けた標仲。
動けなくなった彼の代わりに人々の手から手へと青条が託されていく様には涙が滲んだ。
苦悩や絶望の中にあっても、希望の光が決して潰えてはいないことを示してくれた物語だった。
内容(「BOOK」データベースより)
「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか―表題作ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。
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