きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「チャイルド・オブ・ゴッド」コーマック・マッカーシー(早川書房)
大きな感情の起伏はなく、明確な理由も示されぬまま、
どこまでも「人」としての営みから外れ、転落していくバラード。
自分と同じ人間の括りだと思えないのか、思いたくないのか、
「人間に慣れている類人猿」という比喩がストンと落ちる。
もはや「犯罪」という言葉では形容しきれない彼の所業。
その根底にはあるのは、原始的、或は本能的な何か。
洞窟の腐臭すら漂ってきそうな緻密な描写。
感情が一切排除されたその描写には、想像の付け入る余地はない。
どこまでも淡々と綴られる渇いた言葉に牽引され、
彼の蠢く深い闇の中に引きずり込まれる。
そして、指先で削り出した光に、自分が人間であることに、安堵する。
鬱々とした感情が振り切れるように揺れたのは、バラードが泣いた時。
美しい自然の光景を目にして泣く資格はあなたにはないと。
そんな言葉を突きつけたくなった。
というわけで、読メ登録1000冊目はマッカーシーで。
どんな本?と尋ねられたら、形容がとても難しい。
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