きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「東の海神 西の滄海」小野不由美(新潮文庫)
国が荒めば生活が荒む。
生活が荒めば、人心も荒む。
荒廃しきった国の王として即位した尚隆。
国が平穏取り戻しつつある中、王としての在り方を雁の国の人々と共に考えさせられた。
民のいない王に何の意味がある?
かつて、民をなくした尚隆だからこそ、身を切るような思いで叫んだ言葉。
今度こそ国を守る。民を守る。
そんな思いが痛いほど伝わってくる。
反して、斡由のような輩が求めるものは、民の安寧ではなく権力欲と自己顕示欲。
他者よりも高みにあることが、そんなにも得難いことなのだろうか?
親が子を捨てずにすむ豊かな国。
尚隆がそんな国を築き上げることを知っていることが、とてもうれしい。
それにしても……「これが雁を滅ぼす王だ」
初読の時から20年。意味深ワードがずっと気になって仕方ないのですが~><
内容(「BOOK」データベースより)
延王尚隆と延麒六太が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪か―二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧に導くのか。そして、血の穢れを忌み嫌う麒麟を巻き込んた争乱の行方は。
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「風の海 迷宮の岸」小野不由美(新潮文庫)
幼いながらも自分の運命から目を背けず、その役目を果たそうとする泰麒。
麒麟として自分は何を成すべきか。成さねばならぬのか。
わからないなりに必死に理解し、努めようとする泰麒の一生懸命さが愛おしくて切ない。
蓬山では誰もがやさしいけれども、誰も彼を10歳の子どもとしては扱ってはくれない。
堪えていた母への想いが溢れ出す場面には思わず涙ぐんでしまった。
驍宗と出逢ってからの泰麒の葛藤と苦悩が胸に刺さる。
泰麒に屈託のない笑顔が戻ってきてよかった。
主人公と他者との会話で、この世界の成り立ちや仕組みが読み手側にもすんなりと入ってくる。
その手法はすごいなぁ、と思います。
景麒、延麒、泰麒。並び立つシーンが煌びやかで好き。
そして悪玉にひたる延王が大好きです!
内容紹介
幼(いとけな)き麒麟に決断の瞬間が訪れる──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす<蝕(しょく)>で蓬莱(ほうらい)(日本)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されたが、麒麟の役割を理解できずにいた。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。
「月の影 影の海 下」小野不由美(新潮文庫)
知識は己の身を守る術となり、成長の糧となる。
誰かを信じることは己の身を救うことにもなる。
楽俊との出会いは陽子にとってあらゆる意味で僥倖だった。
頑なだった心がほどけていくにつれ、
世界は彼女にとって厳しいだけのものではなくなっていく。
だが、世界を知れば知るほど、陽子に突きつけられる現実も見えてくる。
16歳の少女に課せられた覚悟と決断は、とてつもなく重い。
楽俊の態度が畏まった時は、陽子と一緒に私も悲しくなった。
王に王たる資質があるかないかを決めるのは、
王本人ではなく、施政下にある民であり、後世の語り手たちだ。
彼女のこれからに大いに期待したい。
楽俊のモフモフ感には本当に癒された(笑)
そして神頼みも運もないということを語る楽俊と陽子の対話がすごく好き。
結果を望むならそれに見合う努力をすること。
うん。肝に銘じます。
内容(「BOOK」データベースより)
「わたしは、必ず、生きて帰る」―流れ着いた巧国で、容赦なく襲い来る妖魔を相手に、戦い続ける陽子。度重なる裏切りで傷ついた心を救ったのは、“半獣”楽俊との出会いだった。陽子が故国へ戻る手掛かりを求めて、雁国の王を訪ねた二人に、過酷な運命を担う真相が明かされる。全ては、途轍もない「決断」への幕開けに過ぎなかった。
「月の影 影の海」小野不由美(新潮文庫)
ある日、そこに在るのが当たり前だと思っていた世界が、足元から崩れ去ったら?
頼れる人もないまま、勝手のわからない異世界へと放り込まれてしまったら?
問いかけに浮かぶ感情は恐怖でしかない。
異界で言葉に苦労をしなかったことが唯一の救いだろう。
だが、それも、選ばれた者にのみ与えられた特権なのだということを、彼女は知る。
途方に暮れてただ泣くだけだった世界で、何とか生きようと足掻き始める陽子。
野性味を帯びた生命力は若さ故の特権。
騙されながらも世情を学び、次第に逞しさすら感じられるようになる心理。
けれども、飢えと疲労と怪我で痛めつけられた肉体の限界はごまかすことができない。
何故こんなことになってしまったのか?
混乱の拭えないまま、次巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
「お捜し申し上げました」―女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨う陽子は、出会う者に裏切られ、異形の獣には襲われる。なぜ異邦へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。
「魔性の子」小野不由美(新潮文庫)
壮大な物語の序章。
ここではない、どこかへ。
たぶん、誰もが一度は抱いたことのある思い。
それでも、私たちは、この現実世界が自分の在る場所だということを知っている。
だから広瀬の想いが痛いくらい理解できる。
高里の存在が痛々しく、そしてそぐわなく感じるのは、
彼の在るべき場所を知っているから。
そこにいたころの彼を知っているから。
そこにいない彼を案じる人たちを知っているから。
頭を下げることを強要される彼の姿に、「やめて!」と、悲鳴をあげそうになってしまった。
20年以上前にこの本を読んだ時、まさかここまで壮大な話になるとは思ってもいなかった。
未だに続きが楽しみで仕方がない物語です。
内容(「BOOK」データベースより)
教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。彼をいじめた者は“報復”ともいえる不慮の事故に遭うので、“高里は崇る”と恐れられているのだ。広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。幼少の頃に高里が体験した“神隠し”が原因らしいのだが…。彼の周りに現れる白い手は?彼の本当の居場所は何拠なのだろうか?
「たおやかな真情」崎谷はるひ(ルチル文庫)
慈英と臣が積み重ねてきた時間がある。
その中で彼らが育んできた愛情がある。
一時的に失われた慈英の記憶が戻ったところで、以前と全く同じとは言い難い生活。
だが、それは、彼らが前に進んでいる証だと思いたい。
閉じた世界で二人きり、とていうのもありなんだろうけど、
やっぱり外にちゃんと目を向けていていられる二人であってもらいたい。
慈英の前に示された、より大きな世界。
進む道がどこであれ、自分の居場所は臣なんだと。
言い切った慈英に胸をなでおろしました。
三島も拠り所を見つけて、ちゃんと地に足がついててよかった。
それにしてもこの引き!続き、気になるじゃないですか。
内容(「BOOK」データベースより)
失った記憶を秀島慈英が無事に取り戻し、あまい日々が続くものと思っていた小山臣だったが、いまだ二人の関係はどこかぎくしゃくしたまま。そんな二人のもとを突然、年若いが独特の雰囲気をまとまった壱都を連れて三島が訪れた。新興宗教の教祖だという壱都とともに逃げてきたと語る三島は、大切に仕えていた壱都を臣にあずけ、姿を消してしまい…。
「はなやかな哀情」崎谷はるひ(ルチル文庫)
事件に巻き込まれて記憶を失った慈英。
自分のことを忘れてしまった慈英を傍近くで見守る臣の強さとがんばりに、
ただひたすら胸がしめつけられた。
二人で過ごした7年間という年月の重さ。
慈英は確かにここにいるのに。
昨日まで傍にいた彼が、いま、ここにはいない。
愛されて、愛した人がいた。
その記憶を抱いたまま、慈英を手放そうとした臣。
その距離感に追い立てられるように、慈英は自分の気持ちと向き合っていく。
記憶をなくしても、臣が好きだと。臣のことを好きになったと告げた慈英。
ラスト、慈英が記憶を取り戻すシーンの描写は素晴らしかったです。
ホント、このシリーズ好きだわ。
内容(「BOOK」データベースより)
恋人小山臣の赴任先で暮らす秀島慈英は、かつて自分を陥れた鹿間に呼び出され、東京の彼のもとを訪れた。そこで倒れている鹿間を発見、そのまま何者かに頭を殴られ昏倒してしまう。知らせを受けて病室を訪れた臣を迎えたのは、臣について一切の記憶を失った慈英だった。冷たい言葉を投げつけてくる慈英に臣は…!?大人気シリーズ全編書き下ろし。
「やすらかな夜のための寓話」崎谷はるひ(ルチル文庫)
5編の短編から成る物語。
慈英と臣の過ごした時間が、綴られている。
それぞれに濡れ場が入っているから、そのシーンだけでも相当なボリュームがあるわけだけど、
読後の印象に残るのは、そこじゃなくて、二人の感情の機微。
臣や慈英の気持ちの揺れや迷い、不安や痛み。
そういったものが流れ込んできて、胸が痛い。
でも、その痛みを補って余りある愛情に溢れていて、
結局はふたり、満たされていて、とてもほっとする。
大人の余裕でチャチャ入れする照英。
インクルージョン読んでてよかったなーと、ニヤリとしました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
刑事の小山臣は、人気画家で恋人の秀島慈英とともに赴任先の小さな町で暮らしている。ある日、慈英の従兄・照映がふたりのもとを訪れ…。慈英十三歳、照映十八歳の夏が語られる書き下ろし「ネオテニー“幼形成熟”」、商業誌未収録作「やすらかな夜のための寓話」「SWEET CANDY ICE」「MISSING LINK」「雪を蹴る小道、ぼくは君に還る」を収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
「あざやかな恋情」崎谷はるひ(ルチル文庫)
「同じ、と思える相手がそこにいるから孤独ではない」
慈英も臣も、どちらかが欠けたら自分もダメになることを知っている。
だからといって、世界が二人だけで閉じて完結するのではなく、
互いが大事だからこそ、周囲に目を向け、そこにいる人たちと良好な関係を築こうとする。
互いの存在が互いの成長を促す素敵な恋愛をしている二人だと思います。
「犯して」と口走った臣をちゃんと叱って、「やさしくする。大事にする」と抱く慈英に
キュンとしました。
この人は本当に臣が大事で、愛してるんだなぁ、と。
そして、臣もどれだけ慈英が大事で愛しているのかやさしく伝わってくる。
チラリと垣間見せる慈英の執着が、やっぱり私は大好きです(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
警部補昇進試験に合格した小山臣は、一年間の駐在所生活に突入。人気画家で恋人の秀島慈英は、先に臣の配属先の町に移住。臣もまた「きれいな駐在さん」として暖かく迎えられる。そんなある日、町に事件が起きる。それは臣の過去に関わる、ある人に繋がり…!?慈英&臣、待望の書き下ろし最新刊。表題作ほか商業誌未発表短編も同時収録。
「ひめやかな殉情」崎谷はるひ(ルチル文庫)
社会生活を営んでいく上で何かが決定的に欠けていて、大きな歪みを抱えている慈英。
他者に関心を示さず、閉じた世界で絵を描き続けてきた彼の、
臣だけに対するまっすぐで度を越した執着がたまらなくゾクゾクする。
縛り付けるための執着というよりも、甘やかして絡みついて、包み込んで離さない。
そんな執着。やっぱりたまらない(笑)
自分のことを粗末に扱いがちな臣には、
慈英に愛されて、堺家のみんなに愛されていることをちゃんと自覚して、
自分を大事にしてほしいと思うわ。
自分は自分にしかなれない。そのことに三島はちゃんと気づくかな?
二人のどうしようもなく幸福な時間がいつまでも続きますように☆
内容(「BOOK」データベースより)
刑事の小山臣が新進気鋭の画家・秀島慈英と恋人同士になって4年、同棲を始めて1年が過ぎた。幸せではあるが、画家としての地位を確立していく年下の恋人に、自信を持てない臣。そんな二人の前に慈英の大学時代の友人・三島が現れ、慈英につきまとう。不安を感じる臣だったが…。慈英&臣、待望の書き下ろし最新刊。表題作ほか商業誌未発表短編も同時収録。