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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ブルース」花村萬月(角川文庫)



【あまりに胸が、心が痛いので、気を失った】

あまりに純粋で狂おしい情愛と、苛烈なまでの暴力の連鎖。
法の外にはみ出した行為を是とする徳山の想いに同調するまい、と、
自分に言い聞かせるのだけれども。
報われることのない彼の想いに胸が軋む。
徳山の想いを認め、受け入れながらも、
対峙する道を選ばざるを得なかった村上の頑なで不器用な潔さ。
崔とサチオの犠牲の上に成り立つ安寧を良しとせず、
綾の元を去ることを選び、つかみかけた光に背を向けた。
誰も彼もが抱えていた大人になりきれない青臭さが、
自らも含む人々の運命を歪ませていったのだ。
描かれる物語は魂の慟哭。文字通りのブルース。

北方氏のあとがきが秀逸。
「たまらんぜ、萬月。なにが悲しくてこんな小説を書く」
私にはその言葉がもうたまりませんでした。



内容(「BOOK」データベースより)

南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であった―。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。

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