きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「虐殺器官[新版]」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
美しいとすら言える亡骸の描写に鳥肌が立つ導入部。
これは、死者を語りながら生者を語る物語。
他者とそして自己の内面との対話を繰り返しながら問われる罪の意識。
「大切な人の死体は物に見えない」
だから、面識のない数多の人間を手にかけることができるし、
大切なたった一人の人間を手にかけることを躊躇し、苦悩する。
たとえ、平和な世界を願ったとしても、
それが他者の累々とした屍の上に築かれる社会がまっとうであるはずがない。
クラヴィスはそのことに気付き、そして選択した。
自らの意志で罪を背負うことを。
たとえその思考の果てにどんな結果を引き起こしたとしても、
人は考えることをやめてしまったらいけないんだと思う。
一気に読みきった初読の時に比べると、倍近く読むのに時間がかかったのは、
彼らの紡ぐ言葉を拾いもらすまいと、懸命になっていたためか?
咀嚼しきれていない部分もあるだろうけど、反芻しながら噛み砕いて行こうと思います。
映画が楽しみ。
内容(「BOOK」データベースより)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。
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