きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「風紋 上・下」乃南アサ(双葉文庫)
【犯人?何のこと?
私は、お母さんに生きていてほしいと思ってるだけ】
殺した者。殺された者。
だが、事件はそれだけでは終わらない。
どちらの家族もまた、禍々しいまでの嵐の中に投げ出される。
マスコミ、ご近所、第三者。
自らの生活に関係のない人たちにとっては、事件はいずれ過ぎ去っていく事象であり、
結局は他人事だ。
だが、家族は終わることのない苦しみを抱えたまま、この先の人生を歩んでいかなければならない。
被害者側家族の心理も、加害者側家族の心理も生々しく胸に迫ってくる。
時に息苦しさを感じるほどに。
母の死をきっかけに父の浮気、母の不貞という家族の秘密を暴かれた高浜家。
今にもバラバラに壊れてしまいそうな危うい状態にあったはずなのに、
少しずつ「家族」という絆を取り戻していく。
そのきっかけが母の死であったことが、ひどく悲しい。
仕事を奪われ、家族が離れ離れになり、これまでの日常をすべて失った松永家。
それでも生きていかなければならない、という香織の言葉通り、
彼らは疲れ果てながらも懸命に日々を繋いでいく。
「殺人者の子供」として一生生きていかなければならない幼い子供たちが、やはり、悲しい。
人は、絶対に誰かを殺してはいけないんだと思う。
内容紹介
「犯罪被害者に限定して言えば、事件の加害者となった人間以外はすべて、被害者になってしまうのではないかと、私はそんなふうに考えている。そして、その爆風とも言える影響が、果たしてどこまで広がるものか、どのように人の人生を狂わすものかを考えたかった」-乃南アサ
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