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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ダナエ」藤原伊織(文春文庫)



三篇からなる短編集から香るのは、ほろ苦さに包まれた甘いやさしさ。
描かれるのは、誰かのために行動する人間の諦観と、凛とした決意。
それは「犠牲」ではない。彼らの他者に対する「想い」の現れだ。
藤原さんの描く世界観が本当に好き。
感想は読む時期、年齢、心理状況によって変わってくる。
逆に作者が紡ぐ物語も、その時に生きるからこそ描き得るものだとするならば。
小池真理子女史のあとがきを読んでから「まぼろしの虹」を読みかえしたら、涙が滲んだ。
彼の死を静かに突きつけられたあとがきには、じわじわと胸にくるものがありました。



内容(「BOOK」データベースより)

世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。

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「ダックスフントのワープ」藤原伊織(文春文庫)



【人はギリギリのところまでいったら、
 いつだって独りぽっちでなにかを決めなきゃいけないときがくるんだ】

四篇からなる短編集。
根底に漂う雰囲気は、どれもクールで知的でどこか悲劇的。
そして主人公たちは、それぞれ世の中を斜めに見るような孤独を抱えている。
どの話も読み終わったところで立ち止まり、胸の中に残ったチクリとした痛みを顧みて、
物語を反芻する。
それはひどく心地良い瞬間だ。
余韻に浸っていたいと思う読後感は、短編でも健在。
一番印象的だったのは「ダックスフントのワープ」
物語世界と現実世界が崩壊する瞬間は、心に冷水を浴びせられたような感覚を味わうことになる。
それでも、藤原伊織の描く物語だよなぁ、と、納得してしまうのだ。

内容(「BOOK」データベースより)

大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。

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「この光と闇」服部まゆみ(角川文庫)



【闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!】

美しい言葉で綴られる、かくも美しく幻想的な物語。
構築された緻密で華麗な世界に魅せられ、甘く悩ましい香気にうっとりと目を細める。
これは、光に満ち溢れた世界で父王の愛情を一身に浴び、
花の香りと芸術と物語世界に生きる王女の物語。
何が虚構で何が真実なのかを決めるのは彼ら。
彼ら自身が想い、見て感じたことがすべて。
「言葉」による色相の描写。
「視覚」による世界の描写。
脳裏に浮かぶイメージの華麗さと鮮烈さにただひたすら陶酔し、読後は溜息が零れました。
文字通り闇と光の世界の物語。
誘われて本当によかった。


内容紹介

森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎える。そこで目にした驚愕の真実とは……。耽美と幻想に彩られた美しき謎解き!

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「僕はすべてを知っている 2」高久尚子(キャラコミックス)



クリスマスデートよりも相手の体調を気遣ったり、
女子にエレベーターをエスコートしてあげたり、バレンタインに無頓着だったり。
歩の男子としてのナチュラルなかっこよさと可愛さにくらくらしつつ、
加賀の説教にいちいち納得。
コンプレックスからEDになってしまうのも、千尋への想いの現れ。
千尋だけでも、と言われて、千尋が馬鹿なこと言うな!と、歩を叱るシーンも好き。
千尋が歩をものすごく大切にしているのが伝わってくる。
原因がはっきりすれば、病状も回復するわけで……
そこから小冊子への流れが甘々で可愛い。
幸せのおすそわけ、ありがとう!という気分になりました☆

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「ひまわりの祝祭」藤原伊織(講談社文庫)



寂寞や感嘆の入り混じった何とも形容のしがたいこの読後感に、いつまでも浸っていたい。
そんな余韻を残してくれるハードボイルド。
登場人物たち会話がとても軽妙で酒脱。
そしてタイトルの妙。
昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
変わらない時間のループの中に身を置いていた秋山の周囲がある夜をきっかけに騒がしくなる。
一枚の絵画を巡って多くの人間が水面下で画策し、
係わりを持つつもりのなかった秋山を巻き込んでの騒動となっていく。
その過程で詳らかになる人間模様。
英子の件に関してはやりきれない想いしかない。
秋山や原田の頭のキレ具合はかなり小気味よかった。


内容(「BOOK」データベースより)

自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。

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「僕はすべてを知っている」高久尚子(キャラコミックス)



あらすじを見てどんな話かとおもいきや……
可愛さとおもしろさとかっこよさの混在するお話で、ものすごくよかった!
歩に対する千尋のアプローチが紳士的だったり必死だったりなのも可愛いし、
だんだんと千尋に惹かれていく歩の葛藤もひたすら可愛い。
歩に「仕事を尊敬している」と言われて千尋がジンとするシーンすごく好き。
やりがいを持って携わっている仕事を好きな人に認めてもらえるって嬉しいよね。
加賀のその後もすっごく気になる♪
ここまでチ○コ発言のある話ってあんまり出会ったことがないけど、
全体的にほんわりしたやわらかい印象のお話で、幸せな気持ちになりました。

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「名残り火」藤原伊織(文春文庫)



何故彼は、そして彼女は死ななければならなかったのか。
彼らの穏やかな日常を奪った犯人の
あまりにも身勝手で理不尽な動機を思えば思うほど、ただひたすらに口惜しい。
心を許した友のために犯人を探し出していく堀江の手法は
決して褒められたものではないだろうけれども、私は嫌いではない。
最初に法を犯したのは犯人たちの方なのだから。
事実を知った奈緒子のけじめのつけ方はあまりにも壮絶で悲壮すぎた。
危うさを孕んだ堀江のことをきちんと見てくれている人たちがいる。
そんな事実がなんとなく嬉しくなった本作でした。

今回登場の三上社長がかなり癒しになったわ。
素敵なおじ様です!かっこいい~~!





内容(「BOOK」データベースより)

飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、夜の街中で集団暴行を受け死んだ。柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、事件そのものに疑問を覚える。これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか―。著者最後の長篇。

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「花扇」剛しいら(白泉社)



初助師匠の純愛物語。
『座布団』でつかみどころのなかった初助の人となりが胸に迫ります。
生涯をかけて想いを貫くことの幸いと切なさがジワリと滲み、
人が人を想うときの情の深さを見事に感じさせてくれた話でした。
初助と寺田。そして要と寒也。
「一人で笑ろうて暮らすより、二人涙で暮らしたい」
その言葉通り、たとえ目の前にどんな辛い現実があろうとも、
生涯想いを寄せ続ける相手と出会えた彼らは幸せだと思います。
全編を通して漂う雰囲気が本当に粋で素敵。
初助師匠の一途さも良かったし、寺田さんがかっこよすぎました。


内容(「BOOK」データベースより)

何の未練もなく男を使い捨てた師匠・山九亭初助。落語の道一筋に孤独な生涯を送ったかに見えたその裏には、真を貫いた驚きの愛情物語が。

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「座布団」剛しいら(白泉社)



芸に対してはどこまでも誇り高く真摯に向き合い、
芸の為で在るが故に、人に対しては冷酷な鬼にもなれる。
初助師匠のその生き様に魅入られ、虜になった数多の男たちの姿が、
師匠の肩越しに見え隠れするところがたまらなく艶めかしい。
芸に生きた初助はどこまでも孤高の存在だった。
浮世離れしたその姿と対照的な、要と寒也の日常のやりとりにほっとさせられる。
要もまた、噺家としての自分に初助とはまた違った意味合いでの誇りを持っている。
寒也と支えあいながら、その道を歩き続けていくのだろう。
粋に生きる。
この形容がこんなにも似合う登場人物たちは、そうざらにはいない。

内容(「BOOK」データベースより)

師匠である落語家・山九亭初助の死を知った山九亭感謝。その胸のうちに、厳しく誇り高い芸人だった師匠への想いが去来する…。

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「シリウスの道 下」藤原伊織(文春文庫)



【満足に自己満足以外の満足があるんですか】

最初に浮かぶのは、世の中ってそういうものだよね、という諦観。
決して爽快な読後じゃないけど、それも悪くない。
それは多分、皆が必死で頑張ったから。そして間違ったことをしていないから。
浅井の手助けを得て脅迫の件は片がつき、社内の害悪も排除することができた。
残るプレゼンに関しては、戸塚の成長が著しくて、
頑張っている姿に心からエールを送りたくなる。
最後の馬鹿社長に対して毅然と答えた彼を責める者は誰もいない。
それでもプレゼンは通らない。
そのことに納得していまう程度には、私も年齢と経験を重ねたってことなんだろなぁ。
今夜は静かにお酒が飲みたい気分です。

内容(「BOOK」データベースより)

新規クライアントの広告コンペに向け、辰村や戸塚らは全力を傾注する。そんな中、3通目の脅迫状が明子の夫の許に届いた。そして勝哉らしき人物が上野近辺にいることを突き止めた辰村は、ついに行動を起こす!広告業界の熾烈な競争と、男たちの矜持を描くビジネス・ハードボイルドの結末は。

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