きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「Blue Rose」榎田尤利 (SHY NOVELS)
胸が軋むような痛みと、静かな優しさと。
そしてどこまでも深い哀しみに彩られた物語。
青の生い立ちと内面を知るにつれ、やるせなくなってしまう。
皆が青を守ろうと必死になっているにもかかわらず、
だんだんと不安定になって自暴自棄になっていく様が辛い。
こっちにいったら楽になれる、幸せになれると、わかっていてもそちら側を選べない。
何故なら、自分がこのままでいることを望んでいるから。
それが人の心。
世の中にはどん底まで堕ちて這い上がれない人もいる中、
立ち直った青はトオルの言う通り、運が良かった。
強く在って欲しい。
個人的には書き下ろしはなくてもよかった。
二人には「友達」ポジションを貫いて欲しかった。
じゃなかったら、そこに至るまでの想いの移り変わりをきっちり書いて欲しかった。
それにしても高瀬、イイ男だったなぁ……
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『破獄』吉村昭(新潮文庫)
四度の脱獄を実行した佐久間、大戦下から戦後へと変遷した社会の在り様、そして戦争と刑務所の係わり方。
主に三つの視点から展開していく物語。
脱獄を成し遂げた手法は彼でなければ実行できないものだし、
戦争と刑務所の在り方は突き詰めて考えたことがなかったのでとても興味深かった。
だけど、陰の主役は看守の皆様。
お疲れ様です!と、思わず背筋が伸びてしまった。
時代性もあるんだろうけど、ものすごく大変なお仕事だわ。
全ての人に当てはまるわけじゃのはわかってるけど、
北風と太陽方式が功を奏したことが嬉しい。
人間ってそういうものだと思いたい。
黒部に行った時は『高熱隧道』を。(黒部は他著者だけど『黒部の太陽』も推奨)
大和ミュージアムに行った時は『戦艦武蔵』を。
そして、網走に行こうとしている今は『破獄』を。
事前に読んで予習はバッチリ。
「傷だらけのマセラッティ」北方謙三 (光文社文庫)
転落。あるいは、暗転。
食い止めることのできなかった負の連鎖。
たとえ、巻き込まれて降りかかった火の粉だったとしても、
その連鎖を止めるつもりがなかったことが大いなる問題だ。
とても楽しく読んでいた前半に反して、
独りよがりに過ぎる後半は作品世界からスーーッと乖離しそうになってしまった。
前半の大村は好きだったんだけどなぁ。
『マセラッティ大迷惑』というタイトルでも遜色がないと思うわ。
箱入りで輝いていたマセラッティを傷だらけにしたのは貴方です。
こっそり整備しに戻った時に置いていく甲斐性があったら見直したかもね。
マシンのセッティング描写に
『頭文字D』『湾岸ミッドナイト』あたりにドハマリしていた頃の興奮再び。
わー、読み返したくなる~~~!
私が乗りたい外車は真っ赤なカマロ。
ドライバーズシートに座ってみて、技術以前に体格的に自分には運転できない車だということを悟ったので、のっけてもらえるだけでいい。
「心に雹の降りしきる」香納諒一(双葉文庫)
「この願いよ、天へと届け」
ああ、彼のその願いを叶えてほしい、と。
涙目になりながら一緒になって願ってしまった。
ロクデナシになりきれない、刑事が一人。
悪ぶっても非道を働いても、弱さと優しさと正義を捨てきれないが故の迷いと揺らぎ。
なんだかんだ、彼は被害者を放ってはおけない。
苛ついて他人を傷つけては、自分も傷ついている。
馬鹿だなぁ、と思いつつも、その在り様を受け入れてしまった。
ダメ人間な刑事は魅力的だし、
筋の通ったヤクザはカッコいいし。
何より失踪事件と殺人事件を巡るハイスピードな展開に呑み込まれる。
面白かった。
初読の作家さん。
こんなにワクワクしながら読める作家さんとの出逢いは久々。
こうなると、当然他の作品も気になるので、
追いかけてみようと思います♪
次に入手する本も決めてみました。楽しみー!
「ワークデイズ」榎田尤利 (SHY NOVELS)
王子沢のターン。
包容力があって、頼り甲斐があって、やることなすことスマートで。
ホントカッコいい。
そんな王子沢が出会ったのは、神経を張りつめて、一人で踏ん張って生きてきた榊。
人に自分を理解してもらうことを放棄した風でありながら、
根っこの部分まで捻くれてない榊の生き方はどこか痛々しいものがあったけど、
王子沢のあたたかさとやさしさに包まれてだんだんと肩の力が抜けて柔らかくなっていく様にほっとする。
マンゴーの例えは秀逸だった。
気付いたら伊万里がものすごく人間らしく(?)なってて、驚く。
みんな、素敵な恋愛してるなー。
私、王子沢がとってもカッコいいと思ってるけど、これ読みながら気付いた。
王子沢の友だちポジションにはなりたいけど、恋人ポジションに納まりたいとはちっとも思ってなかった。←聞かれてない。しかもお呼びじゃない(笑)
「オール・スマイル」榎田尤利 (SHY NOVELS)
一緒にいて二人がマイナス方向に転がっていく様はちょっと痛々しい。
相手が好きだからこそ、比較して自分の価値を下げてしまうのはなんだか苦しい。
でも、強いだけの人も、弱いだけの人もいない。
楽しいことだけが毎日続くわけでもない。逆も然り。
色々あってもそれを乗り越えて、一緒に歩んでいく。
結果、二人がちゃんと成長して、より強く想いあう。
そういう繋がりの深さは素敵だなーと思うのです。
私は王子沢が好きだけど、伊万里を選んだ吾妻。
「だから伊万里が好き」には説得力あったわ~。
紆余曲折色々あっても、結果笑っていられれば幸せだよね。
自分もどこかで煮詰まってたのかな?
なんかイロイロ考えさせられて、結果元気をもらった。
いいタイミングで読んだなーと思える作品。
「火焔樹」北方謙三 (徳間文庫)
身体を張って戦うことのできる男には、それなりの素地がある。
ただのエリート商社マンだった男にはあんなふうにナイフもランクルも扱えない。
戦える男だったが故に、満身創痍になり、友のために手にしたナイフ。
友のための熱い想いの他に、
罪悪感に打ちひしがれた過去も彼の行動を後押しした気がする。
山の中で空疎に生きていた彼に火をつけたもの。
それは、彼を取り巻く他人。
人を変えるのは、やはり人だ。
男に引き上げられるように、少年も加速度的に成長していく。
本来であれば知る必要のなかった痛みと強さを糧にした
ちょっと悲しい成長。
それでこそ、北方。
「何でこの表紙?」と読み始めて思うわけだけど、
読み続けていくと、すごいシーンを表紙に持ってきたなぁ、と、しみじみと思ってしまった。
「レイニーシーズン」榎田尤利 (SHY NOVELS)
ネガティブに起因する仮定と推測は
よりマイナスな想像しか生み出さない。
聞きたいことがあれば口にして答えを得てしまえば楽になれるかもしれない。
だけど、返ってくる答えが聞きたくない回答だったら?
それでも事実は変わらないのなら、ケリをつけたいと思うけど。
怖くて踏み出せないのも理解できる。
「好き」の気持ちがひっくり返って臆病に。
今回の話は刺さったなぁ。
とても胸が痛かった。
そして、伊万里のこと、前巻よりも好きになったよ。
個人的イメージでは伊万里は「甘え方を知らない大型犬」。
非常階段でのシーンがとても好き。
仕事をしてそれに見合う対価としてお金をもらうことは、
生半可なことではないよなぁ、と、改めて。
最近話をしたネイリストさんの職場状況もなかなか深刻そうでした。
働き続けることも実はすごいこと。
王子沢のスピンが楽しみすぎて仕方がない。
やっぱり私は王子沢イチオシ。
「Art 1 誰も知らない「名画の見方」」高階秀爾 (小学館101ビジュアル新書)
とても分かりやすくて楽しく読める絵画の入門書。
小難しい専門的な言葉をほとんど使っていないけれども、
その絵画や作家についての背景がストンと入ってくる。
絵画を見る時は自分の感覚で好きか嫌いか。
それから部屋に飾りたいか飾りたくないか。
私の場合はまずはそこから入ります。
好き!と思った作品は当然プラスイメージなわけだけど、
初見でマイナスイメージだった作品も、
そういう絵が描かれる時代背景と必要性があったのね、と今回お勉強になりました。
「これが名画だよ」でははく、
「こんなふうに見るとおもしろいよ」的な著者の視点が良かった。
この本で紹介されている画家の美術展に行くときは時は、
その部分をきっちり読み返してから鑑賞しに行こうと思います。
「ソリッド・ラヴ」榎田尤利 (SHY NOVELS)
イケメンでも頭がよくても、
対人スキルがアレだと周りは大変だよなーと思う伊万里と。
頑張り屋さんで人当たりも人付き合いも良い元気っ子、吾妻。
同期入社の二人のラヴ物語。
人とどう向き合っていいのかよくわかっていない伊万里が
子どもみたいでめんどくさいやら可愛いやら。
ヘテロだった吾妻は、青天の霹靂みたいな出来事を経て、
伊万里に対する気持ちが動いて恋に落ちていく。
この辺りの流れのうまさは榎田さんだなぁ、と思う。
伊万里の吾妻に対する恋と執着のミックスっぷりがこの先ちょっとややこしくなりそうかな?
個人的には王子沢がものっすごく好み。
仕事は手早く7割で。
王子沢のこのスタンス、大賛成だわ。
というか、私は仕事にはできることなら5割の力で臨みたい人です。
余力は極力アフターファイブに残しておきたいのよー!
なのに、年々仕事量増えていっているのは気のせいだと思っておこう。