きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ヴェネツィアに死す」トーマス・マン(光文社古典新訳文庫)
【なるほど、私を待っていたのは海と浜辺ではなかったのだ。
おまえがいる限り、私はここにとどまろう!】
水の都、ヴェネツィア。
その街の美しさと醜悪さを描く描写。
比類ない美しさを備えた少年の描写。
そして、孤高の老作家の内面の描写。
情景がとてつもなく鮮明に脳裏に浮かび、
心理がひしひしと押し迫る描写にくらくらとするような眩暈を覚えながら読了。
身も蓋もなく言ってしまえば、老作家はストーカー。
少年にしてみれば、見知らぬ老人につけ回される気味の悪い話である。
が、少年と老作家の視線が交わった瞬間の描写はあまりにも美しく、
鳥肌が立つかと思いました。
一度は逃げ出そうとした街に再び戻らざるを得なかった老作家。
多分、その瞬間から彼の運命は決まっていたのだろう。
彼を奈落の底へと呑みこんだのは少年の存在か、或は、芸術という概念そのものなのか。
私には計り知れない。
内容(「BOOK」データベースより)
高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。
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