きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「旅をする木」星野道夫 (文春文庫)
遮蔽物の一切ない広大な自然の中へと誘ってくれる一冊。
澄んだ空気、凛とした静寂、そこに佇む大地、厳しい自然の中で生活する人々、
そして様々な動物たち。
紡がれる言葉からその情景を思い浮かべることが出来るのは、
彼の撮った写真を見てきたからだろう。
命のきらめきまでもが宿った写真を。
先を急いで読む本ではない。
一篇一篇頁を捲りながら彼のやさしく飾らない言葉をゆっくりとなぞり、
彼の見てきた情景へと思いを馳せれば、心が少し、自由になれる気がする。
1枚の写真に魅せられ、アラスカの小さな村の村長に手紙を書き、
単身でアラスカを訪れることを決意した時の彼は19歳。
広い世界に飛び出していった彼とは真逆で、
19歳の私は生きることの意味を必死に自分の内面に問いかけていた。
そして、この本の池澤氏の解説を読み、自分の根底にあるもののひとつが
ソクラテスの言葉にあることを再認識する。
「いちばん大切なことは単に生きるのではなく、善く生きることである」
旅を続けてきた彼が、アラスカに根を下ろすことを決めた矢先での急逝。
それでも彼は、彼にしかなし得ない、濃密な人生を駆け抜けたのだと思う。
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