きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「調律師」熊谷達也(文春文庫)
亡くなった妻・絵梨子を想い続ける鳴瀬に対して
「私をお姉ちゃんだと思って」と言った
由梨子の言葉に「何言ってるんだろう?この人」と漲った反発。
姉に対しても鳴瀬に対しても、そして自分に対しても失礼だ。
イラッとしながら読み続けたわけですが。
心の枷を解くのは、その枷の原因となった当人。
鳴瀬の立ち直りの様を描いた描写は見事だった。
鍵盤から立ち昇る香りから想起させられる弾む音・濁る音・嬉しい音等々。
脳内で溢れる音の世界に浸るのは心地よかった。
章ごとに綴られる、ピアノの音と鳴瀬と弾き手の関係がとてもやさしい作品だった。
ノンフィクションやドキュメントとしての震災関連本は
積極的に読んでいきたい。
だけど、物語世界に差し挟まれると、楽しく読んでいる作中から
グラグラ揺れた現実世界に引き戻されるから個人的にはまだ触れたくない。
トラウマっているわけではないけど、そんな気分になるんだなぁ、と改めて思った。
でも「書く」というスキルや感性を持っている作家さんには
是非描いていってもらいたい。というのも本音。
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