きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「楊令伝9 遥光の章」北方謙三 (集英社文庫)
例えるなら、一陣の風。
一瞬の強風が駆け去った後、そこに彼の姿はなかった。
そんな想いが突き抜けた瞬間、世界が止まった。
この先に何があるのかを見失ったと言ってもいい。
ただその時を見届けるために駆けてきたのは、私も同じだと、気づかされる。
そして、世界が動き出した時、払った犠牲の大きさに、愕然とする。
淀んだ澱のように胸の中に不快に漂うものは、青蓮寺の存在。
暗躍を巡らす李富の考え方が気に入らない。
大きな変化を迎えた彼らが対峙していかなければならないのは、一国の在り様。
より大きな困難を抱えたように思えるのは、私だけだろうか?
「豹子頭林冲を思い出せ」
この言葉に、胸が震えた。
以下、これから読まれる方はガッツリネタバレてるのでスルーしてくださいね。
結局、国の在り様が人を殺す。
童貫は楊令に討たれたけど、宋という国に殺された部分も否めない。
李富も童貫を殺す側に加担した。
一見すると、孤軍奮闘だったようにしか思えないけれども。
童貫こそが誰よりも楊令との戦いを望んでいた。
背後の柵など、見えていなかったに違いない。
と、心は梁山泊の同志な私ですが。
童貫の在り様には最後まで敬意を表したいと思うのです。
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