きままに読書★
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「悪意の手記」 中村文則(新潮文庫)
【不意に、どこまでも行こうと思った。
どこまでも堕ちていけば、いずれ自分を、
何かが虫のようにひねり殺してくれるような気がした】
タイトルと内容を見て想像した「悪意」とは大分意味合いの違う悪意。
死への恐怖から逃れるために世界を憎悪し、
死への衝動を断ち切るために親友を殺す。
そして殺人という重さから逃れるために人間の屑であることを目指した
主人公の気持ちに寄り添うことなんてとてもできなくて、
でも、気づけば彼の綴る言葉から目が離せなくなってしまっていた。
達観したようにみせかけつつ、自分の犯した殺人という罪に苦悩し、
世界の醜悪に塗れることまで想い描きながらも、
結局は「私」の言うところの「悪意」に染まりきることなく、むしろ、贖いの様相を呈してこの手記は閉じられる。
人はなぜ人を殺してはいけないのか。
人はなんのために生きるのか。
読み手にはずしりと重い、問いかけが残されたまま。
内容(「BOOK」データベースより)
至に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する―。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許されるのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。
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