きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「パーフェクト・クオーツ 北の水晶」五條瑛 (小学館文庫)
身の丈、という言葉がある。
己の価値を見極めることができなかったことが、
彼を滅びへと誘った。
血の縛り、という柵がある。
我が子だからこそ、自らの目的達成のための贄にしてもかまわない、という心境が理解不能。
かつて、実際に起こった事件の数々が頭を過る。
その陰でこんな動きがあったとしても、不思議ではない。
そう思わせるリアリティがそこにある。
情報は武器。そして宝。
コツコツと事実を積み上げて手持ちのカードを増やしていった彼ら。
神経がタフでなければやり通すことのできない仕事。
と同時に、細やかな観察眼と先読みができなければ仕事にすらならない。
読了後、何この人たちのこの蜜月!と昇天しそうになる。
エディ、ここにきてデレたなぁ。
と同時に、新たに提示されたワードにより、
さらにその先を読みたいという想いが搔き立てられて眩暈がしそうになる。
この作品を手にすることができたように、
『ソウル・キャッツアイ』を手に取ることができる日が来ることを信じてる。
その前に、本作と対になっている『パーフェクト・クオーツ 碧き鮫』を読むお楽しみが待っているのです。
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「恋する犬のしぐさ図鑑」海野幸(ショコラ文庫)
もしも相手の感情を読み取ることができるようになったら?
そんな直紀の都合の良い願いが聞き届けられたものの、
不思議な効力に頼り切らずに恋を成就させたところが好印象。
立ち位置の逆転があって、
そこから重倉サイドの心情が知れてより深みを増す構成がうまい。
感情を推しはかるアイテムが耳と尻尾なんだけど、
尻尾が揺れたり耳がたれたりしている様が
リアルに想像できてめっちゃ可愛かった。
五年前の出来事をお互いが同じような位置づけで胸に抱いていた事実にほっこりする。
から揚げ勘違いが個人的にツボッたお借り本。
「めんどくさい客の要求は通りやすい」にわかりみ。
受けた仕事の依頼は必ず回答期限を聞く。
期限元首は当然だけど、
その中でも時間かけるとうるさい客先の見積はさっさとやろう、って私も思う。
納期の指定と確認をゴリゴリするのは私もやる。
この場合、めんどくさい客は私。
でも、短納期の依頼でもみんなできる範囲でちゃんと協力してくれる。
無理が通った時のお礼は忘れずに。
「星条旗の憂鬱 情報分析官・葉山隆」五條瑛 (文芸社文庫)
『鉱物シリーズ』番外編。短編連作。
主軸はもちろん彼らの物語なんだけど、
韓国の大統領交代、思いやり予算、三菱重工のイージス艦入札等々。
あ、オーストラリアと中国の問題もか。
時事的な事象が端々で描かれていて、考えに沈みそうになること屡。
そしてまさかの人が転勤になっていて、えーー!と。
時間は留まることなく流れているんだと実感する。
昨今のアメリカ政権の変動を作中に反映させる場合、
五條さんはどう描くのか。興味あるなー。読みたいなー。
迷いなく生きる人たちの中で、一人惑う葉山。
だけど、彼の核は固い。
だから、溺れることはないと、信じてる。
まさかの邂逅にきゃーーー!となっての読了。
組織内での異動が気になる人もいるし。
次巻も文庫で出してくれることを願うわ。(個人出版で絶版中)
そしていよいよ本編『パーフェクトクォーツ』に。
積読が減るのは良いことだけど、
シリーズ既刊を読み切ってしまう淋しさがチラッと過る。
ああ、でもずっと続きが出ずにいた期間を思えば、
今こうやって読めていることが奇跡。
「囀る鳥は羽ばたかない 7」ヨネダコウ (HertZ&CRAFT)
行き場のない想いに縛られたままの4年はある意味残酷。
矢代の傍にいる事は叶わず、
だけど想いを諦める選択肢はなく、
ならばせめて、あなたと同じ世界の片隅に。
そう願った百目鬼。
一方の矢代も心の中に4年前に抱えた塊を
吐き出すことが出来ずに抱き続けている。
交わることを願った百目鬼。
接した点の上に立つ矢代に、何を見る?何を望む?
そして「変わらない」素振りの矢代はどう応える?
冒頭でオラオラな三角さんにドキドキして、
相変わらずな面々とのやり取りに和み、
ラストはこの後矢代の発する一言を思ってドキドキ。
うわー、次巻まで引っ張るドキドキ!
オウムを飼う時は家族会議が必要!
と、少し前に会社の人と話したことを思い出しました。
「え。なんで?うるさいから?」
「違うよ。寿命が相当長いから、後に託す人に了承を得ないといけないの」
その時私、初めて知ったのよ、オウムの寿命。
「天使の定理」沙野風結子 (ディアプラス文庫)
加速度的に増していく面白さは最後まで勢い衰えず。
圧巻の読み応え。
閉じた世界の中で過去と共に朽ちていこうとしていた弦宇。
そんな彼の世界の扉にうっかり手をかけてしまった槐。
他人と深くかかわらず自らを保ってきた槐にとって、
物事を俯瞰できなくなった時点で傍観者ではいられなくなった。
そこからの二人の文字通り命がけのバトルが壮絶。
そしてまさかの第三者の介入での豪快な着地。
弦宇の抱えた雑音の正体に感極まったところでクライマックスかと思ったけど、
もう一段高みへと引き上げられての読了。
笠井さん絵には見惚れてため息。
前作での不安定さがまったくなくなっていた要斗。
聰一郎との関係が良好な証。
しっかり仕事をしている姿が嬉しい。
今作のその後は堕ちた天使の世話をかいがいしく焼いているツキノワグマの姿が
垣間見られるペーパーが嬉しい。
「兄弟の定理」沙野風結子 (ディアプラス文庫)
血が繋がってないなら、迷わず飛び込んじゃって良くない?
と思った私が浅はかでした。
血が繋がっていないからこそ、兄弟であることに固執した二人。
だからこそ苦しくて、思い悩み、結局どちらも追い詰められて、
それでも、あるべき答えを見つけ出した二人。
心の中に抱いていた思いをずっと自覚し続けてきた要斗と、
ある意味、無理やり向き合わざるを得ない状況に追いやられた總一郎。
だけど。
あの日、總一郎が要斗に手を伸ばした時点で道は決まっていたのだと思う。
いろんな枠をとっぱらって、二人なりの関係を築いていってほしい。
リビングのどまんなかにダブルベッド。
良いの?(笑)
壁面全部を本棚にしたくて部屋の中央に机を配置しようとした私は全力で家族に止められました。
やだなぁ。本気なわけないじゃん!←(笑)
メフィストフェレス的な立ち回りかな?と思った式見だったけど、
意外とそうでもなくて。
で、スピンのタイトルが『天使の定理』。
あれ?悪魔と真逆……でもないか。表裏一体(笑)
楽しみ!
「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ (ハヤカワepi文庫)
その先に待ち受けているものから逃れる術を求めるのではなく。
自分自身の在り様を、その先の未来を、淡々と受け止めている彼らの姿が、
ただひたすらに悲しくて、そして苦しい。
自らの利になるものは生み出したい。
だけど、脅威になるものは排除したい。
身勝手だけど、それが人間。
そんなふうに納得できてしまうのが、やっぱり悲しい。
幼い頃から施設で共に生活し、喜怒哀楽を共にした仲間たち。
理不尽な運命を強いられていても、
彼らの心が濁りなくきれいなままだったのは、施設での日々があったからなのか?
ならば私は残酷な施設の在り様を肯定する。
何を彼らに伝えるかは別にして。
「やりたいことはいずれできると思っていたけど、それは間違いで、
すぐにも行動を起こさないと、機会は永遠に失われるかもしれない」
震災直後に友だちと全く同じことを語り合った思い出。
今日と同じ明日がくるとは限らないから。
途中から榎田さんの『神話シリーズ』が頭をよぎって仕方がなかった。
そして、神話シリーズの彼らと作中の彼らの在り様に、色々考えさせられる。
【ガーディアン必読106/1000冊】
「匿名希望で立候補させて」海野幸 (キャラ文庫)
三人兄弟の間の拗れた関係の再構築と、彼らの隣人が抱き続けた想いの行方。
個人的には拗れに拗れた兄弟間の仲が解けていく様が読み応えあった。
困ったときに誰よりも親身になってくれるのが家族である一方で、
家族だからこそ見せたくない弱音って確かにある。
そんな時に寄りかかれるのは、弱った心をさりげなくフォローしてくれる他人。
何もかもに秀でたパーフェクトな人だと思われていた長男の
弱さと家族に対する想いにぐっときてしまったお借り本。
そしてあまりにも遅かった恋心に、このニブチンが!と金八先生風に。←世代が……(笑)
甘えるスキルをマスターした彼は最強だと思うわ。
「交換日記」と言うアイテムがとてもとても懐かしい。
手元に一冊も残っていないけど、誰かが持ってるのかな?
全部処分したりされちゃったりなのかな?
私が手元に残してある自筆のノートは
16歳の誕生日になぜか思い立ち、5~6年くらいつけ続けた読書ノート。
これは後生大事にとっておこうと思います。
「ナインデイズ 岩手県災害対策本部の闘い」河原れん
ノンフィクションノベル。
東日本大震災。
想像することなどできなかった未曽有の災害。
だけど、私たちはその災害に見舞われた。
ならば、伝えなければいけない。
次に同じような災害が起きたとき、命を守るためにどうすればよいのかを。
そして、考えなければいけない。
同じような悔しさや無力感に苛まれないために、或いは、
一人でも多くの人の命を救うために、どうすればよいのかを。
本書には災害時の対策を行っていくうえで、
今のうちの考えておかなければならない問題点が多々描かれている。
災害が起こってから考えたのでは遅すぎる。
そのことを重く受け止めるべき。
ライフラインがすべて途絶えた状況下で
どうやってリアルタイムな情報を収集し、伝達するのか。
まずはこれに尽きる。
でなければ、必要な場所に適切な救助の手を差し伸べる事ができなくなる。
そして縦割りの弊害をどう取り除くのか。
素早く効率的に対応するためには事前プランニングとシュミレーションは必須。
同じことが起こった時に同じようにもたつこことだけは避けて欲しい。
そして他人を思いやる気持ちを絶対に忘れてはいけない。