きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「高熱隧道」吉村昭(新潮文庫)
【なぜ人間は、多くの犠牲をはらいながらも
自然への戦いをつづけるのだろう?】
昭和11年に始まった黒部第三発電所建設工事は、
場所によっては165度の岩盤温度を記録する高熱地帯を掘り進まなければならい
過酷な大工事だった。
完成までの4年の間に失った命は300名を超える。
劣悪に過ぎる環境下で偉業を成し遂げた作業員たちに笑顔はなく、
疲れ果てた彼らのやり場のない憎しみを向けられた、現場を指揮した者たちは、
逃げるようにその場を立ち去っていく。
そこに達成感や充足感はなく、虚しさともの悲しさが胸の内を侵食する。
係わった人たちをそれだけの極限に追い込む危険を伴う作業だったことが
淡々と綴られる文章から伝わってくる。
それでも、続けられた隧道工事。
その時代にあれだけのトンネルを貫通させた人々には畏敬の念を抱かずにはいられない。
いまの日本の礎の一端を、間違いなく彼らも担っている。
今から80年近く前の技術の進捗も自然現象の解析も地質調査も
今とは比べ物にならない時代に
これだけの工事をやり遂げた人々がいるということに心が震えます。
泡雪崩が建物をあたかも消失したかのようにごっそりと吹き飛ばす、という事象には絶句。
自然の恐ろしさを改めて思い知らされました。
内容(「Amazon」より)
黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。
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