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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「キス」一穂ミチ(ディアプラス文庫)



どうしたって噛み合わない二人の想い。
傍に在りながら決して距離を縮めようとしない
苑に対する明渡の想いが切ないなぁ、と思っていた矢先の苑の叫び。
垣間見えた苑の想いに安堵したのも束の間。
まさかの展開に驚愕と涙……ガッツリ抉られました。
言葉で語らずとも、その目線が、皮膚の緊張が、
彼らの想いを伝えてしまうことがやるせない。
そして私は細胞レベルででもいいから覚えていて欲しいと切望していたので、
時間をかけての彼らの着地点に再び安堵。
「何故?」の説明ができなくとも、溢れてくる想いがある。
人の感情って不思議で尊い。


故人がそこに込めた想いの真意は永遠にわからない。
そしてこちらから働きかけることも決してできない。
だから、この世を旅立つ人は、残された人が惑わされるようなものを残しちゃいけないんだと、
個人的には思います。
私は後から聞かされた父親の言葉に悔恨しかなく、
知人は「お前の父親は実は……」というところで息を引き取った母親の言葉に悶々としていました。
生きている彼らの物語を、まだ読めることに胸を弾ませつつ、続編に手を伸ばします。

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「重力ピエロ」伊坂幸太郎 (新潮文庫)



洒落た会話の繰り返し。
だけど、語られる内容はとてつもなく重い。
忌まわしい事件の後に生まれた春。
父も母も泉水も。
誰もが春のことを家族以外の何物でもないと思っていて、
春自身もそのことは疑っていない。
だけど、春の中にはどうしても拭えない怒りと影がある。
泉水と春の兄弟関係がとても好き。
泉水の示した落としどころが最高。
そして、二人の父の懐の広さがあたたかく沁みる。
絆の深さは血縁ではなく、過ごした時間と愛情の深さによるものだ。
とても素敵な家族像がここにある。
紙一重だけど、夏子さんもナイスサポートだった。

登録1300冊目。
キリの良いことに気付いたので、馴染のある場所がふんだんに出てくる伊坂作品を。
一つ一つの間に時間は空くものの、
小説→映画→小説の順に廻ったおかげか、
今回の再読にあたって映画のイメージが大きすぎたのがちょっと残念。
純粋に伊坂さんの小説世界だけに浸りたかった。
まぁ、それだけ映画の印象も悪くなかったってことなんだけど。
地元名物のカスタード菓子。私も好きー!

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「代償」伊岡瞬 (角川文庫)



理解の範疇の外にある悪意に晒された時、
一体どうすればいいのか。
身を守る術、もしくは戦うツールを身に着けておくことって
大事だよなぁ、とは思うけど、じゃあ、何を?となる。
そもそもが謂れのない悪意だから、気づいたときには逃げ場がなくなってしまう。
悪意の連鎖を断ち切るためには
たった一人でも味方がいることって、とてつもなく大事。
一人きりだったらその悪意に呑み込まれ、沈んでしまっただろう。
犯罪を犯すのに年齢って関係ないんだなぁ、と
納得できてしまうところが怖い。
話し合えば理解できる。
諭せばわかってもらえる。
世の中にはそんな相手ばかりではない、と警戒して構えることが自己防衛の一歩?
それはそれで寂しいね。

馳星周の『虚の王』
櫛木李宇の『死刑に至る病』
そして『凶悪―ある死刑囚の告発』
あたりを想起させられる。
「達也」も含めた上で考えると、一番気持ち悪いのはやっぱり「先生」。
絶対に近づいてはいけないのは「栄司」。
「榛村」には気付いたら丸め込まれてる気がする。←ダメじゃんww

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「コーヒーの絵本」



肩肘の張っていない、まったりとしたゆるさがとても好印象なコーヒーの指南書入門編。
……と言いつつ、美味しいコーヒーをいれる目的なら、
これ一冊で十分じゃない?と思えてしまう網羅具合。
気楽に美味しいコーヒーがいれられるんだなぁ、と、こちらの肩の力も抜けます。
味は豆の種類ではなく、豆の挽き方、お湯の温度、落とし方等によって左右される。
つまり、すべてが自分の手腕如何かと思えば、なんだか楽しくなってくる。
基本的にはホットのブラック一辺倒ではありますが、
カフェオレやアイスコーヒーにもチャレンジしたい気持ちがムクムク湧いての読了。


我が家でコーヒーをいれる際に使っている道具は必要な物を網羅していました。
とりあえずペーパードリップで自分でいれたい派ではありますが、
最近手動のミルで豆を挽くのがめんどくさくなってきたので、
電動ミルを購入しようかと。
あったくなったら手で挽く気にもなるかな?←どうだろう?(笑)


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「神さまに言っとけ」榎田尤利 (SHY NOVELS)



花屋にヤクザに天使。
命の炎が消えかかった男が、その命をかけて神から課された試練に挑む。
これ、どんなふうに着地するの?と首を傾げながら読みはじめ、
結果的には大納得のエンディング。
この辺のまとめ方はさすが榎田さん。
愛をせせら笑っていた男が愛に涙するまでに至った心境の変化と、
愛を知らず、孤独に生きてきた彼がぬくもりに包まれる様がとても良かった。
大切な人の為に咄嗟になしてしまう行為は損得なんかでは計れない。
だからこそ、尊い。
本能が知っている。ただ、求めている。
ラスト、一緒になって涙ぐんでしまったわ。

内容はまったく関知しないまま未読の榎田さんの作品を適当に引き抜いて読み始めたら
予想以上に良くて、お得な気分になれた一冊。
荒んだ気持ちが吹っ飛ぶ気がする。(荒んでるときに読んだわけじゃないけど・笑)

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「十角館の殺人 <新装改訂版>」(綾辻行人) (講談社文庫)



引き金になったのは一人の学生の死。
ひとり。そしてまたひとり。
孤島でジワジワと殺されていく学生たち。
彼らの個性がとても魅力的で惹きつけられる半面、
犯人の動機にまったく共感できないので、やるせなさしかない。
挙句は「審判」?何自分に都合の良いこと言ってるのよ?と、
揺さぶってやりたい思いがチラリと。
完全犯罪を目論んでくれた方がまだ納得できた気がするけど、
それだと逆に犯人の動機がブレるのか。
そのモヤッと感も含めて作品としての完成度の高さは文句なし。
頁を捲ったあの一行のインパクトは、何度読んでもガツンとくる。

私の読書記録によると、初読は1995年。
うん。記憶も薄れてなくなってるから、色々新鮮に読めるわ(笑)。
興味深いのは同じ時期に読んだ『占星術殺人事件』の感想で金田一はじめに対して憤っていること。
そっちでネタバレあったのかな?……という気もするんだけど、謎(笑)
以前は色々つまんで読んでたけど、最近ではミステリーはめっきり読まなくなったなぁ。

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「逆説の日本史6 中世神風編」井沢元彦(小学館文庫)



鎌倉新仏教に関する記述がとても面白かった。
基礎知識が薄い分、読むのに時間がかかったけど、
釈迦の仏教と現代日本で認知されている仏教との違いが
分かりやすく説明されているので内容がスッと入ってくる。
仏教を日本独自のものとして発展させた日本人のフレキシブルさが好き。
そもそもが八百万の神の国であり、言霊の国であるんだなぁ、と改めて思う反面、
「空想的平和主義」に危機感を抱いてみる。
そして記述は鎌倉時代を経て南北朝へ。
過去の出来事が現代にまで脈々と影響を与え続けるのも日本独特なのかな?
ものすごい読み応えのあった一冊。


そのうち北方の『岳飛伝』を読む気満々だったわけだけど、
彼の最期がどどーん、と記載されてて、ええ~~!ネタバレ~~!となってみました。
北方はそこのところをどんなふうに書いてるんだろう?興味津々。
一度見ているからこそ、「え、そうだったんだ!」という気づきがある。
薬師寺の三尊像は本書の内容を踏まえてもう一度見に行きたい。

■行った場所:薬師寺(三尊像は再見必須)・永平寺・佐渡■行きたい場所:四天王寺・千早城(大阪)湊川神社(神戸)

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「サクラ咲ク」夜光花 (リンクスロマンス)



中学の先輩だった櫻木に、15年近くも想いを抱き続けた怜士。
だけど、好きになった相手が同じように自分を想ってくれるとは限らない。
誰に対しても心が動くことのなかった櫻木は、
そのことををきちんと伝えた上で怜士との距離を縮め、
取引を持ちかけられて怜士を抱いた。
その先を勝手に期待してしまった怜士の気持ちもわからなくないけど、
手の内を全部晒した櫻木のことは責めるのは筋が違う。
どうなることかと思ったけど、
「恋が分からなかった男が、好きだって言ってるんだ」
この言葉にすべてが集約されている気がして。
なんかもう、胸が熱くなった。

導入のインパクト。
事件の謎解き。
櫻木と怜士の気持ちの変化。
前作の大輝・秦野・塚本もうまく絡んで、最初から最後までグイグイ読まされました。

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「ロマの血脈(下)」ジェームズ・ロリンズ (竹書房文庫)



孤独も、恐怖も、哀しみも。
その小さな身体で受け止めて、友だちを……いや、多くの人々を救うために
戦った彼の姿に涙しかない。
破滅へと向かうこの世界を救うために何を成すべきなのか。
自分たちに何ができるのか。
子どもたちがそれを知り、行動に移してしまったことがただ哀しい。
とても哀しい。
事の発端が選民意識丸出しの大人の身勝手さってどうなのよ。
アメリカ、インド、そしてウクライナ。
各所で戦っていたシグマのメンバーたちも、彼に誘われるようにウクライナへと終結する。
脅威が去った後にはその犠牲の痛ましさに嗚咽。
大きな打撃を被った組織の立て直しと、
グレイの身に降りかかる不穏な予言が気になりつつ次巻へ。

今回はイラストもとても重要な意味をもつわけだけど、ラスト一枚。
小説という文字を読む媒介に置いて、イラストの視覚的効果がここまである作品には
なかなか出会えない。と思う。

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「忘れないでいてくれ」夜光花(リンクスロマンス)



殺害された両親の復讐を誓って生きてきた清涼と、
父親から受けた虐待の記憶を抱えて生きてきた秦野。
苦しんでもがきながらの人生を歩んできた二人救済の物語。
「結局は自分なんだ」というラストに零れた秦野の台詞が
ものすごく刺さった。
そうだよなぁ、と、そう在りたい、と、両方の意味で。
泥臭くぶつかり合った二人だからこそ、築くことのできた関係。
本音と弱さを晒せる存在がそこに在ることはとても心強い。
朝南さんのイラストのおかげでスパダリか!?と思った秦野が
実はそうじゃなかったところが個人的にギャップ萌え。
終り方がとても良かった。

謎だらけで強烈な印象を醸し出す清涼の友人、
塚本がとってもとっても気になった。
この人はどんな恋愛をするんだろう?と。
スピンがなさそうなのは残念だけど、別の方のスピンが控えているので、
そちらを楽しみに♪

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