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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ (集英社文庫)



存在。そこに在るもの。
その価値の重さや軽さは結局は主観でしかなくて、
それが正しいのかを論じることに意味はない。
変革に揺れる国に在って、彼らが突き詰めたものは、
自らの思いや快楽に忠実であること。
社会人としては敬意を抱けても、夫としてはどうなの?と思ったトマーシュ。
私的にはまっぴらだと思ったテレザの立ち位置。
そんな彼らの人生は幸せだったのか否か?
ずっと考えながら読みつづけていたけれども。
得られると思っていなかった彼らなりの答えを最後の最後に示してくれて、
ジワッときた。
人生は一度きり。
結局はそこに帰結する。
やりきりたいね。

とても深い作品。
だけど、何が深いかを端的に説明することは、今の私にはできない。
再読必須。
ガーディアンに挙げられていなかったら、手に取ることはなかったと思う。
出逢えて良かった。

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「海嶺 神尾シリーズ6」北方謙三 (集英社文庫)



これまでの展開から想起させられる≪起こり得る事態≫を覚悟して読み始め、
バカげた試練に身を投じなければない事態に激しく憤る。
だが、裏切られる。
その覚悟は、見事なまでに覆され、
まさかの展開に込み上げる想いを噛みしめる。
心憎いよ、北方。
血の柵を背負った、国籍の異なる少年・マリオとの出逢い。
自由を手に入れるために戦うことを決意したマリオ。
彼と係わっていく中で、死んでもいいと思っていた神尾の胸に芽生えた想い。
「生きたい」
これ大事。とても大事。
シリーズ最終話でこの想いを神尾から引き出せたことに、
とても大きな意味がある。


そして私は成長した秋月の姿にちょっと悲しくなった。
八木も指摘していた。「いい変わり方じゃない」と。
強くなってほしかった。
そう願った通り、強くなった秋月。
だけど、そうじゃない、と。
私の心は軋んだ。
イイ男には変わらないんだけどね。
負う必要のない業まで背負いこんでしまいそうな強さが辛い。
だけど、彼は言うのだ。
「これは俺の選択だ」と。
誰にも責任をなすりつけない強さと潔さ。
それは。この物語の誰もが備えていた気質。







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「きみがいるなら世界の果てでも」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



東海林に寄りかかりっぱなしの自分をなんとかしようと
生活改善(?)を試みた二木。
やることなすことありえないくらいに裏目に出てしまったは、
上手くいっている二人関係を、
当人同士の話し合いもないまま、他人の意見でどうにかしようとした結果なんだと思う。
結果、自立しきれずにかつての先輩、甘利の所に身を寄せる二木。
日頃完璧な男・東海林が晴天の霹靂の如く、フラれて生活が荒れる様は、
ぶっちゃけ妙な色気や隙があってクルものがありましたが☆(鬼)
二木は東海林じゃなければ心が死んでしまう。
東海林も二木がいなければダメになる。
命懸けで確かめあった二人。お幸せに☆

シリーズ最終話は関連するキャラが総出でお得感満載。
二木の比じゃないくらい片付けられない人の所有するビルを解体するために
片付けないといけなくなった友だちの話を聞いて
気絶しそうになったのは私。
ゴミ袋に突っ込んでいく端から「これは必要なモノ」と出されるという恐ろしいエンドレス。







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「きみへのおくりもの」刀根里衣



やわらかくてあたたかな青の世界に包まれて、
ただひたすらやさしい気持ちになれる。
あたたかな青の描写が本当に美しい。
常に寄り添っている猫のクロとシロ。
彼らの仕草や表情が、やさしくて愛らしくて癒される。
湖に浮かぶキラキラの描写が素敵。
素敵な形の葉っぱや貝に思わず手を伸ばしたくなる。
そして、飾っておきたくなるクラゲや魚やタコ。
たからものの在りかを確認して、
肩を寄せ合う二匹が見上げた夜空のキラキラ。
繰り返し捲りつづけたくなる素敵な絵本は
姪っ子ちゃんたち用に絵本棚にお迎え。
イラストを眺めているだけで穏やかな気持になれる。










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「君の名前で僕を呼んで」アンドレ・アシマン (マグノリアブックス)



読み進める程に物語の中に引き込まれ、
気付けば鷲掴みにされていた。
ひと夏限り。
それは最初からわかっていた。
だからこそ、縋る刹那。焦燥感に駆られるように溢れ出す想い。
君が欲しい。
抱き合うことができるなら、ひと夏限りでも構わない。
否、この夏限りだからこそ、君を知りたい。
そして別離。
だが、物語はそこで終わらない。
夏が過ぎても、彼らの人生は時を刻み続ける。
こんな形で抱き続ける想いもあるのだと、切なくなる。
それ故に、最後のエリオの言葉がより深く、胸に刺さる。
人生は有限。
ならば、決して悔いのないように。

映画を観てから小説を読んだおかげで、
情景がリアルに浮かんできたのは良かった。
最初、物語世界に入り込みづらいなぁ、と感じたのは、
逆に映画を観ていたからなのかなぁ?と思ってみたり。
観てから読んでしまったので、検証はできないけどね。
語られると思っていなかった映画のエンドの後の彼らの人生。
二十年後まで追えたことに、感無量。
脱線すると、彼らが吸っていた煙草がゴロワーズだったことに、北方脳がピクリと反応してみました。




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「風裂 神尾シリーズ5」北方謙三 (集英社文庫)



神尾が依頼人の人生に巻き込まれるのか、
依頼人が神尾の生き様に引き込まれるのか。
もはやどっちがどちっちかわからなくなってきた。
死に焦がれるからこそ、死に嫌われる神尾。
安らぎに目を閉じることに甘んじるなと、責められているかのように。
或は、その業故に背負う荷物は増えていくのだと戒められているかのように。
自責と諦念に縛られた神尾は、ただ手を貸し、そして導くだけ。
彼らの望む方向へと。
そして、自らの足で立つことを教えられ、成長著しい命が散って行くやるせなさを噛みしめる。
今作に至るまで、余りにも多くの命が失われた。
だからこそ思う。軽々しく扱っていい命など、ないのだと。


前作がガス欠を気にしながらの砂漠の疾走だったせいか、
例え山道でもきちんと舗装された道路をガス欠の心配なく走ることのできる安心感半端ない。
やっぱ車は走ってナンボ。

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「吸血鬼には向いてる職業」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



ギャグテイストで笑わせてからの、孤独感と諦念とが絡みついた愛情深さに落涙。
この緩急、さすが榎田さん。
新人編集者・藍を片手であしらうつもりの売れっ子漫画家・黒田が逆に振り回される様が面白い。
藍のなんとしても原稿を取りにいくというど根性精神。
根底に溢れる漫画に対する熱い想い。
オタクの粘り強さは侮ったらいけないのです。
そして、見た目で人を判断したらいけないのです。
深い孤独を抱えた二人が時折垣間見せる揺らぎが刺さる。
愛する人とは、いつか、永遠の別れを告げなければならない。
それは宿命。
だけど、せめてそれまでは一緒に。
流血沙汰を経ての告白シーンにはぐっときました!


口絵の赤黒衣装。
とてもとても着てみたい。
ヴァンパイア物を描いていて、エドガーを知らないとはけしからん!と、
黒田に対してチラッと思ったことはナイショです(笑)




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「愛なら売るほど」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



表題は泉が10年来恋焦がれてきた飴屋との再会から。
偶然の采配で同じマンションの上下階で暮らすようになって訪れた
顔を合わせる機会。
泉の職業柄、どうしても切り離せない橘の存在。
彼を巡る勘違い甚だしい会話は、嘘は何一つ言っていないところが面白い。
勘違いに押されて飴屋がとった暴挙。
結果が祝福で良かったね。
同時収録はその橘の恋。
どれだけカッとなってもあの行為は頂けない、と思いつつ。
言葉が足りない大人は、思い込みと、時にその言葉に振り回される。
橘との出逢いは小谷にとっては息を吹き返すための必要な出逢い。
切ないけどとても良かった。
最後の描き下ろしは御馳走様、とひたすら笑顔。

独り暮らしを始めた娘は、バイトや合コンに充実した生活を送っていました。
当時は携帯がまだ普及し尽くしていない時代。
家電にいくら電話をしても、娘と連絡が取れない。
訪ねた部屋は誰もおらず、鍵がかかったまま。
心配でたまらなくなった父がとった暴挙は、なんとアパートを2階までよじ登って
ベランダから娘の部屋に侵入するという荒業。
結果、近隣の人が警察に不審者ありと通報。
……という、友だちの姉の体験談を思い出しました。

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「流塵 神尾シリーズ4」北方謙三 (集英社文庫)



へし折られた翼を取り戻し、生き返った男。
乗り越えるべき壁にぶつかった男。
自らの足で立とうとする、成長著しい少年。
彼らは神尾と出会い、神尾と行動を共にする。
ウイグルからタクラマカンの砂漠を抜け、敦煌へ。
目指した国は、日本。
叶うことなら、四人で。
誰一人欠けることなく四人で。
年若い彼らが成長していく様をみていれば、彼らの未来を希う。
またかよ!とは言ってはいけない。
だけど、言いたくなる。
わかってはいたけど、またかよ、北方!(涙目)
自らの誇りに殉じた彼らに悔いはなかったはず。
流れる塵と共に、やすらかに。


もはや、足手まといとは言わせない、秋月。
キミの本職はなんだっけ?と言いたくなるくらい、いい仕事したよ。

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「ごめんなさいと言ってみろ」榎田尤利 (ビーボーイノベルズ)



意地っ張りがふたりそこにいたら、ぶつからないわけがない。
久々野と律の子供じみた言い合いがとても楽しい。
反発しながらも、仕事を通じて縮まっていく距離感。
書いた(描いた)作品に魅了されるということは、
その人の感性に共鳴するということと同義。
惹かれあうのは必然な気もする。
久々野が律を腕の中にしっかりと抱きしめる、
10歳離れた年の差故の包容力と甘さとやさしさが心地よい。
律が抱えていた失恋ががありきたりなもので終わると思ったら、
そこからの深みのある展開と説得力はさすが榎田さん。
テンポよく楽しく読了。


「妬いたんだ」
「焼いたって、何を?」
こういう噛み合わないやり取りがとても楽しかった。
で、最後にカチッとはまる小気味の良さ。
ハードボイルド好きとしては、久々野の書いた作品を是非読んでみたい!
と、思っちゃうよねー。

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