きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「三国志10 ~帝座の星」北方謙三(ハルキ文庫―時代小説文庫)
張飛の悲しみと声なき慟哭が最後まで聞こえてきて。
胸が押しつぶされそうになりながら読了。
再読でもダメージ半端ないわ。
その最中に落ちた巨星。
一つの時代の終息……と言い切るには早いか。
彼の存在感の大きさを改めて思い知らされる。
「冬に舞う蝶」この章タイトルがとても好き。
時を待つ時間は確かに必要だったかもしれない。
だけど、蜀に必要だった時間が呉に策を弄させる時間を与えたのだと思うと、
口惜しい。
酒に溺れた時点で、生じた隙。
だけど、悲しみを呑み込むにはそれしかなかった。
そんな一面があるからこそ、愛された彼。
張飛の名を呟く陳礼に涙が止まらなかった。
「長い旅だった。そして面白い旅だった」
曹操はある意味、やりきったと思う。
死に際にこう言えたら最高だね。
やり残したことはあっても楽しかった。
例えば明日死んでも、そう言い切れる人生であるといい。
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「LOVE and EAT~榎田尤利のおいしい世界~ 」(SHYノベルス)
榎田さんの作品世界のお料理を実際に作った写真と、
懇切丁寧なレシピがついている上に、
その後の彼らの姿まで垣間見られるという、
眺めていて楽しくて、読んでとても幸せになれる本。
レシピの中のお料理が実際に作中に出てくる楽しいお話は
『ペットラバーシリーズ』の彼らと『交渉人シリーズ』の彼ら。
轡田とユキが大のお気に入りの私的には小躍りしたくなる感じでした。
フィルム映像を観ているかのような、奈良さんのカラーのイラストストーリーも素敵。
お料理本としても素敵だけど、これは絶対に榎田さんの作品を読んでから眺めると
幸せ度が倍増しになると思うの。
お友だちと一緒に半日かけてレシピ本を見ながらお料理を作って、
出来上がったお料理を食べながら存分に榎田さんの作品を語る会。
うん。
機会があったらやってみたいなぁ。
ものすごく楽しそう。
そして会話はものすごく脱線していきそう(笑)
「ラブセメタリー」木原音瀬(集英社)
想像、或は妄想の世界は当人の自由。
その中でどんな行為に及んだところで、誰にも咎められることはない。
だけど、その妄想をリアルに実行してしまったら、それは犯罪。
その中で踏みとどまることができるか否かが
ひとつの分岐点であるのだと思う。
辞めることのできない薬や煙草と同じ。
一度手を出してしまったら、次へ、次へと手が伸びてしまう。
禁断の味を知ってしまわないように、懸命に踏みとどまろうと自制する久世と、
欲望の誘うままに手を伸ばして堕ちてしまった森下の人生がとても対照的。
思考そして嗜好。
本当に、どこから生じてくるものなのかしらね。
最初から町屋が自分の素性を明かしていたら、
町屋と久世はせめて友だちになれなかったのかしら?
とチラリと思ったお借り本。
無理かな。どうだろう?
久世は自分のモノも汚いって思ってるのかな?
とも思ってみた。
「すみれ荘ファミリア」凪良ゆう (富士見L文庫)
美寿々の生き方はとても好感が持てる。
彼女の定義した自然体。
しんどいながらも自分が楽に呼吸できる環境って大事。
隼人の人との付き合い方は、納得できる部分と、そうじゃない部分と。
裏表のある人間は、私だったら切り捨てる。
じゃないと、自分が疲れちゃうから。
青子の執着は気持ち悪い。
それは他人に対する愛情じゃなくて、ただの自己愛と自己憐憫。
母になったことのない私は悦実を糾弾することはできないかな?
だけど、彼女の子どもに対する在り方は納得できない。
身に降りかかった理不尽の全てを許した一悟。
虚無の中から漸く立ち上がろうとした央二。
二人のこれからが穏やかでありますように。
引き算どころじゃなく、色々バッサリと切り捨ててしまった私は、
みんなやさしいなぁと思ったり、じれったかったり。
切り捨てるのは簡単なんだよね。
だから、曖昧なまま見ないフリをしてゆるく続けていくスタンスの付き合いが
できる彼らがすごいなぁ、と思います。
まぁ、自分がそうできるかどうかは別(笑)
軽く読める本かと思って読み始めたら、色々考えさせられたお借り本でした。
「B.B. con game」水壬楓子 (ガッシュ文庫)
庇護される者ではなく、共に戦い並び立つ者へ。
出たよ、私の大好きな「双璧」が。
先にその結論に達していた真砂。
直情型なだけに回り道しないところがイイね。
一方、その関係の心地の良さに気付くまで回り道した千郷。
気付かせるに至るまでの事件の縺れっぷりと男たちの立ち回りは
とても面白かった。
ここからが、二人で紡ぎだす物語の始まり。
ある意味、先代の腕の中からの巣立ち。
お互いに言いたいことを言いあって、全力でぶつかればいい。
新しく築きあげられた二人の関係をもうちょっと見ていたかったなーと、
名残惜しい思いで読了。
艶やかでゴージャスで妖艶。
朝倉の全力の女装、イラストで見たかった。
とても見たかった!
迫力ある美女、大好きです☆
「B.B. baddie buddy」水壬楓子 (ガッシュ文庫)
見た目は眼光鋭い大型獰猛犬。ガチ武闘派の本格ヤクザ。
腕っ節も十分で、暴力沙汰もお手のもの。
なのに。
なーのーに!
一つのカップを二人で分けあう夜明けのコーヒーに胸キュンですって!?
何なの、この可愛いイキモノ……というわけで、私が真砂に対してキュンとしました。(笑)
亡くなった先代の存在抜きに語ることのできない千郷の現在。
「這い上がれよ」
「自慢の男になれよ」
その言葉通り、ここまでの地位を築いたのは自らの才覚。
改めて極道として生きていく盃を交わした千郷と、極道以外の道などないであろう真砂。
最良のbuddyとして上り詰めてほしい。
漫画のカバー下すら確認することを怠ることがよくある私が。
小説のカバー下なんて確認したことがなく。
何気に捲ったら現れたとても楽しいSS……あら。
今からウチの膨大な小説のカバーを一冊一冊捲っていく根性はないよ~~(涙目)
「死の泉」皆川博子 (ハヤカワ文庫JA)
「生きる」ということが、とてもとても息苦しい世界を生きた彼ら。
それでも、精一杯運命に抗い、持てる力と知恵を振り絞って生きてきた子どもたち。
あらゆる事象を諦念と共に受け入れ、ひっそりと息をするしかなかった彼。
自らを「死人」と称する子ども。
護ろうと必死で伸ばした腕の無力さに打ちのめされる大人。
自らの思い描く歪んだ世界のなかで力を振り翳す男。
点と点が不可思議な文様を描く線で繋がれ、絡まりあっていく。
もはや、幸せを願う余地がどこにもないほど、捻じれてしまった彼らの人生。
だけど、生きようと躍動する命が眩しくて哀しい。
20歳そこそこの私の人生観に大きな一石を投じた「白バラ」。
ゾフィー・ショル。貴女にまたここで出逢うなんて、と。
本筋と関係ないところで泣いてしまった。
若くして散ったあなたたちは、永遠に私の痛みであり、宝でもある。
思いがけない邂逅に、皆川女史に感謝。
ありがとう。
「ラグナロク:Re 1.月下に吼える獣」安井健太郎 (オーバーラップ文庫)
久々に読んだガチンコのバトルアクションファンタジー。
物語的にはまだ謎だらけだけど、キャラが半端なく魅力的で、楽しく読了。
因縁をつけられたら相手が死ぬまで徹底的に叩きのめす。
男女の区別なく容赦ないけど、子どもには無条件で優しいリロイ。
彼の戦う理由は単純明快で良い。
そんな彼の剣であるラグナロクの視点で語られる物語。
相棒であるリロイに対するラグナロクの言葉が辛辣で容赦ないんだけど、
リロイのことが大好きなのね、
ということが伝わってくるツン具合にニヤニヤ。
久々に発売日を楽しみに待つ本になるかな?
まずは次巻へ。→
魅力的な男子キャラがもう少し増えてくれると、個人的には嬉しいかな。
マグナルおじ様がとても素敵。
戦闘シーンの描写がとても緻密で、適当に流された感じがないのが良い。
もう少し若かったら前のめりではまったんだろうなぁ……と思うとちょっと惜しい。
でも、速攻で次巻をポチッとしました。
とても楽しみ♪
「黙示録3174年」ウォルター・M・ミラー・ジュニア (創元SF文庫)
とてつもないスケールの時空の旅からの帰還。
読了後、ため息と共に我に返るまで暫しの時間を要した。
繰り返される歴史。再び訪れる終末世界。
リーボウィッツ修道院を起点に語られる世界の変遷。
そこには繰り返される中世があり、現代があり、未来がある。
その未来に人類が同じ愚を犯すのは著者の警告なのか、或いは絶望なのか。
飛び去った星船に希望を託したい所だけど
「行ったら戻っては来ない」の言葉がやるせない。
地球上の鮫が、そして人間がお腹いっぱいになれた未来は訪れたのかな?
各章ごとの主要人物の死に様は胸に迫るものがあった。→
充実した読書時間。
頁数の多さより文字の細かさの方に戦きつつ、
読み始めたら途中で放り出せない読みごたえとおもしろさでした。
SFというジャンルに囚われず、普遍的に読み次いでいってもらいたい作品。
【ガーディアン必読 73/1000】
「神様のビオトープ」凪良ゆう(講談社タイガ)
5組……否、6組の愛の物語。
寒気がしたり、微笑ましかったり、切なかったり。
愛の形は様々で、想いは人それぞれ。でも、みんな真剣で嘘がない。
そして幸せの形にも定義なんてなくて、やっぱり人それぞれ。
誰にも迷惑をかけなければ、自分が幸せだと思う道を貫けばいい。
そういう意味では千花の選択には賛同できないかな?
秋くんと春くんには泣きそうになった。
高校生は素直に応援したい。
プロローグから私が想像した結末を、良い意味で見事に覆してくれた。
それこそが彼女の幸せ。彼女の信じる彼女の愛。
心に染み入るお借り本。とてもよかった。→
「試練に打ち勝てる人にのみ神は試練を与える」
的な記述が直前に読んだ本にもあって。
放射能の苦痛に呻く人に何言ってんの?と、思っていたわけですが。
私の求める答えがこの本にありました。
「そんな神さまこそ消えればいい」極論でも納得。