きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「草祭」恒川光太郎(新潮文庫)
現の中に混在する夢幻。
いや、確かにそれは、そこに在る。
人知れず、けれども、当たり前のようにそこに在る。
誰もが辿りつけるわけではない。
だけど、誰かが誘われる空間がある。
迷い込むのか、導かれるのか、偶然の悪戯なのか。
自らの意思のあずかり知らぬところで、
ある時、ある瞬間に、この世ならざる不思議に出会う場所。
それが、美奥。
その町で起こった不思議を綴った5つの短編連作。
綴られる美しい情景に想いを馳せているうちに、
いつしか彷徨いこんだその町で、そっと息を潜める自分がいる。
パタン、と本を閉じた瞬間に零れるのは安堵の吐息。
私は、ここにいる。
「けものはら」あちら側とこちら側に分かたれた二人の少年の会話がとても印象深い。
「天下の宿」鬼の見送りに、やさしい気持ちになった。
流れる時の中で、5つの世界は、つながっている。
5つの物語で、1つの美しい世界が構築された作品だった。
内容(「BOOK」データベースより)
たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らずたどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられた少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。
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