きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「天平の甍」井上靖(新潮文庫)
西暦700年代。
命掛けで海を渡り、異国で学んだ遣唐使たち。
移動も誰かに会うのも写経をするのも。
今の時代とは費やす時間があまりにも違う。
それでも一つのことを探求しつづける彼らの姿勢には背筋が伸びる。
志半ばで道を逸れる者にも事情があることが汲み取れるのもリアル。
唐に渡った普照が高僧鑑真を伴って帰国するまでに費やした歳月は20年。
当時鑑真は66歳。
二度と故国には帰れないことを覚悟しての来日であっただろう。
彼らの熱意の根源は仏教への深い思い。
唐招提寺の落成で物語は終わる。
彼らの痕跡を実際に辿ることができるのは僥倖。
興福寺、東大寺の大仏。唐招提寺。
1400年程前の建立物を未だこの目で見ることができる事実に、
自分が悠久の時の流れの中で生きていることを実感する。
そして支倉常長がヨーロッパへ渡るのがいかに大変だったのか。
実際にそれをサンファン館で学んできただけに、
その時代よりもさらに古の時に荒波を渡っていった彼らの苦難の道を思う。
初読の時は業行が辿った運命に「ああ」と頭を抱えたくなったけれども。
今なら「リスク分散」を強く主張したい。
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