きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「凍りのくじら」辻村深月(講談社文庫)
【ねぇ、本当に大事なものがなくなって後悔して、どうしようもなくなって。
そうなった時、私はそれに耐えられるかなぁ?】
まさにSF。Sukoshi Fusigiな物語。
大人になる直前の、大人になりきれないこどもたち。
少し不完全な彼らの少し不安定な心が、彼らの感性や言葉で紡がれた物語。
彼らと同じような年代の子どもたちの誰もが、
居場所やよりどころを求める気持ちを抱えていて、
今の自分の居場所に違和感を感じている。
それでも、いつか気づくのだと思う。
いま自分のいる場所こそが、がかけがえのない場所だということに。
生きている居場所を与える光が誰のもとにも届くことを願います。
内容(「BOOK」データベースより)
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。
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「三日間の幸福」三秋縋(メディアワークス文庫)
【「あなた、永遠になりたくないの?」
「俺がいない世界で俺が永遠になっても、何も嬉しくありませんよ」】
寿命を売らずに気付けたら或は手に入れられたら良かったのになぁ……という出会いと幸福の物語。
それを言ってしまうと物語の根本が成り立たなくなっちゃうわけだけど。
でもね、どうせなら30日とか3日とか。期限切られずに笑っていたいじゃん!!
と、思うわけですよ。
とはいえ。
前半部、思わず眉をひそめてしまったのは、痛いところを抉られたから。
思い当たる節がないわけじゃないから。
うん。
人生って山あり谷ありだよね。
後半部は目に見えないはずのミヤギの存在が周囲に受けいられていく様子が微笑ましくてよかった。
そして語られることのない彼らの三日間。
彼らにとっては間違いなく価値のある幸せな三日間だったんだろうけど。
この世界に生まれ落ちた人として、やるせないものを感じずにはいられない。
内容(「BOOK」データベースより)
どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。
「真夜中の相棒」テリー・ホワイト(文春文庫)
【物事はなるようにしかならないのだから、
ただ一つなすべきことは、そのなかで最善を尽くすことだ】
それは、とても哀しい依存と共存。そして執着。
ボタンを一つ、掛け違えた男たちの物語の根底にあるのは、果てしない淋しさと孤独。
人間は独りで生きていくことはできないんだなぁ、と、切実に思いました。
ベトナム帰りのマックとジョニーが殺し屋を生業とせざるを得ない泥沼にはまっていく第一部。
そんな彼らに相棒を殺されたサイモンが、全てを捨てて執拗に二人を追い続ける第二部。
そして、彼らの人生が交錯する第三部。
一度手を差し伸べてしまったがために、ジョニーを見はなすことができなくなってしまったマック。
マックと共にいるためだけに殺人を繰り返すジョニー。
そんなジョニーを追い続け、いつしか距離感を見失ってしまったサイモン。
エピローグに漂う底のない孤独感が切ない。
内容(「BOOK」データベースより)
アイスクリームを愛する青年ジョニーは殺し屋だ。依頼は相棒のマックが持ってくる。一人では生きられないジョニーをマックが苛酷な世界から守り、ジョニーが殺しで金を稼いで、二人は都会の底で生きてきた。相棒を殺された刑事が彼らを追いつめはじめるまでは。男たちの絆と破滅を暗く美しく描いた幻の名作、30年ぶりの復活!
「フライ,ダディ,フライ 」金城一紀(角川文庫)
【何度でも転んで重力を知り尽くして、いつか飼い馴らしてやればいい。
そしたら、空だって飛べるようになるよ】
読み終わっちゃうのがもったいないなぁ、と。
もう少し彼らと一緒にいたかったなぁ、と。
読了するのが惜しくなるような本でした。
うん。
読んでいてとっても楽しかった。
暴力によって傷つけられた娘さんの仇を取るために、立ち上がる47歳の鈴木さん。
事件は痛ましいし、あってはならないことだけれども。
その事件故に自分の無力を痛感した鈴木さんの
身体を鍛え、メンタルを鍛え、戦い方を伝授し、
高校総体ボクシング三連覇の石原と戦えるだけのをファイターに仕立て上げた
高校生たちとの気持ちの交流を描いた物語。
トレーニングメニューをこなしながら力を蓄え、
23%の体脂肪率を12%まで絞っていった鈴木さんを見ていると、
人間、大切な人のためならできないことはないんだなぁ、と思えてしまう。
奥さんと娘さんに対してナイスアプローチ&フォローをした高校生たちを褒め称えたい。
内容(「BOOK」データベースより)
鈴木一、47歳。いたって平凡なサラリーマン。ただし家族を守るためならスーパーマンになれるはずだった。そう信じていた。あの日が訪れるまでは―。一人娘を不良高校生に傷つけられ、刃物を手に復讐に向かった先で鈴木さんが出会ったのは―ザ・ゾンビーズの面々だった!脆くも崩れてしまった世界の中ではたして鈴木さんは大切なものを取り戻せるのか。ひと夏の冒険譚がいま始まりを告げる。
「言葉の風景」荒井和生(青菁社)
春夏秋冬。
四季折々を表す多彩な言葉が、本書では紹介されている。
移ろいゆく季節のその一瞬の情景を言い表す言葉はとても繊細で情緒豊かだ。
日本語とは、かくも美しいものなのだと、改めて思い知らされる。
自在に使いこなすことはできなくとも、せめてその言葉の存在を知っておきたい。
そして、それらの言葉の意味するところや成り立ちを彷彿とさせるような、
美しい自然写真の数々に見入ってしまう。
気忙しい日常に流されるときに紐解いたならば、ほっと息がつけて気持ちが癒されるような、
そんな本だと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
本書は四季にまつわる、微妙な季節感や雰囲気を伝えるさまざまな言葉を選んで、写真によるイメージの散策を試みてみました。
「子どもたちは夜と遊ぶ 上・下」辻村深月(講談社文庫)
【君が生きているというそれだけで、
人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が
この世の中のどこかにいるんだよ】
初読の時のような緊迫感はないけれども。
やわらかな部分に尖った爪を立てられたようなキリキリとした思いに息が詰まりそうになる。
それでも、色々な過去を抱えた彼らに寄り添いたくて、頁をめくる手が止まらない。
そして、彼等の痛みを自分のことのように感じたいのか、
彼らの痛みを取り除いてあげたいのか、わからなくなる。
この物語の結末に希望や救いを見出すことは、
理不尽に命を奪われた人たちのことを思えば、間違っているのかもしれない。
けれども、世間を憎み、絶望し、自らを消してしまうことを望んだ浅葱が
生きることに向き合うことができたことに安堵する自分がいる。
「君が愛したそいつは、決して不幸じゃなかった」
とてつもない犠牲を払っての言葉ではあるけれども。
月子がいて、恭司がいて、狐塚がいて。
自分は独りきりではないのだと、浅葱が気づくことができてよかったと思ってしまう。
この愛すべき息苦しい世界の中で。
すべての子どもたちに幸あれ。
「優しいプライド」砂原糖子(幻冬ルチル文庫)
【約束はいらない、明日もいらない。
嘘でもいいから、ただ傍にいてほしい】
事故の被害者と加害者という立場での偶然の再開、そして思いがけない同居。
距離感を図りつつ、揺れる自分の気持ちと向き合い、
互いの気持ちを恐る恐る確かめあいながら、想いを寄り添わせていく様子が微笑ましくてよかった。
この本のセックス描写(身も蓋もない言い方だけど>笑)がすごく好き。
慣れていない保高のぎこちないながらも丁寧で慈しみに溢れた愛撫。
保高を身体で繋ぎとめようとしたした志上の痛々しいまでの必死さ。
行為に慣れても自分本位に動かず、志上を思いやって快楽に導く保高のやさしさ。
いたるところから、お互いに向ける愛情がひしひしと伝わってくる。
「キスしてくれないなら会わない」
これはものすごーい口説き文句だと思いました!
「ユリゴコロ」沼田まほかる(双葉文庫)
【弟がこれからも弟であり続けるように、
この人もまた、僕の生涯を通じてもうひとりの母であり続けるだろう】
家族の在り方を書いた物語。
そして熱烈な愛の物語……だと思う。
実際は従兄弟である兄弟が、お互いを兄であり、弟であると認めているという
心情が描かれているシーンが好きだったなぁ…
「家族」という括りに対する自論は、血の繋がりより共に過ごした時間の記憶と関係性。
この兄弟の在り方と、命の期限が差し迫った父親と、施設にいる祖母との係わり方が
なんだか好きだった。
殺人の衝動に取りつかれた女でも、愛し続けた父親。
「好き」という想いは理屈ではなく衝動。
だから、彼女と最期を一緒に添い遂げられるのは、彼にとってはこの上なく幸せな末路なのだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!
「植物図鑑」有川浩(幻冬舎文庫)
【そんなことは夢だと大人ぶった誰に諭されても笑われてもいい。
それでも、ずっと一緒にいたかった。】
タンポポやツクシを摘んで。ヨモギをちぎって。山菜を探して、ミントを育てて。
意外に自分、狩りをして食していたことに気づかされた本でした。
料理をしてくれたのは優しい彼氏ではなく、祖母や母でしたが(笑)
いまでは山菜以外は口にしなくなったそれぞれの味がなんだか優しく思い出されたなぁ…
さやかとイツキが想いを通わせ会うシーンがすごく好き。
本編よりもカーテンコールの物語が印象的だったのは、
さやかとイツキの想いが刺さったからかな?
どんな事情があっても、黙って姿を消されるのは辛い。
それでも、イツキが戻ってくるまで待ち続けたさやかの想いが実ったことがうれしかったわ。
内容(「BOOK」データベースより)
お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。咬みません。躾のできたよい子です―。思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所で「狩り」する風変わりな同居生活が始まった。とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草”恋愛小説。レシピ付き。
「天神」小森陽一(集英社文庫)
【だが、どんなに凄いパイロットであっても、
それを活かす者がいなければ輝かない】
就職を決める時に自分には彼らのような憧れや必死さ、決意や覚悟。
そういった類のものが果たしてあったのだろうか?と。
なんだか考えさせられてしまう本だった。
彼らが目指すものはファイターパイロット。
ブルーインパルスの飛行を何度も見てきたけど、
みなさん、こんなふうにものすごい訓練を日々重ねてきての編隊飛行なんだなーと、
あらためてその凄さを再認識しました。
挫折を知らずに歩んできた速が壁にぶち当たった時の苦悩がいたたまれない。
でも、彼は彼を一番活かすことのできる道を見つけたんだと思う。
欲を言えば、陸と父親が和解するシーンが見たかったかな?
適材適所。
天性のパイロットである陸と、そんな彼を活かすべく要撃管制官の道を選んだ速と。
一歩先に進んだ彼らの話を読んでみたいと、思わせてくれる小説でした。
内容(「BOOK」データベースより)
絶対にファイター・パイロットになるんだ―。親子三代での戦闘機乗りを目指す航空学生出身の坂上陸と、防衛大学卒業後、国を守りたいという強い思いから航空自衛隊に入ったエリートの高岡速。立場も考え方もまるで違う二人の青年の人生が交差するとき、心揺さぶられる熱いドラマが生まれる!戦闘機に乗ることに憧れを抱き、夢に向かって突き進む若者たちを描いた壮大な“空”の物語。