きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「きみはまだ恋を知らない」月村奎(SHY NOVELS)
「きみはまだ恋を知らない」からの「きみはもう愛を知っている」。
タイトル通りの流れを綺麗に描いた作品。
母親の影響で人と触れ合うことに嫌悪感を覚えるようになってしまった司。
そんな司にひと肌の心地よさと愛しあうことの幸せを教えた藤谷。
貧しいながらも母に愛されて育ってきた司。
身の回りのものに不自由せず育ってきたと思われた藤谷が抱えた孤独。
何が幸せなのか。何が不幸なのか。
外から見ただけではわからないものを人は抱えていると、改めて思い知らされる。
司の幸せの宝箱がとても微笑ましい。
もっともっと幸せになれるんだってことを藤谷は必ず伝えてくれるよね。
志水さんの挿絵がとても素敵なお借り本。
藤谷メッチャかっこいいわ。
勿論、ストーリー自体も楽しく読了☆
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「漆黒―孤拳伝 2」今野敏 (中公文庫)
はき違えた強さの探求。
戦えば闘うほど失われていく人間らしさ。
読み進める程に自分の気持ちまでが殺伐としていって、
荒みきったところで一度本を閉じて、癒し補給。
剛を修羅に代えたのは蜂須賀。
だが、彼は戦いでの敗北と、緋田との運命的な出逢いによって人間らしさを取り戻すこととなる。
この気づきはとても良かった。
一方、山中でひたすら自己鍛錬に明け暮れる三人の男との出逢いによって、
剛も再び人間らしさを取り戻していく。
「強いだけではない男の存在」
剛と蜂須賀が変わるきっかけになったワード。
己の在り様を考えることも己の成長の大きな糧になる。
松原と劉の師弟関係。
李と宋の主従関係。
蜂須賀を変えた緋田。
剛を導く男たち。
人と人。
係わることで良い方向へと導かれ、或は変化していく関係が興味深い。
蜂須賀も剛もまだ「獣」から「人間」へと生まれ変わったばかり。
他の男たちも含め、この先どう成長していくのかが楽しみ。
「ドラッグ・チェイスシリーズ1 還流」 (モノクローム・ロマンス文庫)
過去の出来事によって心に傷を負った二人が、出逢って恋に落ちる物語。
受け攻めが固定化されないフレキシブルな関係ってやっぱり好きだわ。
スリリングな潜入捜査の描写にグイグイ引き込まれながら、
次第に明かされていく二人の過去に胸が苦しくなる。
そして、少しずつ近づいていく二人の距離感が、
警戒心剥き出しの野生動物が寄り添ってぬくもりを分かち合うようで何とも微笑ましい。
眠れない夜に傍にいてくれる人がいる。
間違った方向に揺れそうな時に引きとめてくれる人がいる。
そして、姿を消した時に探してくれる人がいる。
辛い過去を経験した二人だからこそ、幸せになってほしい。
シリーズ第一弾。
残念なことに続きはまだ翻訳されていないんですよね~。
英語の文章を楽しむ読解力はないので、翻訳されるのを心待ちにしています!
翻訳こんにゃくがとてもとても欲しい(笑)
「復讐―孤拳伝 1」今野敏 (中公文庫)
香港の暗黒街で、文字通り命懸けの日々を生き抜いてきた少年、剛。
彼を生き延びさせてきたものは、独学で身に着けた中国武術の一つ「崩拳」。
これが、彼のその後の人生に、大きくな影響を及ぼしていく。
字を読めなかった剛が文字を覚え、
人を倒すためだけの拳が、師を得て違う意味合いを帯び始める……
はずだったんだけど。
ちがう。
そっちじゃないんだよ!
と、言いたくなる方向へと彼を押しやるのは、運命なのか、彼自身なのか。
涙と流しながら横浜の待ちをふらつく剛のこれからが気になりつつ。
武術に関しては優等生な松原が一皮剥ける姿が見てみたいとも思った私です。
昨日「この辺りまで行ったら、あとは何処がおススメですか?」と聞かれたので、
「横浜に是非!」と横浜激推ししてきた私ですが。
奇しくも舞台は横浜。
自分がメッチャ行きたくなりました。
読友様からの頂き本。
わくわくしながら次巻へ。
「月への吠えかた教えます」イーライ・イーストン (モノクローム・ロマンス文庫)
再起をかけたラストチャンス。
そう心に決めてティムが移り住んだ町は、
犬に姿を変えることのできる人たちが暮らす町だった。
町の保安官・ランスとの誤解を生んだ出逢いからの
二人の風変わりな交流が微笑ましくてあたたかいながらも、
ティムの負った心の傷に胸が痛む。
言いそびれた真実。
それが、相手の不利益になるような隠し事になってしまったら、
露見した時に手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
打ちひしがれたティムの姿が辛かったけど、
ランスの百聞は一見に如かずの在り様は、この上ない真実の告白だったと思う。
シリーズ第一作。次作にも期待大☆
もうちょっとライトなノリの話かと思いながら読み始めたら、
思いのほか深い話で思ってた以上に良かった。
「ホットな保安官」という表現とセクシーな胸毛描写がロマンス的で素敵。
このレーベルの既刊24冊に対してこれで既読が17冊。
ホントに外れがなくて安心して読めるわ。
未読の7冊は年内中に。
楽しみ!
「しゃぼん玉」乃南アサ(新潮文庫)
人が人を変える。
人をダメにするのも、心根を入れ替えさせるのも、人。
腐りきった翔人を変えた、老齢の彼らと過ごす日々。
その日々がいくら穏やかに過ぎようとも、
過去はなかったことにはできない。
「行かなくていい」とは誰も言わなかった。
人生をやり直すためには、償わなければならないことを、誰もが知っている。
彼らは引きとめるのではなく、居場所があることを彼に知らしめる。
婆ちゃんの「待っちょる」
そして、シゲ爺の「行ってこい」
彼にとってはこれ以上の言葉はなかっただろう。
出逢いは、文字通り奇跡。
奇跡的に出会えた人たちとどう係るかは自分の在り様と努力。
大切にしたい。
祖母に会いたくなりました。
もう、絶対に会えないけど。
著者の作品で既読は『風紋』と『晩鐘』。
半端なく抉られるけど、とても好き。
今回の『しゃぼん玉』もとても良かった。
未読の既刊がたくさんあることが嬉しい作家さん。
「夷狄を待ちながら」J・M・クッツェー (集英社文庫)
実体の掴めない夷狄に……というよりも、
帝国の治安警察に振り回される辺境の町の住人たち。
そして、退官した後の平穏な生活を願う初老の民政官もまた、
治安警察の在り様に振り回され、或は巻き込まれ、
彼自身の生活が崩壊していく。
意図せずして窮地へ追い込まれる怖さはいつの時代にもある。
謂れのない拷問を見て見ぬふりをしていればよかったのだろうか?
力を振り翳す者からの理不尽な危害を受けないためには、
目を瞑っていればよかったのか?
彼の立場を自分に置き換えた時のこの自問には、いつだって答えられない。
ラスト四行で押し迫る物悲しさが、何とも形容しがたい程やるせない。
読み始める前は『夷狄を待ちわびて』だと思っていたので、
異文化交流的なホンワリした話かと思いきや!
正しいタイトルは『夷狄を待ちながら』。
のっけからの拷問シーンに何ごと!?と、ガツンとやられました。
思い込みって怖いわ~~。←読む前にあらすじは読まない人です。
【ガーディアン必読 74/1000】
「きみがいなけりゃ息もできない」円陣闇丸/榎田尤利 (ビーボーイコミックス)
ノベルズのコミックス化。
心情は小説の方がより鮮明に抉られるように伝わってくるけれども、
実際に動いている二人を視覚的に見られる楽しさが漫画にはある。
漫画には漫画の、小説には小説の良さがあって、
作品から受け止める印象はどちらも変わらない。
素晴らしい。
東海林の愛情を当たり前のように受け止めていた二木。
離れてみて痛いほどに突きつけられる彼の存在の大きさ。
無人の部屋のドアを叩くシーンはやっぱり泣ける。
「愛してる。だから自由にしてやる」
そんな想いを経てからの
東海林の涙のモノローグが半端なく感動的だった。良かったよ~~。
足元に巻きついて甘える27歳男子が可愛いってどんな異常事態!?
と思うわけだけど。
二木ならアリだな、と、思える不思議は東海林曰くの末期。
「ダブルダディ」野原滋 (幻冬舎ルチル文庫)
別れるべくして別れる夫婦もある。
翔子が一番どうしようもないけど、暁彦にも非がないわけではない。
お互いに背中しか向けていなかった夫婦に愛情は生まれない。
翔子の琢己に対する態度が一番許せなかったかな。
子どもは大人の都合であんなふうに振り回して傷つけちゃいけない。
一方で、相手の良いところも悪いところも晒してまっすぐに向き合った恭介と暁彦。
一緒に過ごす時間が増える程、惹かれあっていく二人。
家族、愛情、そして恋人。
諦めてきたものの全てを手にした僥倖によかったね、と。
何と言っても琢己の可愛らしさに頬が緩みっぱなしのお借り本。
可愛かった!
ウチの姪っ子ちゃんたちもお風呂を出たら「あがりましたよー」と叫ぶの。
メッチャ可愛いの。
そして、ドライヤーを手にいそいそと駆けつける私。
お風呂上りの彼女たちにパジャマを着せて、髪を乾かして。
寝るまで一緒に遊ぶのが私の役割。
ああ、会いたくなってきた。
「砂の器〈下〉」松本清張 (新潮文庫)
読後にタイトルを呟いてみる。
「砂の器」。
なるほどね。
現在の自分に確固たる自信があるなら、
どんな過去があっても築いてきたものは揺るがないんじゃない?
と、思うわけだけど、
当時の社会的では差別されかねない出自であり、
それを葬り去る為の偽りの土台であるのなら、
死に物狂いで秘密を守ろうとするしかないんだろうなぁ。
地道な捜査をコツコツと積み重ねる今西や吉村の在り様は
時代に関係なく見習うべき姿だと思う。
今西の妻は素敵な奥さんだった。
終始一貫して漂う昭和感。
だけど、平成が終わろうとしている今の時代に読んでも十分に面白い。
彼の視点で語られる、彼の半生というものにふと興味を覚えた。
良くも悪くもギラついたエネルギーに満ち溢れたものに違いない。
彼女たちの不幸は、
自分しか大事にできない男に惚れたが故の不幸。
なんだかいたたまれない。
そして、解説で積んである『赤と黒』の内容、割としっかり書かれちゃってますけどー!
どーー!!
一週間もしたら忘れるだろうけど、他の本のネタばらしはやめようね。
びっくるするから。