きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「神さまに言っとけ」榎田尤利 (SHY NOVELS)
花屋にヤクザに天使。
命の炎が消えかかった男が、その命をかけて神から課された試練に挑む。
これ、どんなふうに着地するの?と首を傾げながら読みはじめ、
結果的には大納得のエンディング。
この辺のまとめ方はさすが榎田さん。
愛をせせら笑っていた男が愛に涙するまでに至った心境の変化と、
愛を知らず、孤独に生きてきた彼がぬくもりに包まれる様がとても良かった。
大切な人の為に咄嗟になしてしまう行為は損得なんかでは計れない。
だからこそ、尊い。
本能が知っている。ただ、求めている。
ラスト、一緒になって涙ぐんでしまったわ。
内容はまったく関知しないまま未読の榎田さんの作品を適当に引き抜いて読み始めたら
予想以上に良くて、お得な気分になれた一冊。
荒んだ気持ちが吹っ飛ぶ気がする。(荒んでるときに読んだわけじゃないけど・笑)
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「十角館の殺人 <新装改訂版>」(綾辻行人) (講談社文庫)
引き金になったのは一人の学生の死。
ひとり。そしてまたひとり。
孤島でジワジワと殺されていく学生たち。
彼らの個性がとても魅力的で惹きつけられる半面、
犯人の動機にまったく共感できないので、やるせなさしかない。
挙句は「審判」?何自分に都合の良いこと言ってるのよ?と、
揺さぶってやりたい思いがチラリと。
完全犯罪を目論んでくれた方がまだ納得できた気がするけど、
それだと逆に犯人の動機がブレるのか。
そのモヤッと感も含めて作品としての完成度の高さは文句なし。
頁を捲ったあの一行のインパクトは、何度読んでもガツンとくる。
私の読書記録によると、初読は1995年。
うん。記憶も薄れてなくなってるから、色々新鮮に読めるわ(笑)。
興味深いのは同じ時期に読んだ『占星術殺人事件』の感想で金田一はじめに対して憤っていること。
そっちでネタバレあったのかな?……という気もするんだけど、謎(笑)
以前は色々つまんで読んでたけど、最近ではミステリーはめっきり読まなくなったなぁ。
「逆説の日本史6 中世神風編」井沢元彦(小学館文庫)
鎌倉新仏教に関する記述がとても面白かった。
基礎知識が薄い分、読むのに時間がかかったけど、
釈迦の仏教と現代日本で認知されている仏教との違いが
分かりやすく説明されているので内容がスッと入ってくる。
仏教を日本独自のものとして発展させた日本人のフレキシブルさが好き。
そもそもが八百万の神の国であり、言霊の国であるんだなぁ、と改めて思う反面、
「空想的平和主義」に危機感を抱いてみる。
そして記述は鎌倉時代を経て南北朝へ。
過去の出来事が現代にまで脈々と影響を与え続けるのも日本独特なのかな?
ものすごい読み応えのあった一冊。
そのうち北方の『岳飛伝』を読む気満々だったわけだけど、
彼の最期がどどーん、と記載されてて、ええ~~!ネタバレ~~!となってみました。
北方はそこのところをどんなふうに書いてるんだろう?興味津々。
一度見ているからこそ、「え、そうだったんだ!」という気づきがある。
薬師寺の三尊像は本書の内容を踏まえてもう一度見に行きたい。
■行った場所:薬師寺(三尊像は再見必須)・永平寺・佐渡■行きたい場所:四天王寺・千早城(大阪)湊川神社(神戸)
「サクラ咲ク」夜光花 (リンクスロマンス)
中学の先輩だった櫻木に、15年近くも想いを抱き続けた怜士。
だけど、好きになった相手が同じように自分を想ってくれるとは限らない。
誰に対しても心が動くことのなかった櫻木は、
そのことををきちんと伝えた上で怜士との距離を縮め、
取引を持ちかけられて怜士を抱いた。
その先を勝手に期待してしまった怜士の気持ちもわからなくないけど、
手の内を全部晒した櫻木のことは責めるのは筋が違う。
どうなることかと思ったけど、
「恋が分からなかった男が、好きだって言ってるんだ」
この言葉にすべてが集約されている気がして。
なんかもう、胸が熱くなった。
導入のインパクト。
事件の謎解き。
櫻木と怜士の気持ちの変化。
前作の大輝・秦野・塚本もうまく絡んで、最初から最後までグイグイ読まされました。
「ロマの血脈(下)」ジェームズ・ロリンズ (竹書房文庫)
孤独も、恐怖も、哀しみも。
その小さな身体で受け止めて、友だちを……いや、多くの人々を救うために
戦った彼の姿に涙しかない。
破滅へと向かうこの世界を救うために何を成すべきなのか。
自分たちに何ができるのか。
子どもたちがそれを知り、行動に移してしまったことがただ哀しい。
とても哀しい。
事の発端が選民意識丸出しの大人の身勝手さってどうなのよ。
アメリカ、インド、そしてウクライナ。
各所で戦っていたシグマのメンバーたちも、彼に誘われるようにウクライナへと終結する。
脅威が去った後にはその犠牲の痛ましさに嗚咽。
大きな打撃を被った組織の立て直しと、
グレイの身に降りかかる不穏な予言が気になりつつ次巻へ。
今回はイラストもとても重要な意味をもつわけだけど、ラスト一枚。
小説という文字を読む媒介に置いて、イラストの視覚的効果がここまである作品には
なかなか出会えない。と思う。
「忘れないでいてくれ」夜光花(リンクスロマンス)
殺害された両親の復讐を誓って生きてきた清涼と、
父親から受けた虐待の記憶を抱えて生きてきた秦野。
苦しんでもがきながらの人生を歩んできた二人救済の物語。
「結局は自分なんだ」というラストに零れた秦野の台詞が
ものすごく刺さった。
そうだよなぁ、と、そう在りたい、と、両方の意味で。
泥臭くぶつかり合った二人だからこそ、築くことのできた関係。
本音と弱さを晒せる存在がそこに在ることはとても心強い。
朝南さんのイラストのおかげでスパダリか!?と思った秦野が
実はそうじゃなかったところが個人的にギャップ萌え。
終り方がとても良かった。
謎だらけで強烈な印象を醸し出す清涼の友人、
塚本がとってもとっても気になった。
この人はどんな恋愛をするんだろう?と。
スピンがなさそうなのは残念だけど、別の方のスピンが控えているので、
そちらを楽しみに♪
「動物と話せる少女リリアーネ1 動物園は大さわぎ!」
動物と話ができ、植物に花を咲かせることのできるリリアーネ。
そのことが原因で数度の転校を繰り返し、
引っ越した先で出会った隣家のイザヤ。
彼もまた、秘密を抱えていた。
突出した能力を持った子供が弾かれるのは何処の国でも同じなのね、と
世知辛く思いつつ読み始める。
偶発的に秘密を暴露しあうことになった二人。
秘密に対して前向きに向き合い、
周囲の人との関係を変えていこうとする努力にまで持っていけたのは、
一人じゃなかったからだろうなぁ。
友だちって偉大だ。
そしてリリと動物たちの交流が微笑ましくて可愛い!
私もクマに救助されたい。←違う。
姪っ子ちゃんが遊びにくるので用意してみた本。
先日動物園の飼育体験をしてきたみたいで、タイミング良かったわ。
気に入ってくれるといいなー。
「ロマの血脈(上)」ジェームズ・ロリンズ (竹書房文庫)
何に向かってそこまで懸命に突き進もうとしているのか。
彼らは何を成そうとしているのか。
わからないながらも、子どもたちとチンパンジー・マーサの
命懸けの前進が痛々しい。
それを手助けする唯一の大人が彼であることが、ただひたすら嬉しい。
彼らから遠く離れた場所でグレイたちが繰り広げる死闘。
彼らの戦いの先に在るのは、子どもたちの戦い。
デルポイの巫女の神託からはじまる物語。
特殊な能力を強制的に増幅し、操ろうとするのは冒涜。
人の心の痛みがわからない輩には嫌悪感しかない。
私もマーサにハグされてみたいなぁ、と思いつつ、下巻へ。
チェルノブイリの原発事故からもうすぐ33年。
そして福島原発事故からは8年。
あれから〇年……と、ずっとカウントされ続けていく重大な事故。
人が物を作り出す力はとてつもなく素晴らしいものだと思う一方で、
制御できないものを生み出してしまう恐ろしさも孕んでいるのだとも思わせられる。
今回は薀蓄が少なく、最初から最後までハラハラドキドキしっぱなし。
「菫の騎士」榎田尤利 (SHY NOVELS)
誤解は言葉を尽くせば解消できるが、
身勝手な悪意はどうしたって振り払えない。
人と人。
信じた分と同じだけの信頼が返ってくるわけではないけれども、
信じることによって良質な変化を来すことは少なからずある。
裏切られるリスクがあるとしても、
アルヴィンは「信じる事」を貫いていいと思う。
理想論だけを述べているわけではなく、
経験から導かれた言葉だからこそ重みがある。
降りかかった火の粉は頼もしい騎士たちがきっと振り払ってくれる。
何より、精霊たちの加護もある。
人は「強い」のではなくて「強くあろうとしているから強くいられる」のだと
改めて噛みしめる。
良質なファンタジーと安定のBLの融合。
ダンテが己を守るために身につけざるを得なかった「強さ」が、
これからはアルヴィンを守るための「強さ」になることが嬉しい。
「楠木正成 下巻」北方謙三(中公文庫)
わかってる。
わかってるけど悔し泣き。←顕家が都に駆けてきたところで。
朝廷と新田の馬鹿さ加減には怒りしかない。
諦念しかなかった正成。
父に裏切られた大塔宮。
彼らが追い求めたものが、そして築こうとしたものが
幻だったと気づいたときの無力感が半端ない。
自分のことだけを考えていたのなら、もっと穏やかに暮らせただろう。
だが、彼らは考えた。
この国の在り様を。
未来を。
その結果がこれ!?と理不尽に震える。
すべてを俯瞰していた尊氏。
今回初めて尊氏の人となりをかっこいいと思った。
最後の尊氏と正成の邂逅がとても好き。
そして読後には虚しいため息。
馬鹿だなぁ、私。と思いつつ、顕家を思って号泣。
そして正成と大塔宮の諦念を思ってまた涙。
地図があったら良かったなーと、関西方面の土地勘が全くない私は思いました。
尋ねてみたい場所がいくつか。特に千早城。
それは今後の旅のお楽しみに。