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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「金の小鳥の啼く夜は」かわい有美子 (リンクスロマンス)



凛とした文章が紡ぎ出す、繊細でやさしい物語。
左半身に重度の火傷痕があっても、両目が見えなくても。
その心根の優しさと美しさが損なわれることのなかった二人。
6年かけて二人が築き上げた幸せな閉塞世界。
そこにいることで満ち足りていた二人が
その世界が瓦解しそうになった時に感じた絶望。自覚した愛情。
そして、二人を更に大きな世界へと解き放って行った好意と経緯。
一緒に一喜一憂しつつで読みごたえあった。
英彬の良く響く艶やかなテノールが聴こえてきそうな描写が秀逸。
雪乃の告白の言葉はあまりにも鮮烈。刺さったわ。
そして高彬の策士っぷりに喝采を。

やけど治療のための皮膚移植。
あたしそれやってる~~!と、思いがけない親近感(笑)
背中の皮膚を右足に移植したそうです。←覚えてない。

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「人でなしの恋」かわい有美子 (リンクスロマンス)



時は昭和初期。
第一高等学校時代から仲の良かった三人。
仁科、花房、黒木。
共に過ごす年月が増すごとに、
複雑に絡み合っていく三人三様の想い、
時に感情が勝り、時に理性が勝り。
だけど、どうしても嘘のつくことができない心の底から込み上げる想い。
そんな彼らの心情が丁寧に描写されていて、引きこまれると同時にやるせなくもなる。
仁科から見た黒木と花房から見た黒木。
それぞれの解釈が全く違うところがおもしろい。
仁科の想いには胸が痛くなるし、
誠実で実直な花房もまた、捩れた想いを抱えている。
少し苦味の残る読後感が、また心地良い。



関東大震災、小石川、というワードは『はいからさんが通る』と直結。
私は隻眼の黒い狼が大好きでした。
仁科、花房、黒木の三人が別な作品にも出ていることをさっき知ったけど、
既にかわいさんコンプしている私は慌てない(笑)
積んであることの利点は「いつでも読める」
次は『金の小鳥の啼く夜は』にいきます。

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「世界の文豪の家」



美しい建物の写真を眺めているだけでもとても楽しい。
本読みとしては、その建物で生活していた作家たちの作品がいかにして生み出されたのかを
知ることができるのはとても嬉しい。
そして、簡単にではあるものの、紹介される作者の人生が大変興味深い。
ローラ・インガルスが『大きな森の小さな家』を
執筆し始めたのが還暦を過ぎてからだということに驚いた。
そこから9作品。人間の可能性は無限大。
一番インパクトがあったのがユゴーの家。
なんじゃこりゃ!?的なインパクト。
落ちつかない。
ヘッセの生活していた場所は作品イメージそのものの風景の美しい場所で嬉しくなる。→


読みながら何を思ったかというと、
部屋を徹底的に片付けて、綺麗に整えたくなってみました。
そんなふうに触発されるくらい、素敵な家がたくさん。
特に北欧の家は洗練されている気がします。
紹介されている作家は41人。
そのうち既読の作家は20人でした。

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「天平の甍」井上靖(新潮文庫)



西暦700年代。
命掛けで海を渡り、異国で学んだ遣唐使たち。
移動も誰かに会うのも写経をするのも。
今の時代とは費やす時間があまりにも違う。
それでも一つのことを探求しつづける彼らの姿勢には背筋が伸びる。
志半ばで道を逸れる者にも事情があることが汲み取れるのもリアル。
唐に渡った普照が高僧鑑真を伴って帰国するまでに費やした歳月は20年。
当時鑑真は66歳。
二度と故国には帰れないことを覚悟しての来日であっただろう。
彼らの熱意の根源は仏教への深い思い。
唐招提寺の落成で物語は終わる。
彼らの痕跡を実際に辿ることができるのは僥倖。


興福寺、東大寺の大仏。唐招提寺。
1400年程前の建立物を未だこの目で見ることができる事実に、
自分が悠久の時の流れの中で生きていることを実感する。
そして支倉常長がヨーロッパへ渡るのがいかに大変だったのか。
実際にそれをサンファン館で学んできただけに、
その時代よりもさらに古の時に荒波を渡っていった彼らの苦難の道を思う。
初読の時は業行が辿った運命に「ああ」と頭を抱えたくなったけれども。
今なら「リスク分散」を強く主張したい。

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「この夏のこともどうせ忘れる」深沢仁 (ポプラ文庫ピュアフル)




彼も、そして彼女も。
この夏に起こった出来事を決して忘れない。
それは、心の底に残された大切な宝物。
かすかな痛みと共に思い出す、ひと夏の想い出。
その夏の延長上に彼らはまだ共にいるのか。
いて欲しいと思ったり、いないだろうと思ったり。
そもそもありえなかったり。
それぞれの話の「ふたり」の関係が透明感のある文体で書かれた短編5編。
爽やかな青春物かと思って読み始め、
衝撃を受けた「空と窒息」。
やるせなくて涙が滲んだ「宵闇の山」。
二人の幸せを切に願った「生き残り」。
チクチクと胸が軋む読後感に浸っていたいお借り本。


暗闇の中に響くのは、寄せて返す波の音。
私がこの場所にいることを知っているのは私と連れだけ。
もしも今、この海に呑みこまれたら、
私がどこに行ったのかは誰にもわからないんだろうなぁと
ぼんやり思った過去の思い出。
ゾクッとしたときに繋いでくれた手のぬくもりがありがたかった。
あの時は頼もしいなぁって思ったんだけど、
あとから思えば、多分相手も怖かったんだろうね(笑)

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「GIANTKILLING 55」ツジトモ(モーニング KC)



ブラン、夏木の乗せ方よくわかってる。
流石監督。
そのブランの背中を押したのは椿と夏木を育てた達海。
こちらも流石監督。
拮抗する日本とオーストラリアの試合展開は手に汗握る好勝負で、
アジアカップを通して結束し、成長著しいメンバーたちの活躍がとても嬉しい。
完全に開花した椿ののびやかなプレー。
日本中が歓喜する逆転劇。
だけど。
こんな劇的展開は望んでいなかった。
血の気が引くってこういうことだよね。
特に彼が贔屓だったわけじゃないけど、
嘘でしょ、と真顔で呟く自分。
彼に持田のようにはなってほしくない。
その怪我が大事に至りませんように。


呆然としすぎて感想が書けずにここまできてしまいましたが。
来月新刊が出るので慌ててUP。
スポーツに怪我はつきものだけど、つらいね。

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「宝石商リチャード氏の謎鑑定 祝福のペリドット」辻村七子 (集英社オレンジ文庫)



ここでリチャードの過去が明らかに。
出逢った人によって人生が大きく左右されることがあるけれども。
もしもシャウルがリチャードを見つけることがなかったら?
どう頑張っても明るい未来が想像できなくて背筋が凍る。
シャウルと出逢い、後に正義と出逢い、
出逢いが更なる出逢いを呼び、
胸の内に秘めつづけた想いを解き放つことができたリチャード。
過去の出来事一つとっても
幾人もの人の想いが何層にも重なり、複雑に絡み合っていて
読み応えがある。
「諦めとは違う、現状の限りない肯定」
だから前に進むことができる。今この瞬間の、先にある未来へ。


「お鍋にミルクティ入ってるから」と言い置いて母親が出掛けた後、
寝起きの頭は鍋=コーンポタージュと直結し、
温めてスープカップに注いでスプーンで掬って口に入れて
「なんじゃこりゃ!?」と噴き出した思い出。
コーンポタージュだと思ってミルクティを飲むと
記憶にある味と直結せず、結果未知との遭遇になって慄くことになるのは経験値。

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「その先の道に消える」中村文則(朝日新聞出版社)



美しく繊細な世界観は申し分ない。
そこに彼の思想をぶちこまれるのはなんだか興醒めだけど、
まぁ、そこは我慢できる範囲内。
作中で彼が描くのは「悪」ではなく「闇」。
闇に堕ちた、或はギリギリで踏みとどまっている人たちの心理描写は秀逸。
読む手は途中で止まらない。
だけど。
読み終わってみれば
私も「その周辺を彷徨う」類のカテゴリーに弾かれた感満載。
迷子にはならなかったけど、同調もできなかった。
途中までは凄く楽しかったんだけどなぁ。
葉山さんも嫌いじゃないんだけどなぁ。(むしろ好き)
なんだか惜しい。



エロが書きたければ、
いっそそれに特化したジャンルで書いてみるといいんじゃないかな?
途中であんだけぶっこまれるとしつこいわ!ってうんざりする。
そして、彼の描く女性が根本的に似たようなタイプばかりで、
そこは個人の好みだからいいんだけど、私的には面白みに欠ける。
とりあえずハードカバーで追いかけるのはここで打ち止め。
残念。









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「つないで イエスかノーか半分か番外篇4 」一穂ミチ(ディアプラス文庫)



それが本当か嘘かということと
正しいか正しくないかということはイコールではない。
ないんだけど。
真実に反しているとわかった時点で糾弾される。
そのリスクを負う覚悟があるのか。
バレなきゃいいという甘い考えで手を染めるのか。
そもそもバレないと思っているのか。
各々で負う負債の大きさとその後の対応の仕方は変わってくるんだろうね。
仕事に対する熱意は自分の内から湧いてくるもの。
だけど、そこに外的要因が加わったらより楽しく頑張れる。
素直になりきれない栄が可愛くて仕方ない設楽。
ゆっくりじっくり熟成させていく恋模様。

「炎と書いてジェラシーじゃん」という台詞を
「炎と書いてミラージュじゃん」と読んでしまい、
ん?何言ってんの?と台詞を二度見した自分の闇(?)は深いと思ってしまった(笑)
仕事を頑張るのも流すのも自分次第。
私は……今の状態で適当に流したい。←ダメ発言(笑)

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「赤と黒(下)」スタンダール (新潮文庫)



作中の人物たちの想いに全く共感できないので、
途中までは読み進めるのが苦行。
ジュリヤンとマチルダの恋愛は
「自分のための恋愛」という感覚が全面押しで
恋愛というよりもはやどちらがより優位に立てるかの勝負。
強烈な自尊心の根底には、相手に対する情愛がしっかりと宿っていることが
確信できるのは、色々なことが手遅れになってから。
そして決して尽きることのなかったレーナル夫人とジュリヤンとの絆。
彼のために最後まで尽力した親友のフーケ。
彼らの悲痛な想いと運命を受け入れる覚悟を決めたジュリアンの心の凪が伝わってきて、
最後は切なくなっての読了。

苦行を抜けるまでが長かった……
もうちょっと時間がかかるかと思ったけど、何とか週末前に読了。
ジェロニモと言えばキン肉マンを思い浮かべていた子ども時代。
今はジェロニモと言えば天草四朗。
見聞したものに影響されまくりの連想ゲーム(笑)

【ガーディアン必読99-2/1000冊】

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