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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子(ハヤカワ文庫JA)



ああ、どうしてこんなことに?
声にならない悲鳴を呑み込んで、いったん本を閉じてしまった。
だけど、見届けなければならない。
その真相を。
彼の願った通り、彼はその場所を目指した。
見えない糸に手繰り寄せられるように。
あまりにも見事な誘導。
誰も彼もがその場所を目指した。
唯一の誤算は、彼自身がそこにいなかったこと。
それが、どうしようもなく哀しい。
綴られる彼自身の過去。
たくさんの愛情を注がれて育った彼には、決定的なものが欠けていた。
多分それが、悲劇の要因。
だけどそれは、彼自身の咎ではない。
だからこそ、余計にやるせない。
ストイック過ぎた彼が、せめて微笑む日が来ればいいと。
願わずにはいられない読後。

forget-me-not。
この言葉は、今でも私の胸に刺さる。
若くして亡くなった彼の歌声と重なるから。
あまりにもお気楽な未来を想像(妄想?)していただけに
衝撃が大きすぎて大変でした。
でも、読めて良かったと、心から思える作品です。



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「タンデム~狂犬と野獣~」沙野風結子 (ラヴァーズ文庫)



やくざに公安に新興宗教にテロ。
素材を見事に組み上げた軸のしっかりした作品。
加えて、漢前な受は大好物。
とても面白かった。
「なんのための公安だっ」と叫ぶ靫と一緒に警察になにやってんの!?と憤りを感じ、
最低最悪な肉親の仕打に、教団主である櫟の主張が完全に悪だと言いきれなくなってしまう。
DVも虐待もいけない。
負の連鎖は何も生まない。
「求めていない人には求めさせられない」
そう。
心の弱い部分に漬け込み、命まで奪ってしまう宗教は野放しにされてはいけない。
アクションとエロスが程よく噛み合っての展開は大満足でした。
とはいえ、真の解決は次巻以降へ持ち越し。
まだまだ楽しませていただけるということで……張りきって読ませていただきます。

読後に速攻でラブ・コレをポチッたのはお約束。
この二人の物語が読めるなら、迷いません!←こうして増える蔵書。










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「死にゆく者への祈り」ジャック・ヒギンズ(ハヤカワ文庫NV)



もしも彼らと違った出逢い方をしていたら?
愚問なのはよくわかっている。
そんなことは私の感傷。
だけど、あんなことでもなければ出逢わなかったであろう人々と
接点を持つことによって、
彼の魂は少しは安らぐことができたのだと。
そう思うことは許されるだろう。
自らを「歩く死骸にすぎない」と言い切った男が、
他人のために燃やした命。
だが、そもそもの発端を考えれば、それは美談にはならない。
彼は自らの行為の決着を、自らの手で付けたに過ぎないのだから。
だが、彼の生き様は、最後に彼に係った者たちの心に永遠に生きるだろう。
彼の示したやさしさと贖罪の想いと共に。

「あなたは誰?誰なの?」このアンナの問いに対するファロンの返答。
「どんな男でも、そんなふうに訊かれては答えようがない」
これがものっすごくかっこいい。
この表紙は飾っておきたいくらいお気に入り。
勿論、作品自体もとても面白かった。



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「色悪作家と校正者の不貞」菅野彰(ディアプラス文庫)



祖父の死によって心に深い傷を負った大吾と正祐。
どれだけ悼んでも、死者は決して還らない。
その死を乗り越えた大吾と、4年経った今でも通夜のなかにいる正祐。
作家と校正者、作者と読者、そして想いを向けあう者同士として。
様々な向き合い方をしながら展開されていく二人の会話がとても楽しい
……と思って読んでいても、菅野さんの言葉はグサリと刺さり、切なくて泣いてしまう。
語られる東北の情景は何処も大好きな場所で、やさしく目に浮かぶ。
日本酒も馴染みのあるものが多くて嬉しくなる。
これは嬉しいシリーズ化。
アラサー男子の幼い恋がどう羽化していくのか。
楽しみー!

菅野さんが描く何かが欠けた人たちの想いに共鳴しちゃうから、毎回毎回抉られる。
でも、そこがいい。
20年以上読み続けちゃうくらい、彼女の感性が好き。

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「開かせていただき光栄です」皆川博子 (ハヤカワ文庫 JA)



ねぇ、キミは誰?
どうしてそんな姿に?
遺体は何も語らない。
だから生者が事実を検証し、隠された真実を推測する。
18世紀のロンドン。
ヒラヒラと揺らめく彼らの幻惑的な姿に翻弄されながら、
盲目の判事と共に混迷のなかに迷い混んでいく。
めくるめく浮遊感。
示される事実と、少しばかりの沈黙。
そして、嘘。
けれどもすべては真実へと導くため。
折り重なり、絡みあい、縺れあった糸がほどけていく様は圧巻。
人が人を裁くとはどういうことなのか。
真摯に受け止めなければならない。
そして心に残された喪失感。彼らはどこへ?
何故か、エドガーとアランの姿が重なった。


チャーリー(犬)の存在がひたすら可愛かった。
続編は手元にあるけど、彼らのその後に思いを巡らせる時間が少しだけ欲しいかな?
という気持ちにさせられたのよね。
皆川女史の描き出すとても素敵な世界。どっぷり浸らせていただき、光栄です(笑)。

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「フェア・プレイ」ジョシュ・ラニヨン(モノクローム・ロマンス文庫)



手放しで絶賛。
前作で再び恋人としてのスタートを切ったふたり。
時折ぶつかり合いながらも、絆を深めていくタッカーとエリオットの関係が
とてもとても良かった。
考え方の違い、感じ方の違い。
自らの信じる正義。生じる齟齬。苛立ち。
すべてをさらけ出してぶつけ合い、尚溢れんばかりに込み上げてくる愛情。
それを自覚するシーンが震えるくらい感動的。
巻き込まれた事件の中で明らかになっていくエリオットの父・ローランドのルーツ。
そこから透ける60年代のアメリカがリアルに伝わってきた。この構成はうまいと思う。
そしてラスト。
この親子の対話も感動的。
大満足の一冊。

『フェア・ゲーム』続刊。
タッカーがホントにカッコよくってカッコよくって。くらくらしました。
前巻から引きずっている謎に加えて新たな脅威(変態?)がチラリと。
これは続きが気になります!

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「フェア・ゲーム」ジョシュ・ラニヨン(モノクローム・ロマンス文庫)



次巻を読む前に再読。
事件と恋愛のバランスが素晴らしく、最後まで一気に読ませるおもしろさ。
やっぱり好きだわ。
一度は破綻したタッカーとエリオットの関係。
とある事件をきっかけに再会を果たし、その関係を修復していく様子は是非読んで!
と言いたくなるリアルさで胸に迫ってくる。
30代男子の苦悩と色気とカッコ良さが半端ないのです。
「くそっ、お前を、どれだけ、待ってたか」
この台詞の「どれだけ、待ってたか」の部分で私がきゅんきゅんしていたら、
解説でしをんさんは「くそっ」の部分でにやにやしてました。(笑)ニアミス?

モノクローム・ロマンス文庫は今のところどれを読んでも外れなし。
ほとんど買いそろえているので(積んでるけど・笑)、ここはコンプリ目指します♪

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「血と愛」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)



究極の合わせ鏡。
誰よりも理解しあいながら、相対的な世界に属する二人。
相容れないことを理解した上での尊敬と敬愛。
心に秘めた二人の想いは決して言の葉に乗せられることはないと思っていたけれども。
ナルチスの告白に泣いてしまった。
あまりにも尊い友情、そして愛の形。
解き放たれた小鳥は流浪の旅を経て、豊潤な感性の泉を携えて戻ってきた。
「愛するというのは彼にとっては自然な状態ではなく、奇跡だったのだから」
愛を享受できた彼は幸せだった。
そして、帰る場所を得、芸術を生み出した彼も幸せだったに違いない。
この作品に出会えた私も幸せ。

奔放な経験による感性。
清貧と思索による知性。
いや、女ってそんか簡単じゃないよ?と、ちょっと思いつつ(笑)。
年の瀬にとても素晴らしい作品を読みました。

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「34丁目の奇跡」ヴァレンタイン・デイヴィス(あすなろ書房)



あたたかくて優しい気持ちを抱きしめて、
汗だくのトナカイを愛しく思いながら、ちょっとした奇跡に心を躍らせる。
サンタの存在を証明することはできないけれども、
存在しないことも証明できない。
だったら、信じていたい。
少なくとも、わくわくした気持ちや豊かな想像力を育むことができるから。
現実的に生活を見据えることは大事だけど、
だからこそ、心のゆとりというか遊び心はいつでも抱えていたい。
イマジネーションは自由。
どこまでも羽ばたいていける。
幸せな想いは笑顔の源。明日への活力。
メリークリスマス♪


奇しくも『評決のとき』を読んだあとだったので、
アメリカの裁判の様子がイメージしやすかった。
これは映像で見てみたいなぁ。
私もサンタに手紙を書いたことがあります。
手作りケーキも作りました。
朝起きて、空になったお皿を見て、
ちゃんと食べてくれた!と大喜びした無邪気な子供時代。

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「空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― 」(新潮文庫)



吐き出された想いは「言葉」という形を持つことで、
誰かの心に届く。
或は、自らの心を解き放つ。
奈良少年刑務所の受刑者たちが「社会性涵養プログラム」の授業の中で綴った詩集。
彼らがどういう経緯でそこにいるのかは、ここでは論じられることはない。
今、ここにいる彼らによって紡がれた、まっすぐな言葉に耳を傾ける。
胸の内を綴った飾らない言葉がストンと響く。
とりわけ、母親に対する情愛の深さと、悔恨、
そして、愛に渇望したあまりにも寂しい訴えに、抉られる。
なかなか伝えることのない「ありがとう」の言葉を
心の中で母につぶやいて、本を閉じました。

明治41年(1908 年)に竣工した奈良少年刑務所。
今年の3月に閉鎖されたんですね。
改装後、2020年に監獄ホテルとして展開されるとのこと。
建物写真がとても興味深いものだったので、行ってみたいなぁ。





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