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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「雷の季節の終わりに」恒川光太郎(角川ホラー文庫)




そこに在る己の存在は確かに感じられるのに。
自らの立つその場所の、なんと寄る辺のないことか。
その里に在りながら、常に感じていた疎外感。
その理由がやるせない。
大切な人たちの消失。
死者の語らう真実。
その者の犯した罪に気付いた瞬間、彼は追われる身となり果てる。
どこまでが偶発的な出来事で、
どこまでが決められていた事だったのか。
此方と彼方。
交錯する過去と現在。
移り変わる視点は次第に近づいてゆき、彼らは再び巡り逢う。
そしてあまりにもあっけなくすれ違っていく。
雷の季節の終わりを迎えた少年は、この先、どんな四季を生きるのだろうか?

ホラー的要素は私的にはあまり感じられなくて、
むしろ幻想的と言った方がしっくりきます。
因習にとらわれてきた里の中に在っては、
すべてが運命(さだめ)であり、理(ことわり)である、と、
感覚的に納得しているあたり、独創的な著者の描く世界に引き込まれているのだと思いました。
異界をゆらゆらと漂う感覚が癖になりそうな物語。


内容(「BOOK」データベースより)

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしない―。地図にも載っていない隠れ里「穏」で暮らす少年・賢也には、ある秘密があった―。異界の渡り鳥、外界との境界を守る闇番、不死身の怪物・トバムネキなどが跋扈する壮大で叙情的な世界観と、静謐で透明感のある筆致で、読者を“ここではないどこか”へ連れ去る鬼才・恒川光太郎、入魂の長編ホラーファンタジー。文庫化にあたり新たに1章を加筆した完全版。

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