きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ご主人様と犬」鬼塚ツヤコ(ビーボーイスラッシュノベルズ)
タイトルに偽りなし。
人間嫌いな飼い主・上総と上総が大好きすぎて人間に変化することになった雑種犬・平の物語。
姿が人間になっても属性は犬。
興味が眼の前のものに点々と移り、集中力は皆無。
服の着方も掃除の仕方もわからない。
だけど、主人に対する忠誠と愛情は溢れんばかりで……
姿は人間でも人としての常識が欠落している平。
手ばっかりかかる平らを上総が受け入れたのは、
彼が向ける好意に嘘がないことだけは伝わったから。
バカだから可愛いのか、バカでも可愛いのか、バカ程可愛いのか。
そしてもう一組。
グレートデン・竟輔と飼い主・守。
こちらは竟輔が上手く立ち回りそうな予感。
ファンタジーです。
でも、こんな不思議があってもおかしくないよね~、という微笑ましさ。
人化した時に都合よく服着てない所も、
その辺りの説明がうやむやにされずにちゃんとしてるところもいい。(笑)
PR
「楊令伝15 ~天穹の章~」北方謙三 (集英社文庫)
斃れる筈がないと思っていた漢たちが散って行った。
そして、夢は、死んだ。
死んでいった。
いや、そうじゃない。
「死んだ」という言葉は正しくない。
「殺された」のだ。
途中から込み上げるのは、やるせなさと憤り。
最後は怒りに打ち震えながら読了。
卑怯者の国に。
裏切った者に。
でも、理不尽なのが人の世であり、戦場でもある。
潔さだけでは乗り切れない局面がある。
だけど、楊令は私みたいに憤ってはいないと思う。
多分、笑っていると思うんだ。
こんな気持ちで『楊令伝』は終わらない。終れない。
すべてを見届けるためには『岳飛伝』へ飛び込まねばなるまい。
どうしよう……全巻読み終わったのに、ちっともすっきりしない。
というよりも、ちっとも終わった気がしない。
これは、すぐさま『岳飛伝』へ行けってことですか!?
でも行かない。←行けない。
来年のお楽しみなのです。
鉄棒を日本刀に持ちかえた史進。
強さを探求する彼を越える若者は、そう簡単には現れないだろう。
「野性の呼び声」ジャック・ロンドン(光文社古典新訳文庫)
空気が凍る。
あたかも、未開の雪原に放り込まれたかのように。
胸が軋むほどに伝わってくる半端ない臨場感に
息苦しさを感じながら頁を捲った。
突然に断ち切られたあたたかで優しい世界。
突きつけられた過酷な世界で目の当たりにする
悲哀と、絶望、極限までの寒さ。
それでも、生き抜こうとする彼の命の力強さ。
だんだんとロクでもない人間に挿げ替えられていく主人。
死の淵で巡り逢えたソーントンと交わした愛情。
だけど、そこに安住できなかったのは、彼の業なのか。
次第に強く聞こえてくる彼を呼ぶ声。
眠れる野性の見事な目覚め。
圧倒されての読了。
計画性皆無で行き当たりばったりな人間に振り回される犬たちが哀れ。
これ、会社の上司とか国のトップがこんなんだったら……と考えると、
寒気がする。
身体がぼろぼろになっても持ち場につこうとするデーヴには涙出そうになった。
彼の人生は橇を引くこと以外になかったんだろうな。
淡々と、だけど、半端なく力強く描かれる物語。
100年以上前に描かれているにもかかわらず、ものすごい躍動感。
今も彼等はそこに鮮やかに存在している。
私的にはものすごく印象深い、素晴らしい読書でした。
【ガーディアン必読 56/1000冊】
「東の爽碧、西の緋炎」綺月陣 (ガッシュ文庫)
激情に駆られるような激しさは今はなりを潜め、
その安心感と安定感に心穏やかに見ていられる龍一郎と竜城。
九堂の手による死を希う廉が、というよりも、
その言葉を聞かされ続ける九堂がとても不憫。
だけど、この二人は安寧と安定なんて求めてないんだろうなぁ。
刹那の全力が何とも危うく力強い九堂と廉。
そして、まさかの次郎と颯太で私、涙出そうになりました。
颯太が颯太でいられるのは次郎のおかげなんだよなぁ、と、改めて実感。
一番年長なのに一番ヘタレなのが次郎な気がしてならない私ですが、
がんばれー!と、50男ののびしろにエールを送ります。
規格外な人たちと渡り合っていかないといけないわけだからね。
というわけで、シリーズ読了!
最後は西のアクの強さに東が喰われちゃった感じがしないでもないですが。
あんなデンジャラススリリングな毎日は遠慮させていただきたいわ。
東京は平和なわけじゃなくて無関心。
なんだか刺さりました。
いずれまた、彼らに出逢える日を楽しみにしつつ。
ご紹介くださいました読友さんに感謝。
ありがとうございます!
「東の双龍、西の唐獅子」綺月陣 (ガッシュ文庫)
獣シリーズを読んだ後なので、西の極道の笑顔にほっとする。
だけど、修羅を潜り抜けた廉の過去は、底の知れない凄味となって、彼に纏いつく。
西が強烈なだけに、一方の東の極道がとても礼儀正しくてクリーンに見えてしまう不思議。
颯太と廉の偶然……というよりも、必然としか思えない出逢い。
立場や生い立ちの全く関係ない二人の交流に和みながらも、
どうしたって拭えない二人の背後にチラつく特殊な環境の影。
一触即発の危機を回避させた龍が半端なくカッコよかった~。
自分の力の足りなさを自覚している次郎。
一人で完璧じゃなくても、二人で無敵だったらそれでいい。
だからこその「双龍」。
廉と九堂の本質を言い当てた颯太。
廉にとっては至上の言葉だったんだろうなぁ。
亜樹良さんのあとがきヤバイです。
何故廉に携帯拉致られてるの!?じろちゃん!!(笑)
そして、綺月さんのあとがきを噛みしめるように読みました。
「あひるの空 48」日向武史(マガジンコミックス)
「足が折れても走りきる」。
刹那に賭ける試合。
たとえ点差が1点でも、相手より数字が小さければ、次はないのだ。
諦めるな。
気持ちがくじけない限り、戦える。
そんな彼らの気迫と熱意が伝わってくる。
ギリギリの試合展開の中での表情がとてもいい。
多分それは、チームメイトに対する信頼の証。
双子の超能力、よかったわ~(笑)
この瞬間を全力で。
見せる事で、次の世代を担う者たちに伝えるモノが間違いなく在る。
積み重ねてきた時間の全てに胸を張って、あと2分ちょい。
「大丈夫、まだやれる」
メンバーと、自分自身を信じて。
しばらく連載休止がつづいておりますが……
一日でも早い復帰を、とは言わない。
いつまででも待つ。
無理せず最後まで描きたいように描ききってください。
「楊令伝14 ~星歳の章~」北方謙三(講談社文庫)
決戦を前に一枚岩になった梁山泊。
ここにきて「替天行道」を諳んじた楊令にぐっときた。
孤高の存在だった頭領が垣間見せた惑いと揺らぎ。
並んで駆けるとのできる同志が身近にいることに気付けて良かった。
楊令と秦容を指して「失敗」と評した王進の気持ちが痛い。
彼らの行く道の険しさが見えすぎる程、見えていたんだろうなぁ。
だけど、それも彼らの宿命。
逃げずに真っ向から受け止めて凛と立つ彼らが眩しい。
そして、見知った顔がいなくなることが寂しい。
「国を作らせろ」
そう言い続けた北方が見事に描こうとしている国がここにある。
次巻で完結。
心して手に取ります。
決して同格だと思っているわけではないけれども。
足元にも及ばないとも思っているんだけど。(贔屓目入ってるから許してね)
私にとっての至上の男、ロイエンタールを彷彿とさせられた李英。
格別な思い入れがあったキャラってわけじゃないんだけどね。
とてもやるせなかった。
戴宗には心の底からお疲れ様、と。
読み続けてきた『楊令伝』も残り一冊。
読む前からドキドキなのです。
「獣・煉獄」綺月陣(ガッシュ文庫)
前巻で地獄の淵に足をかけた二人の、この世への生還の模様を描いた完結編。
あの状態で、一体どうしたら……と思っていたわけですが。
なるほど、そういうことでしたか。
彼等に係る人々の、そして彼ら自身の様々な感情に翻弄されつつ、
結局は廉の気持ちの強さと九堂の狂気じみた情の深さに着地する。
迷いは自力で立つべきだと、九堂に身を預けた廉。
廉を抱いた九堂の涙。
再び巡り逢った彼らの行く道に咲き乱れるのは血染めの曼珠沙華。
廉の背に曼珠沙華の図案を描いた九堂の想いに鳥肌。
愛という言葉では到底足りない想いをぶつけあい、貪りあう二人の物語。
他に類を見ない物語でした。
究極の選択。肉を口に入れるよりはそっちかな?
でも人体に悪影響ないの?
と、うっかり調べてしまったばっかりに、読後の余韻台無しにしたバカは私です。
好奇心、身を滅ぼす。ちょっと意味違う?
無理無理無理。
「読む絶叫アトラクション」とは作家様のお言葉ですが、まさにその通りな獣シリーズを読了したところで、次は東西へ。
「獣~壊滅~」綺月陣(ガッシュ文庫)
自分の尺度で相手を計って、その上大切な思い出を穢してしまったら、
大火傷じゃ済まないよ?と言いたくなる九堂の過去編。
あの状態で人間って喋れるものなの?と、リアルに想像すると気絶します。
そして本編。
籠の鳥に納まりきれなかった廉。
言葉が足りていなかった九堂。
自らの利のために蠢く魑魅魍魎。
結果、起こってしまった惨劇。
諦めずに最後まで闘い抜いた廉の気概にはただただ息を呑むばかり。
「もう、あかんか?」の九堂の台詞がものすごく優しく響いたのはなんでだろう?
愛に殉じる言葉を睦み合う二人が、ただただ痛々しかった。
あの状態からどうやって!?が気になるので、マッハの速度で次巻へ。
副題。
降臨→壊滅→灼熱→真蛸→覚醒とサラッと読んで、
「真蛸!?」と目を剥きました。
うん。想像通り(爆)
「デミアン」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
デミアンとの出逢いによって開かれたシンクレールの世界。
彼の人生は様々な場所を巡り巡ってデミアンへと帰結する。
そして訪れた魂の導き手からの決別。
そこから先へ踏み出す瞬間こそ、彼自身で築きあげる世界の始まり。
美しい情景描写に彩られてきたこれまでのヘッセの作品とは打って変わって、
自らの在り様を、そして世界の在り様を内省していく物語。
「カインのしるし」
持っている人、持たざる人、とより分けられる線引きが、
率直に言ってしまえば鼻につくのがちょっと残念。
若いころに読んだ時の方が、同調できた気がする。
20年以上たって感じる乖離は、様々なものを見てきて感じてきた私自身の成長だと捉えることにします。
初読も高橋健二訳だと思っていたのですが、どうやら吉田正乙氏の訳が初読だったみたい。
吉田氏→高橋氏→高橋氏、と今回三度目。
読むたびに感想が違っていておもしろい。
というか、初読の時(1990年)の自分の感想に今の私がまったく同調できなくて、
眩暈がしました。(笑)
とはいえ、この作品が名著であるという思いも、この作品が好きな気持も
全く変わらず。
また時間をおいて再読してみたいと思います。