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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

『恋』 小池真理子(新潮文庫)





【確かに、あれは誰もが落ちる恋には違いなかったが、健康的な恋ではなかった】

もし、あの時彼らに出会わjなければ?

出会ってしまった後の仮説には意味はない。
何故なら、具現化してしまった現実を、なかったことにすることはできないのだから。

健康的ではない、歪な関係の中にあった三人の前に現れた、一人の青年。
彼の指摘していることはとても真っ当で、その真っ当さ故に、彼は命を失うことになったんだと思う。

理解するに及ばない片瀬夫妻の関係。
でも、理解し得ないからこそ、彼らの織り成す物語に引き込まれていく。
そんな彼らのあり方を肯定的にみなすあたしの立場は布美子寄りで、
だからこそ、彼の真っ当な指摘にはっとさせられる。
それは、理解し得ないといいつつ、
三人の歪なあり方に魅了されていることに気付かされる瞬間でもある。
つまりは、作者が生み出した世界にどっぷり引きこまれているのだ。

妙義山・軽井沢・雲場池等々。
大好きな場所が随所にちりばめられているのも、個人的にはこの本に入れ込んでしまった理由。
情景がとてもリアルに目に浮かび、また足を向けたくなってしまう。

それにしても……
彼女の紡ぐ日本語はやはりとても綺麗だと思う。

内容(「BOOK」データベースより)
1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で、一人の女が引き起こした発砲事件。当時学生だった布美子は、大学助教授・片瀬と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。が、一人の青年の出現によって生じた軋みが三人の微妙な均衡に悲劇をもたらした…。全編を覆う官能と虚無感。その奥底に漂う静謐な熱情を綴り、小池文学の頂点を極めた直木賞受賞作。

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