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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「HARD LUCK 1」菅野彰 (ウィングス文庫)



過去に抱えた傷に囚われ、
息苦しい世界の中で懸命に生き方を模索する大人になりきれない大人、タクヤ。
そんな彼に振り回されながらも、
彼の寂しい嘘と孤独を理解し、いつしか寄り添うようになっていくエド。
テンポのいい会話に笑いながらも、
時々零される呟きに抉られる。
自らの命を投げ出すような勢いで、犯罪に立ち向かっていくタクヤ。
彼のその危うさの根底にあるものは序章で示されているから、
笑いながら口にする彼の台詞の裏に、どんな想いが隠されているのかが
透ける瞬間がいたたまれない。
1巻自体が壮大なプロローグ。
再読なので慌てず焦らず次巻へ。

『HARD LUCK』
同人誌1993年→新書版1997年→文庫版2011年。
菅野さんが好きすぎて、出るたびに買ってました(笑)
イラストを描かれる方が都度変わっていますが、
一番印象深いのは新書版の松崎さんかな?
保管場所の都合で新書版は手放しちゃったけど、ちょっと後悔。
個人的にこのシリーズはサイバーフォーミュラと直結するわけで、
当時は遥か未来だった2015年がとっくに通り過ぎたことが感慨深いです(笑)
そして、2011年の『HARD LUCK 5巻』で止まってるのは気のせいですか?
気のせいじゃないですよね??
慌てず再読が終わるころに6巻が出てくれたらミラクルだわ。





内容(「BOOK」データベースより)

ロス市警のエドワード・ラング警部補のもとにやって来た新しい相棒は、タクヤ・コウガミと名乗ってその手を差し出した―。日系人で、子リスのような風貌とは裏腹に、タクヤは、無鉄砲で後先顧みずトラブルを巻き起こし、瞬く間に始末書の山を作る。だが、やがてエドワードは気づく。彼が心の中にそっとかかえるいくつもの深い傷。彼が警察官となったのは、復讐のためなのか、それとも―。エドとタクヤのバディ・ストーリー、装いも新たに復活。

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「王国」中村文則(河出文庫)



神を気取っていた男が人間に成り下がった様を見た気がした『王国』。
踏み越えたかったのは、本当におまえだったのか?
歯噛みするしかなかった理不尽はどこにいった?
とは言え、木崎に絶対的な悪であってほしかったわけではなく、
絶対悪のまま、運命に翻弄された者達の手による鉄槌が下ってほしかった。
それこそが、抗いの証。決められた運命に対する反逆。
そうはならないのが、世の中……なのかな。
つまりはやっぱり理不尽。
月は最後まで傍観者であってほしかった。
蒼く怜悧に高みから地上を見下ろして、
決して人間の事象には介入しないままでいてほしかった。
描写が美しかった故に、孤高の存在であってほしかった。

とりあえず、もう一度『掏摸』を読みたくなりました。(笑)
『掏摸』と同じものとして捉えたら、多分ダメなんだね。
そっちはそっち、こっちはこっち。
著者の言う通り、独立した物語。
わー、悔しい!


内容(「BOOK」データベースより)

組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。ある日、彼女は見知らぬ男から忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から語りかける男の声―圧倒的に美しく輝く「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。世界中で翻訳&絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹篇が待望の文庫化!

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「掏摸」中村文則(河出



立ちはだかるのは、「木崎」という、圧倒的な理不尽。
抗う隙間がないことに苛立ちとやるせなさと諦めとを噛みしめながら、
暗雲の中に呑まれようとした瞬間に生じた誤差。
浮草のように漂っていた彼が示した、この世界への執着。
その先を想像することを許されてはいるけれども。
私は何も考えまい。
姉妹編、『王国』を読むまでは。
この世界観、この描写。
ジワジワと押し迫ってくる感じがたまらない。
一気に読み切って、溜息。
自らの手で切り開くことができるのが、運命なのだと。
神を気取った男に、どうしたって抗いたい。

読友さんのレビューで『王国』につながることを知ったわけですが。
慌てない、慌てない。ちゃんと積んでました。(笑)
彼と子供とのやりとりがとても好きだった。
ちゃんとした服を着て、お菓子を食べて。
まっすぐに育ってほしい。

内容(「BOOK」データベースより)

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。

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「3びきのかわいいオオカミ」(冨山房)



これって、ブタのイイトコどりじゃないの!?←ダメな大人の感想です。
悪ブタに対するおおかみたちが本当に本当に可愛い。
要約すれば「現代版三匹の子ブタ。オオカミ&ブタさん入れ替えバージョン」
家を建てる手段がグレードアップして行けば、
当然破壊する手段もグレードアップ。
ダイナマイトを持ちだす悪ブタ……イロイロ半端ない。
家を造っては破壊され、造っては破壊されを繰り返した
オオカミたちがたどり着いた結論に、え?ダイジョブ?と思いつつ。
出来上がった家は本当に素敵!
ダメじゃない大人の感想は……ぶたのイイトコどり!←正直者。
ブタの悪役っぷりとオオカミの可愛らしさに楽しく読了。

この物語のヒールはブタオンリー。
家を作る建材を無償で分けてくれた動物さんたちも本当にいい人(?)ばかりだった。
オオカミが最初から最後まで本当に可愛い。
ブタのヒールっぷりが徹底していて何故か笑える。
そして、まさかの結末。お気に入り。
姪っ子ちゃんにあげるつもりだったけど、甥っ子ちゃんでもいいのかしら?
いや、この場合はどっちにも!(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

あるところに、ふわふわのけがわにふさふさのしっぽをもった3びきのかわいいオオカミが、おかあさんといっしょくくらしていました。いちばんうえのにいさんはまっくろ、にばんめははいいろ、すえのおとうとはまっしろでした。あるひ、おかあさんが3びきをよんでいいました。「さあおまえたち、そろそろひろいせかいにでておいき。かあさんのうちをでて、じぶんたちのうちをつくりなさいな。でも、わるいおおブタにはきをつけるのよ。」「しんぱいしないでかあさん。ぼくたち、ブタにはきをつけるから。」そういって3びきのオオカミは、ひろいせかいにでていきました。

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「蝶」ヘルマン・ヘッセ(同時代ライブラリー)



ヘッセにとって、儚く、美しく、そして滅びゆくものの象徴、それが蝶。
蝶に纏わる短編や詩編を収めた本書。
色とりどりな蝶に飾られた本書は、装丁も美しい……けど、
リアル蝶や蛾なので、苦手な方は要注意。
蝶を形容するために散りばめられた言葉の多彩さと、
その表現の美しさに魅惑され、
「キベリタテハ」を読みながら、指先に止まった蝶の軽やかさを思い出す。
本書購入のお目当ては「クジャクヤママユ」。
馴染の良いタイトルだと「少年の日の思い出」。
覆水盆に返らず、という言葉しか浮かばない。
とは言え、子供を正しく導くことのできる母親の存在は偉大だな、と、改めて。

「白と深紅のその蝶は、野の奥深くへと吹かれていった」
この表現が一番印象に残った。
蝶を追いかけて捕まえることのなくなった私にとっての蝶は「モチーフ」。
服や小物の柄に、綺麗で神秘的に描かれている物であるイメージ。
実際は繊細な翅をはためかせ、ふわりと風に舞うように飛んでいる生き物であることを、
改めて思い出しました。
蝶を触らなくなってどのくらいになるんだろう?



内容(「BOOK」データベースより)

美しいもの、亡びゆくものの象徴―蝶を、生涯にわたって愛しつづけたヘルマン・ヘッセ。蝶採集のときめき、異国の蝶や高山の蛾の珍品との出会い…。「華麗な恋人」蝶との熱いかかわりを綴る散文作品と、「色美しくそよ風のように飛ぶ」蝶を讃え、「きらめきながら消えてゆく」生命の神秘をうたいあげた詩。手彩色の銅版画などのカラー図版で飾る。

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「泣かない美人」菅野彰(ディアプラス文庫)



言葉は、時にひどく心を抉る。
起こってしまった過去を描きかえることも消し去ることもできない。
人の記憶も、抱えた後悔も。
だけど、痛めた心を抱えたまま、
そこから新しい一歩を踏み出すことができる。
優しさと、後悔と、これからへの不安と希望。
いろんな感情が刺さって、終始泣きたくなりながら読了。
隼人と要の在り様は、それでいいと思った。
完璧な人間なんてどこにもいなくて。
見ず知らずの人間には打算で近づいて。
警戒して、疑って。
だけど、わかりあう。
過去を知り、現在を知り、そして、愛しさがこみあげる。
みんなが要を気にかけてくれていて、本当に良かった。


とても菅野さんらしい話。
そして私はそんな菅野さんが大好きです。
大事に読み返したい作品。
やさしい日本酒が飲みたくなるわ。


内容(「BOOK」データベースより)

隼人はデパートの凄腕外商部員だったが、自身が招いたトラブルで企画課に左遷された。腐る気持ちを抱えつつ、仕事で訪ねた日本酒の酒蔵で、桜の下に佇む美しい青年・要を見かける。彼は杜氏の見習いで、清冽なる酒の作り手だった。だが頑なに心を閉ざし、隼人の差し出す手を振り払う。やがて知る、要や周囲を傷つけた過去のある事件。仕事のつもりが、いつのまにか要の孤独と傷に本気で向かい合うようになり…。

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「変わらぬ哀しみは」ペレケーノス(ハヤカワミステリ文庫)



1960年代のアメリカ社会の混乱と騒動の中に生きる人々の人生が、
過剰な装飾はなく、淡々と語られる物語。
だが、その時代に生きた人々の日常はこうであったのだろうと、
圧倒的なリアリティを伴って迫ってくる。
家族。暴力。愛情。自立。人種。堕落。
そんな彼らの人生は、どこかほろ苦い。
道を過たず、堅実に人生を歩む者。
どうしようもない悪行に手を染める者。
気付けば、深みにはまって抜けられなくなってしまった者。
たくさんの登場人物たちの人生と、当時のアメリカの現状を
むせ返るような熱気と共に見事に描いた物語。
一気に読まされました。
読後はやるせない余韻がジワジワと染みてくる。


何故かこれがシリーズ1作目だと思って読み始めた私。
実際は4作目だけど、時代的には一番過去の物語だから結果オーライ?
ペレケーノスもコンプリしたい作家さんの仲間入り。
【ガーディアン必読 52/1000冊】


内容(「BOOK」データベースより)

1968年、黒人警官デレク・ストレンジは己れの職務をまっとうしていた。白人から罵られ、黒人から同砲を取り締まる裏切り者と蔑まれても。時代は大きくうねり、黒人はキング牧師の下、権利の拡張のため社会運動を起こしていた。その最中、黒人青年が車に轢かれて不可解な死を遂げた。警察の捜査は進まず、やがて黒人による暴動の兆しが見え始める。その時デレクは…ハードボイルドの詩人ペレケーノスが綴る時代の慟哭。

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「楊令伝 6  徂征の章」北方謙三 (集英社文庫)



嵐の前。
来るべき決戦の時に備え、それぞれに見合った場所で力を蓄え、
或は、増強させていく梁山泊。
編成替えの配置の仕方が興味深い。
決して変わらないと思っていた致死軍の指揮官の交代に、
寂寞感がひとしおだった。
だけど、彼なら間違いなく新しい致死軍を作り上げてくれると。
確信できる期待感が嬉しい。
梁山泊の豪傑達を育ててきた子午山は、
殺戮に倦んだ童貫の心をすら晴らす。
王進の存在は誰にとっても平等だ。
幻王軍を解散し、純然たる梁山泊の頭領として一皮むけた楊令。
いよいよ梁山泊に合流する呉用。
静寂な時の終わりは近い。
いざ、決戦へ。

今を生きる者達がかつて散って行った者達を語る言葉が優しく沁みる。
『水滸伝』があってこその『楊令伝』。
実感できることが嬉しい。
初読の時に聞煥章に腹を立ててキリキリしすぎたせいか、
今回はその辺りは感情的にならずに読了。
北方の「さらば」の台詞の使い方は本当に絶妙すぎてぐっとくる。

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「楊令伝 5 猩紅の章」北方謙三 (集英社文庫)



一つの大きな山場を迎えた巻。
全ての責は己にある、と言い切れる
童貫の器の大きさを改めて突きつけられる。
冷静であり、公平であり、勇敢である男の言葉は、
何一つ、間違ってはいない。
そんな男が最後の戦いの相手と見定めた敵、
即ち、梁山泊。
その梁山泊のために禁軍の兵力を削ぐと同時に、
呉用の再生でもあった方臘たちの戦い。
たらればを言ったらキリがないけれども。
もしもあのとき、と、違った局面を思い描きたくなる戦いぶりだった。
虎延灼と史進の会話は相変わらず好き。
方臘の軍の最精鋭を迎え入れた梁山泊の戦いぶりがとても気になる。

現代社会で童貫みたいな上司の下で働けたら、
ものすごくやりがいがあるんだろうなぁ、仕事楽しいだろうなぁ、と、
改めて思う。
再読のはずなのに、この巻の内容全部ぶっとんでいたのは、
多分、この巻ラストからの奴のおかげで次巻でカッカしすぎたせいかと(憎)
改めてこの巻を読めて良かった。
色々ありすぎて、感想欄ではとても言い足りない。
唐昇とか花飛麟とか簫珪材とか。
個人的に劉光世がとても気になる。
呉用はみんなに愛されてるなぁ。
「誰もが、自分がいたい場所にいる、というわけにはいかないのだ」
宣賛の言葉が刺さった。



内容(「BOOK」データベースより)

推戴した帝が暗殺され、聞煥章の燕建国の野望は半ばにして潰えた。燕軍は瓦解し、北の戦線は終熄する。梁山泊軍は、楊令の作戦によって河水沿いの地域を一気に制圧した。一方、江南では宋軍による方臘信徒の殺戮が凄惨を極めている。しかし度人の声はなお熄まず、呉用は決死の覚悟で勝利のための秘策を練る。方臘自らが前線に立ち、ついに童貫軍との最後の決戦が始まった。楊令伝、狂瀾の第五巻。

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「In These Words 3」Guilt|Pleasure(BBCDX)



ここで1巻の冒頭につながり、物語展開の緻密さと凄さにゾクゾクっとなる高揚感が半端ない。
フラッシュバックしていた記憶がリアルに押し迫ってくる。
実体を得た犯人。
繋がり始めた事象。
身勝手で妄執めいた愛なんていらない。
自己憐憫で涙を流すその姿が気持ち悪い。
だから、諦めないで、と。
兆した、麻野の生きることへの執着に、ぐっと拳を握る。
そして私は尋ねたい。
あなたは、いったい、誰なのですか?と。
篠崎、踏ん張りどころだよ。
小冊子の過去は現在にリンクするのかしら?
先の展開へのわくわくが途切れない。
どれだけ間があいても、続刊を待ちます。

たとえ新刊が2年以上ぶりだとしても、ちゃんと出してくれる幸せをかみしめるのです。
待ち続けて何年??という作品が色々と。
今年こそ!と年が変わるごとに想い続けて何年!?という作品が。(以下略・笑)

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