きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「永遠の仔 五」天童荒太(幻冬舎文庫)
【生きていたことが間違ってなかったって。
そう信じさせてくれた人と出会えたことで、充分なのよ】
「打ち明けてしまう弱さ」
志穂はそう記したけれども、確かに、彼女がすべてを抱えて胸の内に秘めていたなら、
せめて聡志は救えたのかもしれない。
彼女によって明かされた真実は、誰にとっても残酷なものであったけれども、
同時に優希の心を救うものでもあった。
笙一郎が越えてしまった分岐点。
誰か一人でも彼を傍で支えてくれる人が、或は、彼を必要としてくれる人がいてくれれば、
こちら側に踏みとどまることができたのかもしれない。
三人が離れ離れだった十七年間、優希には家族や患者がいて、
梁平には叔父や叔母、奈緒子や伊島がいた。
けれども、笙一郎の人生に寄り添う者はおらず、結果的に彼は道を踏み外してしまった。
改めて思う。
人は、一人では生きられない。
負の連鎖を断ち切ることができるのも、闇に呑まれるまいと戦えるのも、
人生を踏ん張れるのも、たぶん、誰かの存在があってこそなのだと思う。
愛しいと思う気持ちも決して一人では生まれてこない。
一番身近にいる他人は家族。
お互いの生を喜び、抱きしめあえる家族であることを願ってやまない。
内容(「BOOK」データベースより)
母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れる―。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?“救いなき現在”の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章。
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