きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「警視庁アウトサイダー」加藤実秋 (角川文庫)
バディを組んだのは訳あり二人。
エース刑事としての立ち位置を確立するために積み重ねた努力の動機がやるせない、表と裏の顔を併せ持つ光輔。
望まない部署に飛ばされ、周囲と嚙み合わないながらも、マル暴復帰を諦めず、自分スタイルで日々の業務を行う架川。
架川の不器用さが何だか可愛い。(50代のオッサンです。笑)
それぞれが秘密を抱えながらも、彼等が暴きたいものは自分を苦境に陥れることになった真実。
事件を追いながら互いの距離を縮めていく二人に
後ろ暗い諸々を抱えた刑事たちや、二人を監視する同僚が絡み合い、
色々気になりすぎて一気読み。
うわ、続き!と思ったけど、一巻しか積んでなかったんだよねー。
メッチャ続き気になるじゃないですか!入手しないと!
「狼と駆ける大地 月吠えシリーズ5」 (モノクローム・ロマンス文庫)
シリーズ5作目。
舞台はマッドクリーク、そしてアラスカへ。
新キャラに加えて
4作目までのメンバーたちも相変わらずな様子を伺わせてくれつつ、
内容的にはここにきて面白い方向に舵をきってきたなぁ、と感心しながらの読了。
ハスキー犬のティモがびっくり箱みたいな存在だった。
麻々原さんのイラストイメージとぴったり。
そしてジウス。
セントバーナードってそうだよね、という私のイメージ通りの風貌と性格!
共に大きな決断をした
パートナーになりたての二人がこの先どんな関係を築いていくのかとても楽しみ。
ご近所をセントバーナードがお散歩をしていた時期があって。
物おじせずに撫でさせてもらいにいっては
セントバーナードのよだれだらけになっていた10代の思い出。
「雪原の月影 満月」月夜(リブレ)
飢えに苦しむ極貧の領地が、領主の導きと村民たちの努力で豊かな領土となっていく
過程を描いた壮大な歴史物語。
と同時に、波乱万丈な人生を生き切った人々の生き様を描いた物語。
更に。
生涯を添い遂げた恋人たちの愛の物語。
圧巻の読み応え。
誰に対しても平等に訪れる「死」がある限り、死に引き裂かれる「別れ」も必ず訪れる。
寿命の差があったからこそ、彼等には人並み以上の覚悟が必要だった。
それでも。
素晴らしい伴侶に出会い、素晴らしい人生を全うした彼らの生き様がとても素敵。
最期の瞬間に「楽しかった」と。
言い切れる人生で在れば幸せだと心底思う。
700年の時を越えての契約の履行。
エルトゥールル号のことを思い出した。
姪っ子ちゃんに『海の翼』を貸したんだよね。
どんな感想を聞かせてもらえるのか楽しみ。
彼女の学校では1時間目の授業開始の前に10分間の読書時間があるんっだって。
なにその至福時間。
家にある本は読みつくしたのでおすすめの本貸してもらえるかな?と言われたので、
張り切って色々送ってみました。
何か感じてくれると嬉しいな。
「雪原の月影 三日月」月夜(リブレ)
世界観が破綻なく細密に作りこまれた作品は、気持ちよくのめり込める。
廃嫡された皇太子が領主に任じられたたのは、荒廃しきった領地。
村同士でいがみ合い、生きることに疲弊しきった人々が暮らすその土地を
豊かな領土に再生してこうと奮闘する過程が丁寧に真に迫って描かれていて
本当に面白い。
理不尽に見舞われたエルンストが己の人生を肯定的に捉えることができたのは、
愛を交わし合う伴侶・ガンチェに出会えたから。
この二人はこの先乗り越えなければならない大きな問題を抱えている。
政治的な側面と恋愛面がバランスよく描かれていて一気読み。
明日休みで良かった(笑)
国を支える国民がいるから国が成り立つ。
このことを蔑ろにする施政者は、いずれ己の首を絞めることになる。
ってか、そうなればいい。
自らを鍛えようとするエルンストを必死で阻むガンチェの態度は私的にはマイナス。
自分でできることを増やすことは自らを助ける術になるんだよ?
「沖晴くんの涙を殺して」額賀澪(双葉社)
絶望のどん底に突き落とされてもなお、生きていかないといけないのならば。
あらゆる感情を削ぎ落してしまった方が、楽に前に進むことができるだろう。
けれども。
抱えていることがどんなに苦しくても、それらすべては失くしてしまってよいものではなく、
この先を誰かと時間を共有しながら生きていくために必要なもの。
「乗り越えるのではなく、溶けていく」という言葉にはものすごい説得力がある。
どんなに話がしたいと思っても、死者は問いかけには答えてはくれない。
それでも。
話したい、と思える誰かに出会えたことは哀しみ以上の幸いがある。
一度きりの人生だからこそ、QOLは大事にしたい。
……って、これ『ライオンのおやつ』を読んだ時も書いたな。
ま、意見は変わらないってことで(笑)
余命宣告されてからの強烈な副作用のある薬は、
私も京香と同じく選択はしない。したくない。
登録2222冊目。
胸に染み入る良い作品と出会えました。
「果樹園の守り手」コーマック・マッカーシー(春風社)
老人のターンは風景と人が完全に同化したかのような描写。
それも、ひっそりとした、どこかくすんだ色合いの風景。
けれども、彼の生活圏に少年が紛れ込んだ瞬間、
色味は鮮やかさを増し、どこか人間味を帯びる。
子どもって偉大だ。
人の命を殺め、違法な商売に手を染めた男が、少年に言い含めた言葉。
意外だった。
誰かに対しては悪であっても、他の誰かに対しては善になれる。
その少年が若者となった所で物語は幕を閉じるけれども。
彼を取り巻いていた色味は鮮やかさよりも落ち着きを醸し出し、
それが彼の成長を物語っている。
マッカーシーデビュー作。
久々の海外小説だったからなのか、マッカーシーだからなのか。
最初の30ページくらいまでを読みきるのに時間がかかることかかること。
いつものペースで読めるようになった瞬間、何故かほっとしました。(笑)
曇天の空の下、風と草木の香りを感じながら読むのがベストマッチな気がする。