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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「浄夜」花村萬月 (双葉文庫)



なんだろう、この吸引力。
汚物や汚泥に塗れた据えた臭いが充満する世界を
息苦しさを感じながら浮遊している気分になるわけだけど。
どうしたって目が離せない。
嫌悪感を抱く汚物の中にハッとさせられるものがあったり。
時折キラリと光る綺麗な言葉に胸を付かれたり。
結局、彼らの流れ着くところが気になって、読み続けてしまう。
過食嘔吐にもサドマゾにもネクロフィリアにも同調できない私は、
どこまでも編集者だった桐島の視点に安堵する。
桐島が置き捨てられた山の中で、寿命に想いを馳せる場面がとても印象的。
いつかは尽きる命。
どう生きるかは結局は自分次第だ。

感覚が麻痺したのか、笑ってる場合ではない場面で
何故か笑ってしまった不謹慎さ。
私だけかな?
カルチャースクールの小説教室が舞台の一つになっていて、
小説って習って書くモノなの?と終始思っていたわけですが。
「習うもんじゃない」というのが著者の見解でちょっと安心した。

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「少年は神の生贄になる」夜光花 (SHYノベルス)



前のめりになるように読み切って、続き~~!と吠えた三作目。
合点がいった部分と、この先を思うと不安になる部分と、でも大丈夫よね!と
勝手に期待する部分と。
伝説の剣、エクスカリバーを見つけて、神の子の威厳形無しで無邪気に喜んでいる樹里の姿が
後になって思えば本当に微笑ましかったと、しみじみ思う急展開。
悪意しかないジュリの戦い方はえげつない。
アーサーに対する想いをついに自覚した樹里。
どさくさに紛れての告白に対するアーサーからの応え。
「そのままのおまえが好きだ」
自分の存在意義について揺らぐ樹里にとって、これ以上の言葉はないと思う。


樹里自身が剣を手にして戦う姿を見てみたい。
と思ってしまうのは、北方脳たる所以かしら?
そして告白☆
実際のアーサー王ではランスロット推しの私ですが。
この作品では私、アーサー推しで揺らがずに最後まで行ける気がします。
私の好きなタイプの俺様~~~(*≧▽≦*)キャッ

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「殺人者の顔」ヘニング・マンケル (創元推理文庫)



過疎の田舎町で起こった凄惨な殺人事件。
その事件解決に奔走する警官にも、日常の営みがある。
家族の崩壊。
親の介護。
淡いときめき。
仕事での一喜一憂。
病魔との闘い。
人生の苦悩。
日常の悩みを抱えながらも、懸命に仕事をこなす彼らの姿には、
どこか親しみを覚える。
そして、人が生活する社会には様々な問題が内在していることもまた、突きつけられる。
高齢化社会の他に
本書が描かれた当時の欧州よりも、今の方がより深刻な問題と化している移民問題。
差別的な思想から、痛ましい事件が起きてしまう。
一冊の本に多くのことがギュッと濃縮された作品。



冒頭で、年老いた夫が、隣で眠っている
長年連れ添った妻の吐息を確認するシーンがとても印象的。
「一人になってしまったわけではないのだ。まだ」
読了後は事件解決の爽快感ではなく、もの淋しさを噛みしめる。
誰にでも、いずれ別れが訪れることを知っているから。



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「少年は神に嫉妬される」夜光花 (SHYノベルス)



日本とキャメロット王国の倫理観の違いが分かりやすく描かれている。
皆が樹里の影響を受けて少しずつ変わっていっている様が微笑ましい。
そして、樹里自身もアーサーに対する気持ちに少しずつ変化が生じているものの、
その根底にあるものを掴み切れていないところがやっぱり微笑ましい。
この二人のこれからがとても楽しみ。
樹里と同じく時空を超えてこちらの世界に流れ着いた中島が持ち込んだ物の
異質さが半端なくて、夜光さん、うまいなーと、思わず唸ってしまった。
これはどんな場面で使われるのだろう?
ランスロットに真実が知れたのは、樹里にとっては安心材料。
出生の秘密もチラリと語られ、今後の展開から目が離せません!

口絵のサンとクロが可愛すぎて二度見三度見(笑)

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「金閣寺」三島由紀夫(新潮文庫)




自己完結した世界の中で、ひたすら妄想の中に生き、
都合の悪い現実からは目を逸らし続けた溝口。
内に内に向けられた、肥大化する自意識。
金閣寺に対するあまりにも一方的な偏愛。
金閣寺にしてみれば、ただの迷惑だ。
美しく荘厳にそこに佇む金閣寺は、移ろいゆく時代と共に在るものであり、
彼の美意識の為にあるものでも、彼の自己愛の為にあるものでもない。
金閣寺はあなたなんて眼中になかった。
人間と、いや、自分とすらまともに向き合うことができなかった彼の選んだ愚行。
それは狂気ですらない。
果たして、これで彼は解放されたのだろうか?
生きることを選んだ彼のこの先の人生が気になる。

情緒もへったくれもない今風な言葉で言ってしまえばこじらせすぎた中二病。
やることもやらないで求めるばかり。
挙句は自らやるべきことを全放棄した甘ったれの妄想のとばっちりを受けて
燃やされてしまった金閣寺。
ああ、やっぱり金閣寺的には大迷惑だと思うの。


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「少年は神の花嫁になる」夜光花 (SHY NOVELS)



異世界トリップもの。
高校生男子が自分の意志とはお構いなしに異世界に飛ばされ、
「この人の身代わりになりなさい。偽物だってバレたら死刑!」
と言われるところからスタートする物語。
すんごい理不尽。
そんな中でもなんとか自分の世界に戻る道を探ろうとする
樹里の奮闘ぶりに、頑張れ!と言いたくなる。
自分で戦える子は大好きです。
そうなってしまった事情にも状況にも様々な人たちの思惑と正義が絡み合っている上に、
竜やら神獣やら魔法やらがテンコ盛りで今後の展開がとても楽しみ。
そして、夜光さんの書くランスロットに期待したい!


最終巻まで並べてみて、タイトル通りの進行って想像してみるけど、それであってるのかな?
そして、樹里の母、なんか知ってる?
と、答え合わせが楽しみなお借り本。
異世界トリップものはダントツで『十二国記』がお気に入り。
そして田中さんの『西風の戦記』。
BLの異世界トリップって初かな?




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「アンフィニッシュト」古処誠二 (文春文庫)



今回の事件は自衛隊内での小銃紛失事件。
前作に引き続き、朝香二尉と野上三曹が事件解決の任を受け、いざ、伊栗島へ。
二人の相変わらずな軽妙な会話の合間合間に浮かび上がってくるのは、
島の在り方、そして自衛隊の在り方に関する問題点。
そして、島民たちの憂いと隊員たちの危機感。
最後はそれらについて考え込んでしまった。
やり方は間違っていても、彼らの言い分は間違っているとは言い難い。
意見を具申したところで容易には通らない。
じゃあ、正しいやり方って?
答えを導き出すことは難しい。
彼らの乗った未完の船。完成する日はくるのかな?


何かが起こってから講じられる対策。
それでもいい場合もあるし、それしかない場合もあるし、それじゃあダメな場合もある。
「安全神話なんかではありません。それは安全願望です」
震災後に耳にした言葉がどうしても忘れられない。




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「愛とは言えない 4」榎田尤利(ビーボーイノベルズ)




私、橘高贔屓なので。
「明日世界が終るとしたら、なにをする?」
の問いかけに対するサガンの答えに本気で涙目になったわ。
良かったね。橘高本当に良かったね!と、ただひたすらその一心で。
どんなに拒絶されても、心に抱き続けた想いが叶った瞬間。
正直、サガンのことは苦手なんだけど、まぁ、橘高が選んだのが彼なので。
この先は全力で幸せになってもらいたい。
それが橘高の望みでもあるから。
結局はみんなサガンに振り回されたわけだけど、
落ちつくべきところに落ち着いてよかった。
いくつになっても全力で恋をしている人たちはキラキラしている。

小説と漫画がうまくマリアージュした作品。
だからコラボ企画は成功だったと、私は思います。
両方読んで完成形。
どっちかだけで完成しちゃったら、コラボの意味が薄れちゃうと思うのね。
これで手持ちの榎田さんはすべて登録完了!
手放し本の買い戻しも含めて、やっと他の作品が買える(笑)





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「恋とは呼べない 3」町屋はとこ/榎田尤利(ビーボーイコミックス)



どちらかがどちらかを利用しようとしているわけではない。
両方にとって必要な、自分の本当の気持ちに気付くためのセックス。
大人なんで、これはこれでアリだと思う。
だって、みんなわかっている。「選択を間違えた」ことを。
自分の気持ちと正直に向き合うこと。
本当に向き合うべき相手とまっすぐに向き合うこと。
これって、とても大事。
あそこまでのきっかけがなければどうにもならなかったほど、
こんがらがってしまっていた四人。
結局、淳平と英は橘高とサガンに振り回された感じかな。
「恋をしよう」「大好きだよ」
淳平と英の物語は素敵な言葉で終幕。


巻を重ねるごとに町屋さんの絵が麗しくなっていった気がする。うっとり。
身体のラインがホント綺麗だと思うのよね。
私的セクシーな男子を描かれる作家さんランキングは一位がもんでんさんなんだけど、
その次が町屋さん。
散々振り回された橘高とサガンに英と淳平が恋愛相談しているところが笑える。

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「UNKNOWN」古処誠二 (講談社ノベルス)



自衛隊の基地内で起こった盗聴事件。
二人の自衛隊員が、基地の中をひたすら歩きまわりながら、
隊員たちにヒヤリングを行っていく物語。
会話が軽妙で面白い。
そして、登場人物たちの言動がなんだか愉快。
とはいえ、同時に語られる自衛隊に対する周囲の認識と、内部の問題が重い。
今の時代は、自衛隊の評価はもっと高い。
特に、震災を経験した後であるから、尚更。
その職に就いているだけで色眼鏡で見られてしまうことは残念だ。
事の顛末はあまりにも阿保らしくて「馬鹿ですか!?」と言いたくなるわけですが。
朝香二尉の残した言葉に心から頷き、成長著しい野上三曹に清々しい思いで読了。

サラッと楽しく読める本は結局積読棚ではなく、既読棚から発掘☆
ひたすらコーヒーを飲んでいる朝香二尉の姿から、何故か姿(@機龍警察)のことを思ってみました。
似てはいないんだけどなぁ。


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