きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「償いの椅子」沢木冬吾(角川文庫)
視点が次々に入れ替わっていく冒頭。
登場人物の多さも相まって、一瞬混乱しかけるも、
読み進めるうちに複雑に謎が交差する物語世界に一気に惹きこまれた。
これは男達の復讐の物語であり、家族の物語でもある。
人間はだれしもが二面性を持っている。
家族に、仕事に、敵に。向ける表情はそれぞれで、そして時々で違う。
相容れないはずの能見と南條が、梢の件で言葉を交わすシーンは何とも印象深かった。
下半身不随になりながらも、不屈の闘志を抱き続けた能見。
彼の生き様はあまりにも鮮烈だった。
自らの理想の追及のために子供を犠牲にした真希の
母親としての在り様にとても腹が立ったけれども。
先の展開が気になりすぎて
ドキドキが止まらずにぐいぐい引っ張られていく至福の読書時間でした。
「まあ、せっかくだから友達ぐらいにはなってやる。
あんたのこと、なんて呼べばいい?」
生まれてから一度も会ったことのない父親に対する男の言葉がとても粋。
沢木作品はあと一冊積んであるので、それも楽しみ。
読友さんからの感謝の贈り物なのです。
内容(「BOOK」データベースより)
五年前、脊髄に銃弾を受けて能見は足の自由を失い、そして同時に、親代わりと慕っていた秋葉をも失った。車椅子に頼る身になった能見は、復讐のため、かつての仲間達の前に姿を現した。刑事、公安、協力者たち。複雑に絡み合う組織の中で、能見たちを陥れたのは誰なのか?そしてその能見の五年間を調べる桜田もまた、公安不適格者として、いつしか陰の組織に組み込まれていた。彼らの壮絶な戦いの結末は…。
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