きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「彩雲の城」尾上与一 (Holly NOVELS)
【生きた証が欲しい。
それが今、どれほど無意味に近いかわかっていても】
タイトルの意味を理解した時、胸が締め付けられるような思いでした。
待ち合わせは靖国で。
そして、自分達が帰る城は七色の雲の中にある。
死を覚悟したからこそ、餓えるように欲した生きた証。
爆撃の中で求め合う二人が痛々しくて、だけどどこか厳かで神聖で。
たまらずに、息を呑みました。
自分が幸せでなければ、他人の幸せなど願えない。
明日をも知れぬ身で、誰かの幸せを願える彼らは、
とても素敵な出逢いをしたのだと思う。
そして、死を覚悟しながらも、
最後まで生きることを諦めなかった二人が愛おしかった。
背景描写も心理描写も秀逸。
出逢えて良かったシリーズです。
伊魚があまりにも痛々しかったので、藤十郎の度量の広さにほっとしました。
今から70年前に、飛行機を飛ばし、遥か南の地に物資を届け、
武器を手に命がけで戦った人たちがいる。
忘れてはいけない歴史は確かにあるのだと、改めて思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
太平洋戦争中期。婚約者に逃げられた谷藤十郎は、外聞から逃れるように志願したラバウル基地で、高速爆撃機・彗星と共に着任してきた優秀で美しい男、偵察員の緒方伊魚とペアになる。伊魚は他人を避け、ペアである藤十郎とも必要最低限しか話さない。他にペアに欲しいと画策していた男がいた藤十郎だったが、冷たいようで生真面目で優しい男を嫌いにはなれなかった。それに、時折伊魚が起こす呼吸困難の発作も気がかりだ。そんな中、不調が続く彗星は偵察機への転用を命じられる。積乱雲湧く空を駆ける彗星ペアの運命は―。
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