きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「その鏡は嘘をつく」薬丸岳(講談社文庫)
期待か強制か。
愛情かエゴか。
紙一重なんだなぁ、と。
やりたいいことを主張できるだけの明確な目的と意志の強さがあれば
自分の思い描いた未来と親の描いた未来との折り合いをつけることもできるのだろうけど。
彼らの年代や立場を思えば、それがままならない子供たちがいることもあるだろう。
どうしても親や周囲の期待通りにいかないもどかしさ。
そこから逃げることのできない閉塞感。
その揺らぎに付け入る大人は最低だし、ましてや、彼のやったことは人として最悪だ。
たったひとりの命を救おうと、必死で立ち回った青年の姿は、とても痛々しい。
けれども、そんな彼の想いは確かに届いたのだと。
そして、周囲の人の想いもまた、彼に届いたのだと。
思えるラストがあたたかい。
親子の間に確執があって歩み寄りたいと願っているのなら。
早いうちに、と。
想いを伝えられるうちに、と。
思えてならない。
死者に想いを伝えることは叶わないから。
死者からの言葉を聞くことはできないから。
内容(「BOOK」データベースより)
鏡ばかりの部屋で発見されたエリート医師の遺体。自殺とされたその死を、検事・志藤は他殺と疑う。その頃、東池袋署の刑事・夏目は同日現場近くで起こった不可解な集団暴行事件を調べていた。事件の鍵を握るのは未来を捨てた青年と予備校女性講師。人間の心の奥底に光を当てる、著者ならではの極上ミステリー。
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