きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「風と共に去りぬ (5)」マーガレット・ミッチェル (新潮文庫)
失ってしまってから、自分にとって大切なものに気づいたスカーレット。
だけど、時は戻らない。
一人の女として彼女のように強く在り続けられることは、眩しくて魅力的である一方で、
母としての彼女には思うところはたくさんある。
恋人としては……まぁ、人それぞれだよね。
レットがホントにかっこ良くって。
ダメな部分も含めていい男だった。
父親としてダメ男だなーと思ったけど、ボニーを溺愛した理由が切なかった。
でも簡単に手に入る女だったらレットはスカーレットに固執しなかったと思うんだ。
激動のアメリカを生きる人々の物語。
思っていた以上に骨太の物語に圧倒されての読了。
著者が記した物語はここまで。
彼女自身の思い描く女性の生き様を投影した部分があるんだろうなーと思う一方で、
この結末にしようと思った理由があるなら尋ねてみたい。無理だけど。(笑)
そして気になる別著者の手による続編『スカーレット』。
読みたい……と思ったら、大体のあらすじがwikiに記載されていました。
なるほど~~。
【ガーディアン必読111-5/1000冊】
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「冬色ドロップス」尾上与一 (幻冬舎ルチル文庫)
短編連作のピュアラブ。
ピュアすぎて……というより、トヨの言動が優等生すぎて、
途中でなんだか落ち着かなくなってきた自分、大丈夫?と思いつつ……
高校を卒業した彼らが大学生になり、社会人になるに至ってようやく
居心地の良いところに着地しました。
この高校生たちが時間を積み重ねていくと、
こんなカップルになるのね、という納得の展開。
最終話とあとがきの赤いドロップの使い方がとても好き。
トヨと伊吹に対してどこまでも自然体だった洋平が好き。
三人で綺麗なトライアングル。
この友情と愛情のベクトルを持ち合わせた三人の関係がずっと続くといい。
面接当日。
事故ではなく肺に穴が開いて入院したのは私の身内。
退院したら面接を仕切りなおそう、と言ってくれた人事の人の言葉は、
誰もが社交辞令的なものだと思っていたんだけど。
本当に面接をセッティングしなおしてくれて、
スルッとその会社に入社できちゃって今に至る……どっちもすごいな。
「笑えよ」工藤水生 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
この先もずっと交流を持ち続けたとしても。
高校卒業と同時に切れてしまう縁だったとしても。
共に過ごした時間のことを、彼らは一生忘れることはないだろう。
決して人目に晒すことのなかった傷や悩みを語ることのできる相手がいる。
ただそれだけで、少しだけ楽に呼吸ができる気がするのだ。
10代の彼らの姿が濁りのない透明な感性で描かれていて、
こちらまで澄んだ気持ちにさせられる。
コーンポタージュを買った彼の感覚がとても好き。
タイトルの含む意味が心強い。
同録は、それでも傷は簡単には癒えないだろうけど、
痛み分けに持ち込めた彼女に喝采を。
ジワジワ染みてきた若い著者の感性がとても心地よかった。
高校卒業まで見届けたかったなー。
真冬の花火。
やったことないけどとても魅力的。
雪に落ちる「ナイアガラの滝」。
やってみたい。とてもやってみたい。
「HOLLY MIX」 (Holly NOVELS)
今回は尾上さんの番外読み。
『二月病』番外「真夏の花」。
もうやめよう、諦めよう。
そう言い聞かせているうちは、その恋を終わらせることはできない。
想いを伝えることが出来ない相手が始終そばにいる事は、幸せなのか、苦行なのか。
蒼司のお遍路に対する願いが逆転した瞬間がとても印象的で良い。
それでいいんだと思うよ。
『碧のかたみ』番外「間宮」。
間宮って誰?と思ったら補給艦だった。
補給を無視したインパール作戦の惨状を読んだばかりだったので、
配給のありがたみをしみじみ思う。
そしてずいぶん久しぶりに再会した彼らがやっぱり好きだわ、と更にしみじみ。
香川で食べた讃岐うどんが本当に美味しかった。
大盛にすればよかったと、食べてから思った。
お土産に讃岐うどんの半生麺を買って帰ったけど、やっぱりそれも美味しかった。
また行こう、四国。(四県ひとくくり)
「二月病」尾上与一 (Holly NOVELS)
血なまぐさい事件。
高校生男子の日常。
職を辞した元新聞記者。
そして身を焦がすような恋心。
相容れないようなそれらのものがすべて違和感なく混在し、
見事に紡がれる一つの物語。
「何故?」とか「結局犯人は?」とか、
そんなことは些細なことで、圧倒的な読み応えに震える。
二月に恋を告白した蒼司と、少し遅れて自覚した千夏は、
二月が終わる前には深く気持ちを添わせていく。
静かに燃え上がった苛烈な恋。
同じく二月に起こった物騒な出来事は、二月が終わる前に沈黙する。
そして若田は足りない二月を永遠に追い続ける。
そして私は彼らの幸せを希う。
実際に鉄塔を見た時に周囲をがっちり柵で囲まれていて、
「ボルトを抜かれたりいたずらされたりしないようにこうしてるんだよ」という説明をしてもらった。
「何かあったら電気が滞って大変でしょ?」と。
その時は「そうだね」で終わったけど、
まさか実際の送電鉄塔倒壊事件をモデルにした作品にここで出会うとは思わなかった。
経験値って色々繋がるものなのね。
「世界の美しい廃墟」トマ・ジョリオン
感性は人それぞれだけど。
このタイトルに何故「美しい」の形容詞が入るのかが私にはわからない。
遺跡や遺産は過去に構築されたものであっても、
たとえ今は人が住まわないものでも。
時間の流れの中にひっそりと佇み、纏う空気は淀んではいない。
その状態を保持しようと尽力する人がいる。
だけど、ここに写された廃墟は完全に時間の流れから取り残された建物群で、
ただ朽ち果てていくだけ。
窓の外の景色は現代の景色そのもので、
取り残された感が余計感じられるよね……と思ったときに気づいた。
室内写真しかないことに。
何か意図があるのかな?
建物の外観が見たかったなー。
多分ここまで寂しい気持ちにはならなかった気がする。
頁を捲りながら、そして崩れた室内を眺めながら、
アニメ→映画と観てきた「PSYCHO-PASS」のいくつかのシーンが
脳裏を過ったのはなぜだろう?
何か共通するイメージがあったのかな?
時間に余裕ができたら全部見返したいけど、積読が山になっている現状では
録画した番組を倍速で消化するだけで精いっぱい(笑)
「彼岸の赤」尾上与一 (ドルチェノベルズ)
絶望している、というよりも、未来に対する希望が見いだせなかったが故の恋慈の選択が辛い。
マイナスがマイナスしか呼ばなかった紘平との出会い。
その選択に恋慈が納得づくだったことが根が深い。
だけど。
マイナスをプラスに転じることを可能にした幸久との衝撃的な出会い。
内側に籠った心には周りが何を言ってもダメで、
自分で自分を解放してあげないと幸せになれない。
過去と言う深淵をのぞき込むばかりだった恋慈と
まっすぐに向き合ってその想いを伝え、本音を引っ張り出した幸久。
そして最初に取り付けた約束への見事な着地。
未来を考え始めた恋慈に安堵しての読了。
太郎丸……学校で飼っていたニワトリに冬休み中に餌をあげに出かけて行って、
威嚇どころじゃなくガチで攻撃され、校庭中走り回った思い出がフラッシュバック。
水道が凍っていて水が出なかったから、
プールの氷をたたき割って水を汲んだのがいけなかったのかしら?
「風と共に去りぬ (4)」マーガレット・ミッチェル (新潮文庫)
救いの手を差し伸べてくれる人が誰もいないのであれば。
自分のみならず、救わねばならない人たちがいるのならば。
何より生きていくために。
思いつく限りの自分にできることを必死で試みようとするだろう。
だけど、時代はそれを当たり前とはしなかった。
女性であるが故にその手段と商売を成功に導く才覚を非難されるスカーレット。
彼女がもすごいけど、当時そんな女性を描いたミッチェルもすごい。
スカーレットがなりふり構わなかった事が引き金となった悲劇。
だけど、すべてを彼女のせいとは言い切ることはできない。
衝撃的な事実を知らされたところで次巻へ。
一冊の読み応えが半端ない。
映画で見た時同様、アシュレの良さが私にはわからない。
でも私、最初からレット贔屓だから公平なジャッジはできてないかも(笑)
スカーレットの自分本位の考え方には辟易するけど、
自らの手で生き抜く道を切り開いていく力強さは素直にすごいと思う。
【ガーディアン必読111-4/1000冊】
「僕のねむりを醒ます人―Sanctuary―」沙野風結子 (Splush文庫)
二人が共有する過去は甘やかで優しい色あいのものが大半だったけれども。
力ずくで捻じ伏せ、凌辱した最後の一日が、幸せな過去を覆いつくす。
そんな幼馴染の11年ぶりの再会。
感情の起伏が停止してしまった雪弥と自身を壊しかねなかった耀。
二人を繋いだのは、耀の別人格の晧。
彼失くしては、二人のどんな未来も立ち直りも語れない。
二人の幸せを願い、懸命に立ち回った晧の在り様が、切ない。
ああ、だけど、彼が存在するに至った経緯を思えば、
それ以外の選択肢はなかったんだろうなぁ。
穏やかに眠りについた彼を思って涙。
私にとっては彼が主役の物語だった。
だって耀はやりたい放題だっただけじゃん。(極論だけど間違ってない)
とはいえ、主人格は彼だからね。
そもそも雪弥が恋をしたのは彼だからね。
ハッピーエンドのはずなのに、なんだかとても切ない。
「妖奇庵夜話 ラスト・シーン」榎田ユウリ (角川ホラー文庫)
長い物語の着地点に、深いため息。
凛として切なく、胸が軋むような優しさに満ち溢れている。
だけどやっぱりやるせない。
正直「鵺」の介入は私にとってはやっぱり邪魔で。
だけど、その介入がない限り、彼らはずっと苦しんだのかな?とも思えるわけで。
だから彼らは鵺主導の結末にはならないように、精一杯抗った。
彼が得たものは、至上のものだっただろうけれども、
これが最良の着地とは、とても言えない。
一方の彼が失くしたものがあまりにも大きいから。
「ほら、笑ったらどうだい」
彼に関わる全ての人に向けられた言葉。
哀しいわけではない。だけど、反芻して泣きたくなる。
ショートコミックペーパーの内容が刺さる。
ここからはネタバレになると思うので、目を通される方はお気をつけください。
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青目にとっては伊織にこれ以上ない言葉をもらったと思うんだ。
その言葉を抱えて生涯生きていけるくらいの至上の言葉。
或いは、その言葉を抱えて死んでもいいくらいの言葉。
咀嚼したもの以上に大きなものをもらったんだと思う。
だけど、妖奇庵の人たちにとっては胸が痛い現実を突き付けられることになる。
それでも、彼らは伊織の家族だ。
これまで以上の強い絆で共に生きていくのだろう。
伊織はそこに戻ってきたのだから。