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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「明日が世界の終わりでも」榎田尤利 (SHYノベルス)



表題他2作は旧版にて感想UP済。
描き下ろし『witness』は彼らの後日譚。
願った通りの時を過ごす彼らに安堵する。
『largo』
最後に噛みしめるタイトルと内容のマッチングがとても秀逸。
サティのジムノペディが心地よく響く。
芸術を志す者にとって、自らの力量と他人の才能との間で苦悩するのは避けられないこと。
20歳そこそこの若者たちが、音楽と向き合いながらままならない恋情に苦悩し、
次第に心を通わせていく物語。
その過程において、彼らの奏でる音が変化していく様子が、
とても綺麗に描かれていた。
心に響く音楽は魂で奏でるもの。
文字からそれが伝わるのは、榎田さんの筆力。

近々でピアノが弾けて良かったと思った瞬間は、
ちびっこたちを預かった時。
ぐずっていても音を奏でると興味津々な表情でピアノに耳を傾け、
かなり適当に弾く子ども向けの曲のオンパレードでご機嫌に。
いつかまた、真剣にピアノを習いたなぁと思う瞬間がないわけじゃないけど、
爪を短くする気がない時点でアウト(笑)








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「明日が世界の終わりでも」榎田尤利 (CROSS NOVELS)



こんな愛し方もある、と。
零れ落ちる溜息。
オムニバスで三篇。
何度読んでも切なくて苦しくて。
半泣きになりながら、目を逸らすことができない。
歪にゆがんだ彼らの愛。
取り返しのつかないことが起きてしまう前に、
どうして、気づくことができなかったのだろう?
彼らの抱えた傷は、それほどまでに深かった。
信じられなかったのは、自分自身。
傷つけて、傷ついて。
それでも、踏み躙られることのなかった想い。
「明日が世界の終わりでも」
続く言葉を噛みしめる。
命は有限。
触れることのできるぬくもりがそこに在るなら、
離れたら心が死んでしまうなら、決してその手を離さないで。


HPに掲載されていた『明日が世界の終わりでも』を繰り返し何度も読んでいた私にとって、
その後の『約束』と『集い』と合わせての書籍での出版は小躍りするほど嬉しいことでした。
しかも、茶屋町さんの挿絵で構築される世界観。
久しぶりに読み返すことをしばらく躊躇していたのは、何かが褪せることを怖がっていたからかな?と、自己分析。
だけど、そんなのは全然杞憂でした。
好きなモノはいつになっても好き。

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「それまでの明日」原りょう(早川書房)



時は止まらずに流れていた。
間違いなく、彼はそこにいた。
そう、思わせてくれる導入。
そして、その印象は最後まで裏切られることはなかった。
「渡辺探偵事務所」
事務所がこの名前であることで得られるおもしろみの効果が
今尚生きているところがすごい。
依頼人は一体どこへ?
そもそも、彼は誰なのか。
誠実な探偵は、真実を追いつづける。
事件に巻き込まれるも、ジェットコースター的な展開はない。
ただ淡々と物語は進む。
だが、そこに編み込まれた人間模様に引きこまれる。
そして最後の衝撃に心拍数が跳ね上がった。
え?ちょっと~~!!


これ、絶対文庫も読まないといけないヤツ。
「あとがきにかえて」絶対に読みごたえあるに決まってる!
と、唸って本を閉じました。
そして、心臓に悪い引きなので、ここで終わりにはしてほしくない。
何か意図があってのあの終わりなんでしょうね?と尋ねたくなる。
淡々とした物語。
なのに、読後のこの胸の中のざわつき感が半端ない。
わ~~~!!!

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「さるのこしかけ」さくらももこ(集英社文庫)



ああ、わかるわ~、という共感と、
え、そんなことが!?という驚きと、
あ、ないわ~、というドン引きと。
どれもこれもが直球で飛び込んでくる言い回しで、
読んでいてとても楽しいエッセイ。
初っ端の痔の話から笑わせてもらいました。
例えが秀逸すぎ!
旅行にいけば、ネタになる話って絶対出てくるよね。
だから私、人様の旅行の話を聞くのも、自分の話を語るのも好き。
ホーミー!わかる!なんちゃってだけどできる、それ!というのが、自分的盛り上がり(笑)。
人生山あり谷あり。
ガチで楽しんだモノ勝ちだな~、と改めて思った。

「面白いから!」と、義妹のお母様からお借りした本。
自分では絶対手に取らないカテゴリーの本だけど、読んでみたら楽しかった。
こういうの、肩の力抜けるね。
旅の話もだけど、お仕事話を聞くのも好き。
義妹のお父様のお仕事話はかなり強烈だったのよね。
そんな素敵な方々とご一緒に、今度の週末に食事会。
楽しみ♪






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「去年の冬、きみと別れ」中村文則(幻冬舎文庫)



とても狭くて息苦しい世界で生きている人たちの物語。
あまりにも濃密な閉塞世界に引きこまれ、戸惑う「僕」。
「きみは誰だ」その言葉にハッとする私。
自由に羽ばたく翼を持つ者は誰一人としておらず、
青い空に憧れることにすら思い至らず。
心を捕らわれたただ一つのものの為に、
深く深く、澱の中に沈み込んでいく。
彼等は自身を弁護しない。
正しいとも思っていない。
ただそれをやり遂げなければならないいう、病的なまでの強い意志と善悪を飛び越えた行動力。
それこそが狂気。
自己愛も含め、彼らの語る愛は果てしなく身勝手。

映画を観に行く前に再読。
読めば読むほど、どんなふうに映像化されているのかが気になって仕方がない。

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「コイシラズ」定広美香&栗本薫(白泉社)



これほどマッチングする原作と漫画ってそんなに多くはないだろうなぁ、と。
栗本薫の世界であり、定広美香の世界でもある。
暴力と紙一重のセックス。
狂おしいまでの情愛。
突き抜けた才能故に、苦悩する姿。
或は、その才能に惑わされる周囲。
彼らの魂の慟哭が胸に刺さる。
そんな中でキラリと光る、一途で純粋な想い。
恋を知らなかった天使が恋を知り、
より深みのある音を奏で、やさしく愛を語る。
奪うことしか知らなかった野生の獣は、
守ることと失うことの強さを知る。
彼らの奏でる艶めかしいハーモニー。
ガツンとくる読み応えがたまらないお借り本。感謝!

かつての私が浸りきっていた懐かしくて切ない世界観がそこに在る。
先陣を切ってその世界を築き上げた彼女はいまはもう、いない。
あ、泣きそう……。
好きとか嫌いとか、そんな範疇を飛び越えて、ただただ凄い人だったと。
心から思える。

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「いつもの朝に 下巻」今邑彩(集英社文庫)



死者の残した言葉に振り回される子どもたち。
朽ち果てた家で相手の命を繋ぎとめようと懸命に発せられたふたりの言葉に、
ほら、あなたたちは正真正銘の兄弟なんだよ、
と、叫びたくなった。
「あなたの子供」
この言葉が、こんなにも悲しく突き立てられた作品は他にない。
沙羅の桐人に対する愛情深い言葉と態度が胸に響いた。
彼女はまぎれもなく、二人の子どもの母親なのだと、揺るがない想いに安堵する。
突き刺さったやるせなさは、最後まで抜け落ちることはなかった。
真実は、時として誰かの運命を瓦解させてしまうほど残酷だ。
だけど、家族の絆はその崩壊を食い止めることができるのもだと信じたい。


初読の時は、語れらなかった優太と桐人のその後を色々と思い描いていたせいか、
今回再読して作品の進行と自分の妄想(?)の中での出来事とが一瞬混同して混乱。
それだけ思い入れがあったんだろうなぁ。
『エデンの東』に取りかかろうとしているタイミングで読めたことに感じる巡り合わせ。
この作品は読メを始めてからずっといつか再読を!と思ってきたので、
それが叶って満足なのです。

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「いつもの朝に 上巻」今邑彩(集英社文庫)



ひたひたと迫り来る真実。
それを”悪意”と読み取ったとしても、異論は許さない。
もしも彼が生れてくる子供をその腕に抱くことがあったら、
こんな手記を残しただろうか?
懸命に真実と向き合おうとした子供たち。
彼らは本当のことを知りたかっただけ。
手繰り寄せた糸の先に絡みつかせてしまったのは、
まったく悪意のない爆弾。
どこかで彼らの秘め事を彼女に打ち明けるタイミングさえあったなら、
こんなことにはならなかったのに。
ヨシさんの言葉が私の胸に深く深く突き刺さる。
半泣きになりながら、下巻へ。
彼らの笑顔を奪わないで。


ちっとも冷静な感想かけてない(苦笑)
結末を知っている私は、涙をこらえるのに大変だった。
わ~~、再読ツライ!でもこの作品好きなの。

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「恋人までのA to Z」マリー・セクストン (モノクローム・ロマンス文庫)



山場は二つ。
ふたりの想いが通じるまでと、通じてから。
境目の前後でふたりの気持ちの変化がはっきりと見て取れて、どちらも読みどころ満載。
無味乾燥な日々をほぼ惰性で送っていたザックがアンジェロと出逢ってからの気持ちの変化。
人間に対する不信感と警戒心が拭いきれないアンジェロがザックと共に過ごすようになってからの気持ちの変化。
積み重ねた日常と会話の中で、時にぶつかりながらも歩み寄っていく二人。
その距離感にいっしょになってドキドキした。
凝り固まったアンジェロの心を解きほぐしていくザックの懐の広さがとても素敵。
愛を囁く言葉を口にできてよかったね。

これを言ったところでナンセンスなんだろうけど、
どーーしても突っ込みたい。
あのゲス男、何をしにコーダへ?
まったく意味がわからず、ポカーンとなってみた(笑)
彼を介入させずに違う展開での進展をみたかったかも……って、それこそナンセンスか。
マットとジャレドの暮らしが垣間見れたのも良かった。
スピン元を読んでいるが故の特典。
一人称の交互視点は昔大好きだった作家さんの得意手法なので、個人的に読みやすかった。
そして合間合間の映画の引用がとても楽しかった。
映画を観ているとちょっとお得感がある……かも?←今はさっぱりなので、意外と見ていた自分にびっくり(笑)

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「異邦人」カミュ(新潮文庫)



あなたは誰?
終始付きまとっていた問い。
それが判明した瞬間から最後までの記述を追いながら、
これまで示されてきた彼の冷静さと客観性、
そして見え隠れする情愛がじわじわと沁みてきて
うっすら涙が滲んだ。
ペストという猛威が蔓延し、外界から隔離された過酷な環境の中で
ペストと戦いつつ、自分自身の抱えた問題とも向き合った人たち。
自身への問いかけに対して各々見出した答えには、
驚愕、感嘆、共感、苦悩等々の想いを抱いた。
病との戦いの終息は、新たな脅威のはじまりなのか。
疲れ切った医師にひと時の安息が訪れることを切に願う。


「なにも幸福である必要はないんですわ。もう一度やり直すためには」
「希望失くして心の平和はない」
そしてもう一つ。
「まず第一に健康です」
今回心に残った言葉。
海のシーンが強烈に印象的で、切ない。
一人一人の苦悩と答えに対してあーだったこーだった言いたいけど、
ネタバレになるので回避。
心の中で見上げたオランの空は、終始どんよりと灰色に染まっていました。
【ガーディアン必読 66/1000】

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