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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「君の名前で僕を呼んで」アンドレ・アシマン (マグノリアブックス)



読み進める程に物語の中に引き込まれ、
気付けば鷲掴みにされていた。
ひと夏限り。
それは最初からわかっていた。
だからこそ、縋る刹那。焦燥感に駆られるように溢れ出す想い。
君が欲しい。
抱き合うことができるなら、ひと夏限りでも構わない。
否、この夏限りだからこそ、君を知りたい。
そして別離。
だが、物語はそこで終わらない。
夏が過ぎても、彼らの人生は時を刻み続ける。
こんな形で抱き続ける想いもあるのだと、切なくなる。
それ故に、最後のエリオの言葉がより深く、胸に刺さる。
人生は有限。
ならば、決して悔いのないように。

映画を観てから小説を読んだおかげで、
情景がリアルに浮かんできたのは良かった。
最初、物語世界に入り込みづらいなぁ、と感じたのは、
逆に映画を観ていたからなのかなぁ?と思ってみたり。
観てから読んでしまったので、検証はできないけどね。
語られると思っていなかった映画のエンドの後の彼らの人生。
二十年後まで追えたことに、感無量。
脱線すると、彼らが吸っていた煙草がゴロワーズだったことに、北方脳がピクリと反応してみました。




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「風裂 神尾シリーズ5」北方謙三 (集英社文庫)



神尾が依頼人の人生に巻き込まれるのか、
依頼人が神尾の生き様に引き込まれるのか。
もはやどっちがどちっちかわからなくなってきた。
死に焦がれるからこそ、死に嫌われる神尾。
安らぎに目を閉じることに甘んじるなと、責められているかのように。
或は、その業故に背負う荷物は増えていくのだと戒められているかのように。
自責と諦念に縛られた神尾は、ただ手を貸し、そして導くだけ。
彼らの望む方向へと。
そして、自らの足で立つことを教えられ、成長著しい命が散って行くやるせなさを噛みしめる。
今作に至るまで、余りにも多くの命が失われた。
だからこそ思う。軽々しく扱っていい命など、ないのだと。


前作がガス欠を気にしながらの砂漠の疾走だったせいか、
例え山道でもきちんと舗装された道路をガス欠の心配なく走ることのできる安心感半端ない。
やっぱ車は走ってナンボ。

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「吸血鬼には向いてる職業」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



ギャグテイストで笑わせてからの、孤独感と諦念とが絡みついた愛情深さに落涙。
この緩急、さすが榎田さん。
新人編集者・藍を片手であしらうつもりの売れっ子漫画家・黒田が逆に振り回される様が面白い。
藍のなんとしても原稿を取りにいくというど根性精神。
根底に溢れる漫画に対する熱い想い。
オタクの粘り強さは侮ったらいけないのです。
そして、見た目で人を判断したらいけないのです。
深い孤独を抱えた二人が時折垣間見せる揺らぎが刺さる。
愛する人とは、いつか、永遠の別れを告げなければならない。
それは宿命。
だけど、せめてそれまでは一緒に。
流血沙汰を経ての告白シーンにはぐっときました!


口絵の赤黒衣装。
とてもとても着てみたい。
ヴァンパイア物を描いていて、エドガーを知らないとはけしからん!と、
黒田に対してチラッと思ったことはナイショです(笑)




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「愛なら売るほど」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



表題は泉が10年来恋焦がれてきた飴屋との再会から。
偶然の采配で同じマンションの上下階で暮らすようになって訪れた
顔を合わせる機会。
泉の職業柄、どうしても切り離せない橘の存在。
彼を巡る勘違い甚だしい会話は、嘘は何一つ言っていないところが面白い。
勘違いに押されて飴屋がとった暴挙。
結果が祝福で良かったね。
同時収録はその橘の恋。
どれだけカッとなってもあの行為は頂けない、と思いつつ。
言葉が足りない大人は、思い込みと、時にその言葉に振り回される。
橘との出逢いは小谷にとっては息を吹き返すための必要な出逢い。
切ないけどとても良かった。
最後の描き下ろしは御馳走様、とひたすら笑顔。

独り暮らしを始めた娘は、バイトや合コンに充実した生活を送っていました。
当時は携帯がまだ普及し尽くしていない時代。
家電にいくら電話をしても、娘と連絡が取れない。
訪ねた部屋は誰もおらず、鍵がかかったまま。
心配でたまらなくなった父がとった暴挙は、なんとアパートを2階までよじ登って
ベランダから娘の部屋に侵入するという荒業。
結果、近隣の人が警察に不審者ありと通報。
……という、友だちの姉の体験談を思い出しました。

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「流塵 神尾シリーズ4」北方謙三 (集英社文庫)



へし折られた翼を取り戻し、生き返った男。
乗り越えるべき壁にぶつかった男。
自らの足で立とうとする、成長著しい少年。
彼らは神尾と出会い、神尾と行動を共にする。
ウイグルからタクラマカンの砂漠を抜け、敦煌へ。
目指した国は、日本。
叶うことなら、四人で。
誰一人欠けることなく四人で。
年若い彼らが成長していく様をみていれば、彼らの未来を希う。
またかよ!とは言ってはいけない。
だけど、言いたくなる。
わかってはいたけど、またかよ、北方!(涙目)
自らの誇りに殉じた彼らに悔いはなかったはず。
流れる塵と共に、やすらかに。


もはや、足手まといとは言わせない、秋月。
キミの本職はなんだっけ?と言いたくなるくらい、いい仕事したよ。

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「ごめんなさいと言ってみろ」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



意地っ張りがふたりそこにいたら、ぶつからないわけがない。
久々野と律の子供じみた言い合いがとても楽しい。
反発しながらも、仕事を通じて縮まっていく距離感。
書いた(描いた)作品に魅了されるということは、
その人の感性に共鳴するということと同義。
惹かれあうのは必然な気もする。
久々野が律を腕の中にしっかりと抱きしめる、
10歳離れた年の差故の包容力と甘さとやさしさが心地よい。
律が抱えていた失恋ががありきたりなもので終わると思ったら、
そこからの深みのある展開と説得力はさすが榎田さん。
テンポよく楽しく読了。


「妬いたんだ」
「焼いたって、何を?」
こういう噛み合わないやり取りがとても楽しかった。
で、最後にカチッとはまる小気味の良さ。
ハードボイルド好きとしては、久々野の書いた作品を是非読んでみたい!
と、思っちゃうよねー。

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「炎天 神尾シリーズ3」北方謙三 (集英社文庫)



死ぬために生きるのではない。
生きるために生きるのだと。
胸倉を掴んで叫びたくなる。
遠い異国の地で、
自らの人生の舵を死に向かって切った男がいた。
走り出した船は、誰にも止めることはできない。
そんなの結局は自己満足じゃん!とやっぱり叫びたくなるけれども。
それが男の生き様なのだと。
言いくるめられてしまうのが北方作品。
見守るしかないのだ。
信天翁の件は涙しかなかった。
「度胸のないヤツ」呼ばわりされていた秋月の
成長著しい姿がとても頼もしい。
習いつづけたボクシングがきっちり身についているのが
ちゃんとわかるのも素敵。


神尾にはやはり海が似合う。
だけど、探偵業も板についたと思ってしまう。
どこにいても、自らの生き様を貫けば、自分らしさもついてくる。

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「きみがいなけりゃ息もできない」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



共依存という言葉ではもはや生ぬるい東海林と二木の関係。
その歪みと自分の抱えた恋情に気付いてしまった東海林は
タイミングよく介入してきた他者の存在を理由に二木の手を放そうと
悲痛な覚悟を決めたわけだけど。
二木のダメっぷりに共感できるはずもなく、
世話を焼きすぎる東海林にと突っ込みたくなりつつ。
ああ。だけど榎田さんの描く淋しさを抱えた人にとてもとても弱い私は
敗北感に塗れながら涙。再読なのに嗚咽。
結局、一度離れる必要はあったんだと思う。
無自覚なままだったらどこかでダメになったかもしれないから。
開き直った二人の強固な結び付きがとても嬉しい。

ガルガル唸りつつ、良い話だったわよ!とやっぱり敗北感。
何と戦ってたんだ、私(笑)
東海林を今風に「スパダリ」と言えないところが、
彼のおかん気質が遺憾なく発揮されちゃっている所以なんだろうなぁ。
でもイイ男だと思うんだ。

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「灼光―神尾シリーズ2」北方謙三 (集英社文庫)



心は自由だ。
何者にも縛られない。
男には男の、女には女の動機があり、理由がある。
誰に強制されたわけでもない。
自分にしか意味のない理由で彼らはそこにいる。
乾いた灼熱の大地、アフリカに。
たとえそれが命を懸けた選択であったとしても、
それは、彼ら自身で決めたこと。
だから彼らは、頑ななまでにまっすぐ突き進む。
自らの心に誓った使命を果たすために。
係った者たちの心に傷を刻んだエンド。
だけど、明日を迎えた彼らは生き続ける。
血を流し続ける心。
「大丈夫ですよ」
その言葉が、強がりではなくなる日がくるといい。


水滸伝を読んできたおかげで「死域」という言葉がどうしたって出てくるシーンがある。
燕青の姿が神尾と重なった。
ほんのちょっとだけ触れられる神尾と秋月の10円でのナイフのやり取りがとても好き。
この表紙、読後に見ると込み上げる思いがひとしお。


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「進撃の巨人 25」諫山創 (講談社コミックス)




語られる歴史。
国が二つあれば、主張も二つある。
そして、正義も。
何が正しくて、何が過ちなのか。
その時代を生きる者には、いや、後世を生きる者にだって
ジャッジすることは難しい。
纏まりかけた人心。
高らかな宣戦布告。
その瞬間の、静から動へのあまりにも衝撃的な転換に、ただ震える。
あの構図、すごすぎる。
異国で戦う戦士たち。
少年だった彼らはもういない。
「死ぬな 生き延びろ」
儚く散って行く命が数多あるなかで、重く響く言葉。
故郷に帰れるのは果たして誰なのか。
考えることは放棄する。続刊を手にすればわかることだから。


リヴァイが本当に好きなんだと、改めて思った瞬間。
そして、綺麗事がどこにもない、この作品の奥深さに改めて唸る。


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