きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「リムレスの空~魚住くんシリーズ5」榎田尤利(クリスタル文庫)
変わったのは魚住だけではなかった。
二人の関係の変化は、久留米をも変えていく。
人は、その一点に留まっていることはできなくて。
大なり小なり変わっていく。
個々の人生がある以上、
必ずしも心浮き立つような変化ばかりではなく、
それぞれが立ち向かっていかなければならない壁が存在する。
ハピエンでありながら、ちょっと切なくなるような思いを抱えての読了。
だけど、これ以外ない選択だと思うのです。
自分の脚できちんと立っていながら、深い想いを抱えて寄り添っていられる
この二人の距離感がたまらなくいい。
本当に素敵な作品です。
「風が吹いているときに船をお出しなさい。
背中を押す追い風を感じたら、それがタイミングなのよ」
魚住の祖母のこの台詞、凄く響いた。
うん。頑張ろう、私。
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「過敏症~魚住くんシリーズ4」榎田尤利(クリスタル文庫)
感動的とすら言える恋愛の成就。
なんかもう、ホント良かった。
幸せを噛みしめて感無量。
腹を括った久留米の行動力はカッコよかった。
ああいう割り切り方ができるって、すごいなぁ。
過去に魚住と係った人たちは、みんな零れるようにいなくなってしまったけれども。
いま、この瞬間に魚住と係わっている人たちはみんな、やさしいぬくもりを伴ってそこにいる。
彼らにひっぱられて、情緒豊かになっていく魚住の変化がただ嬉しい。
マリの母の言い草はどうなの?とい思ったけれども。
「それでも娘に会いに来るのよね」の言葉にハッとさせられた。
最後の最後。
セーブしていたと言った久留米の漢気(?)に脱帽。
魚住、ホント大事にされてるね。
甘ったれた声で久留米を呼ぶ魚住。
この描写がホント好き。
久留米は良くも悪くも直球の男なんだなぁ。
そのまっすぐさが私はとても好き。
人との関わり方に奥行というか、深みのある良書だと思う。
10年以上ぶりに再読して、改めて作品の良さを噛みしめ中。
次回、最終巻!
「メッセージ 魚住くんシリーズ3」榎田尤利(クリスタル文庫)
押し殺していた感情の放出。
泣けて良かった、と思うけれども。
そこに至るまでの過程がとても辛い。
ようやく見つけた幸福の在りどころ。
幸せを……大好きな人を失う恐怖に耐えきれないのならば、
自分を消してしまえばいい。
そんな極論に至るまでの陰には、どれほど大きな愛と孤独が隠れているのだろう?
幸せって何?
不幸って何?
問いかけずにはいられない。
彼女からのメッセージ。
汲み取ってほしい。
多分彼は、貴方なしで生きていくことは難しい。
だけど。
読み進めれば、不安定さから抜け出した魚住の様子に安堵する。
もう大丈夫。
そんな安心感が、ただ嬉しい。
この引き、ずるい!
ってゆーか、めっちゃドキドキしたんですけどー!←再読です(笑)
バターサンド、萩の月、ういろう、赤福、ちんすこう。
北から南へ。
全部食しました!そして、地元の銘菓がちゃんと入っていることが嬉しい。
個人的にはちんすこう大好き!
沖縄料理大好き!
今回もやっぱりイラストがたまらなく秀逸。
「黒龍の柩 上」北方謙三 (幻冬舎文庫)
史実と虚構の見事な融合。
もう、これが史実でいいんじゃない?と言いたくなる、北方流新選組。
己の描いた通りの死に様を見事に貫いた男。
切ないまでに散り際を模索し続ける男。
そして、変革する時代の先を見極めようとする男。
決してまみえるはずのなかった男が語った国の在り様が、彼を北の大地へと誘うのだ。
「誠」の旗の元に集った男たち。
肩で風を切って闊歩していた時代も、確かにあった。
だが、自らの意思ではどうにもならない時勢に流されながら、
何時しか彼らの道は分かたれていく。
大局のその先を見据えた男の行く末はどうなるのか。
下巻、読むしかないよね。
そもそもが「兼定」がきっかけで再読しようと思った私の動機は
どうなの?って感じではありますが。
動機はさておき、きっかけがあったおかげで再読できているわけで、結果オーライ?
五稜郭にもう一度行きたいな。
水滸伝シリーズありきの見方になっちゃうけど、
ここから水滸伝……というより、楊令伝の方に通じるものがあっちこっちで感じられて
なんだか感慨深い。
大河をまともに見ていたわけではないのに、
沖田総司のビジュアルは藤原竜也以外の何者でもなくて
よっぽど印象深かったのね、としみじみ思ってみました。
「プラスチックとふたつのキス 魚住くんシリーズ2」榎田尤利(クリスタル文庫)
人は、大なり小なり傷を抱えて生きているのだということを、
つくづくと思い知らされる。
その傷が、癒える方向に向かえばいいのだろうけれども。
呑み込むのか、消化するのか、忘れるのか。
或は、血を流し続けるのか。
傷との向き合い方は人それぞれ。
でも、癒えない傷の苦しさに他人を引きずり込むようなことをしてはいけない。
死神の誘いを振り切った魚住。
魚住を呼んだ久留米の声が、健全な生命力を伴って響いたことが嬉しい。
流れる日常の営みの中で、ゆっくりと近づいていく久留米と魚住の距離感がとても心地よくて、
だけど、時々差し込まれる痛みに泣きたくなる。
溜息を呑み込んで、次巻へ。
私の中では魚住くんシリーズと言えば茶屋町さん。
イラストの醸し出す空気感がたまらなく好き。
「夏の塩 魚住くんシリーズ1」 榎田尤利(クリスタル文庫)
自分が不幸だと自覚しなければ、それを不幸とは言わない。
どこか壊れた魚住を痛々しいと感じてしまう自分は
確実に引き寄せられる側の人間。
だから、読み進めるのがちょっと苦しい。
それを、痛々しいとは思わない久留米だからこそ、
魚住に変化を与えることができる。
そんな二人を取り巻くマリやサリームたちの助力も然り。
人は、一人では生きられないのだと、つくづく思い知らされる。
そして、彼らのやさしさがあたたかい。
自分の中でだけ完結していた世界に他者の存在が入り込むことで
世界は違った音を奏でて回り始める。
そこで生じた感情をなんと呼ぶのか?
自覚したところで、次巻へ。
雑誌掲載時から読んでいたから、とても付き合いの長い作品。
そして、とても好きな作品。
だけど、読み返していないんだよね。
なんとなく封印してここまできて、やっと再読。
メンタル弱ってるときはやめといた方がよかったかな?
と思わなくもないけど、だからこその今だったのかな?と。
ストレスなさそうってよく言われるけど。
うん。否定はあんまりしないけど。
若干の波はあります。(笑)
「嵐が丘」エミリー・ブロンテ(新潮文庫)
「嵐が丘」と「鶫の辻」
とても狭い閉塞的な空間で展開された、あまりにも拗れに拗れた人間模様。
最初は「この人たち、何で結婚したんだろう?」と「何でこの二人、結婚しなかったんだろう?」
という問いだけがひたすらグルグル巡っていたけど、
気付けば彼らの愛憎劇に引きずり込まれて一気に読み切りました。
核になるのは「嵐が丘」の三人。
自分を幸せにするために、他の生き方はなかったのかな?と
復讐に身を投じた彼に問いたくなるけれども。
彼女の傍に在ることが至上の幸せだったのであれば、どうしようもないのかな。
でも、やっぱりあなたのしたことは間違ってるよ?と言いたくなるの。
やるせない。
逞しく生き抜く術を本能で知っていた子供たちが手にした未来に安堵した。
愛憎に翻弄された当人たちがどれだけ拗れたとしても、
そんな大人の諍いに巻き込まれて潰された子供がとても可哀そう。
名前がややこしすぎて入り込むのに少し時間を要したけど、
識別できれば一気でした。
【ガーディアン必読 57/1000冊】
「工場夜景」(二見書房)
無機的であるにもかかわらず、躍動的。
相反するものの共存と混在。
それが、私のイメージする工場夜景。
プロの方が撮った写真は更に「幻想的」という言葉が加わるのだということを思い知り、
頁をめくってひたすらうっとり。
この空間が醸し出す雰囲気が、とても好き。
写真に添えられている一言がまた素敵なのです。
どうしても自分の目で見たくて、川崎の工場夜景を見に行った数年前。
機会があれば、何度でも通いたいくらい素晴らしい光景が目の前に展開していました。
夜の要塞の中で働いている人たちがいる。
彼らが作り出すもので私たちの生活はなりたっている。
ちょっと感動的。
何度開いても魅入ってしまう写真集。
岩沼の製紙工場は盲点だった。
行けるじゃーん。
そして、四日市市でも夜景クルーズやってるんですって!
付き合ってくれるかしら?
無茶ぶりはともかく、ちょっと迷ったけど、買ってよかった!
「チャイルド・オブ・ゴッド」コーマック・マッカーシー(早川書房)
大きな感情の起伏はなく、明確な理由も示されぬまま、
どこまでも「人」としての営みから外れ、転落していくバラード。
自分と同じ人間の括りだと思えないのか、思いたくないのか、
「人間に慣れている類人猿」という比喩がストンと落ちる。
もはや「犯罪」という言葉では形容しきれない彼の所業。
その根底にはあるのは、原始的、或は本能的な何か。
洞窟の腐臭すら漂ってきそうな緻密な描写。
感情が一切排除されたその描写には、想像の付け入る余地はない。
どこまでも淡々と綴られる渇いた言葉に牽引され、
彼の蠢く深い闇の中に引きずり込まれる。
そして、指先で削り出した光に、自分が人間であることに、安堵する。
鬱々とした感情が振り切れるように揺れたのは、バラードが泣いた時。
美しい自然の光景を目にして泣く資格はあなたにはないと。
そんな言葉を突きつけたくなった。
というわけで、読メ登録1000冊目はマッカーシーで。
どんな本?と尋ねられたら、形容がとても難しい。
「背徳のマリア 下巻」
上巻に引き続いて黒崎兄弟の話かと思っていたけど、これは彰の物語。
「人の核を成しているのは感情」というフレーズがあるけれども。
彰の核は圭介に向けられた「感情」。
それが自己完結してしまったが故の暴走と悲劇。
安藤の涙が、それが悔し涙であることが、とてもつらい。
内なる世界で時を止めた彰が安息を得たと納得した圭介。
いいの?と思う気持ちもあるけれども、飲み下さなければただ苦しい。
彰は笑ってそこにいるのだから。
手を伸ばせばそのぬくもりに触れることができるのだから。
幸せってなんだろうね? 答えは十人十色。
これからの彼らが穏やかでありますように。
抱え込む前にもうちょっと話し合えなかったのかな?
というのは、彰の抱えた恐怖と執着に同調できなかったが故の愚問なのかな。
彰にとっても、圭介にとっても、そして黒崎兄弟にとっても
安藤の存在が大きかった。
ああ、本当に彼、カッコよかった。
というわけで、ガッツリ鷲掴まれた綺月作品でした。
関連シリーズはこれで読了☆
引き続き読んでいきたい作家さん。