きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「アロー」一穂ミチ (幻冬舎ルチル文庫)
気持ちの温度で例えると、低めに進行する物語。
だけど、その熱くない感が心地良い。
関わる人たちの気持ちがあたたかくて、
だけどベタついていない距離感がやはり心地良い。
そしてサラリと放り込まれるいくつもの印象的な出来事。
金子、いい人だよー。
金子がいてこそつながった草と麦。
つながったからこそ、柵から解放された二人。
一人では変わることのできなかった二人の心情の変化の丁寧な描写から、
フラットだった感情の起伏が伺えて、互いに芽生えた想いに安堵する。
表紙とタイトルを改めて眺め、統一された世界観に浸れる読後。
作中の人たちの会話がとても楽しくて好き。
「底までついたらあとは浮上するだけ」って激しく共感。
中途半端なところで踏ん張ってるから苦しい。
だったらいっそ底まで落ちてしまおう。
上に行く以外、行き場がないのだから。
そう思えるようになった瞬間、楽になったかつての私。
ああ、だけど果てしなく穴を掘る夢を見てうなされたこともあったわ~。(爆笑)
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「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」大江健三郎 (新潮文庫)
た、楽しくない!
言い回しが小難しい上に、偏執的なエロ描写が不愉快。
何か抑圧されたもの、抱えてますか?……と思ったけど、
作中に色濃く投影されている著者のバックボーンや思想を改めて知ると(読了後調べた)、
全体的に違った読み解き方ができてくる。
事前の私の知識不足。
とはいえ、今は読み返す気力はない。
鬱々とそして淡々と語られる「僕」たちの抱える狂気。
そこに理解も共感性もまったく見出すことができず、
頑張って読み切った感満載の読後感になってしまった。
久々にストレスフル。
作中の表現から沖縄返還前の作品だということが知れる。
もうすぐ本土復帰50周年。
反射的に北方領土のことを思ってしまった。
この作品がガーディアンに選出された理由ってなんだろう?
英訳で読んでもこの雰囲気を忠実に引きずっているのかしら?
読後の私のクエスチョン。
【ガーディアン必読115/1000冊】
「くぐもったドラム 」英田サキ(ハーレクイン・ラブシック)
どちらが悪いわけではない。
わかってる。
わかってるけど……ばかー!と、叫びたくなる。
人生を賭けた約束を果たそうというその日に二人が見舞われた悲劇。
幸せの明日を迎えるはずが、マティアスは失意の底に。
そこからは傷つき、傷つけあい、或いは負った傷を押し隠しての二人の旅路。
マティアスの本当に健気な強い想いがあってこその再生。
ああ、もう、ルドルフ!なんでそんなときに頭打ってるの~~!?←戦争だからです。
欠けた記憶が生み出す誤解と混乱。
まっすぐゴールできたところをアクロバティックに紆余曲折して、
……あれ?結果的には予定通り?
時代設定が1866。
南北戦争を想起しそうな時代に
普墺戦争が舞台ってなかなかレア……と思ったら、
メインはそこじゃなかった。(笑)
英田さんではなく、だけど、英田さんでもある。
超訳のおもしろさがちゃんと伝わった作品になってるんじゃないかな?
「彩恋 リンクスノベルス アンソロジー」(冬幻舎)
4作品の番外編アンソロジー。
既読のかわいさんの『平河寮シリーズ』と水壬さんの『エスコートシリーズ』のみ読了。
このボリュームでオールキャラ総出で楽しませてくれる筆力は、お二人ともさすが。
シリーズ全編を再読して臨んだかわいさんは、日常の延長的に楽しんだけど、
間隔がだいぶ空いた水壬さんのシリーズはみんな久しぶりー!とテンションが上がった。
『エスコート』シリーズ以外のキャラも出ていて、想定外なだけにますますテンションが上がった。
こういう企画物、楽しくて良い。
小冊子もお得感満載。
未読の2作品も機会があったら読んでみよう。
『エスコート』シリーズは、さすがに再読できるボリュームではなかったので
自分の感想を読んで復習。(笑)
読メお役立ち。
私はノベルズ版で持ってるけど、文庫だと書き下ろしがあるんだよね。
再読するならそっちにしようっかなぁ。
「コールドウォー DASPA 吉良大介 」榎本憲男(小学館文庫)
ただ楽しく読書がしたい時向けの本ではない。
専門的なこと、政治的なこと、現在の世界情勢が
わかりやすく噛み砕いて書かれているだけに、
スルリと頭に入ってくるからたちが悪い。
故に、読みながら考えさせられてしまう。
日本のこと。世界のこと。
これからのこと。
後半はエンタメの方に寄り、そこからは一気に読了。
真行寺が席を立った時に私も笑って腰砕け。
情報を仕入れることと、情報に惑わされないこと、
そして、自分で考え続けること。
あとは時々誰かとその考えを話すことと、
時には頭を空っぽにすることも必要かな。
そんなことを思いながらの読了。
巡査長真行寺弘道シリーズの『インフォデミック』を読んでから
本作を読むことをお勧めします。
作中でフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』に触れられていて、
そういえば昔読んだなぁ、と思って読書記録を引っ張り出してみたら……
なんかびっくりなことを発見しました。そこはつぶやき参照。(笑)
「墨と雪2 下」かわい有美子 (リンクスロマンス)
共にそこに在ることがまるで当たり前のように、
自然に寄り添いあっている二人に祝福を。
篠口の身にふりかかったことは、忘れることはできないだろうけれども。
外に目を向けることができるようになっていく彼の様子に安堵し、
フラッシュバックする姿に胸が痛くなる。
それでも、献身的な黒澤の支えによって、少しずつ自分を取り戻していく篠口。
そして復帰した彼を迎え入れた職場の面々の対応には胸が熱くなった。
そのために黒澤の部屋は殺風景だったのか……と思いたくなる展開が良い。
犬のレイディに黒澤がのろけるシーンが好き。
大満足で読了。
描きおろしの小冊子が甘さMAXで幸せに浸れる。
デビュー作から追いかけている作家さん。
無理せず長く書き続けてもらいたい。
「墨と雪2 上」かわい有美子 (リンクスロマンス)
身勝手で残忍な犯罪に巻き込まれ、
心身ともに大きな傷を負った篠口の傍に黒澤がいてくれてよかったと。
つくづく思う。
一人では立ち上がることすらできなかったであろう大きな傷に、
ともすれば、黒澤の言う通り自分を壊そうとしてしまったかもしれない篠口。
そんな彼にやさしく寄り添いつづける黒澤。
曖昧な関係を長らくつづけながら、黒澤が篠口に対してどんな想いを抱いていたのか。
ひしひしと伝わってくる。
そして黒澤の過去も気になる。
丁寧に丁寧に描かれる再生の物語。
ゆっくりでいい。
ゆっくりでいいから、日常を取り戻していってほしい。
焼肉屋さんを経営している妹の友だちがお勧めするお肉の部位はカイノミ!
そんな話をしたばかりだったので、お肉のカイノミチョイスにタイムリ~♪と思ってみました。
「墨と雪」かわい有美子 (リンクスロマンス)
【再読】
ちょっとここで終わるってどういうことよ!?と吠えた初読時。
え?続きは?!という思いは再読でも変わらないけど、
今回は『墨と雪 2』がちゃんと手元にある安心感。
しかも上下巻。
読み応えがありよね、というわくわくが止まらない。
自分が知らない間に向けられる、粘着質な執着。
一方的なものだけに、防ぎようがないのが半端なく恐ろしい。
自由を奪われての暴力に対する恐怖は計り知れない。
あの奇妙な部屋を施工した業者の人がいるなら、通報しよう。
黒澤の篠口に向けた想いを明確に口にしたところで
本作は終了。
シビアな展開だったので、次は甘さを所望するわ。
ここまでで再読終了。
とても楽しかった。
そしていよいよ新刊に突入します!
たどり着くまでとても長かった。
「Zwei」かわい有美子 (リンクスロマンス)
【再読】
およそ10年ぶりに再会したかつての同級生との
しっとりと進展していく大人の恋。
10代のころにはどうにも進展することのなかった思慕の情。
30を過ぎた今だからこそ、動き出したた想い。
分別ある大人だからこそ、抱える諦念。そして切なさ。
二人の恋愛模様と警察内部の事件の深刻さとのバランスも絶妙で、
読後の充実感が半端ない。
どう想像したって笑えるトナカイとの絡みから、
あんな的確なアドバイスをもらえるとは思わなかったわ。
峯神の過去を知るからこそ感じられる言葉の重みはシリーズ読みの特典。
書きおろしに感無量
厳島神社、私も好き好き。
何度行ってもまた行きたい。
弥山の上から初日の出!拝んでみたい。
どう考えても無理そうだけど。