きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「すばらしい新世界〔新訳版〕」ハクスリー (ハヤカワepi文庫)
瓶の中から生まれてくる命。
その瞬間から既に決められている階級。
決められたことの繰り返し。
レールから逸脱することのない日々。
みんながみんなのもの。
しあわせはみんなと一緒に。
ならば、私は?
私が私で在ることの意味はどこに在る?
考えることは異端。
考えることは不幸。
自由意思の世界を知らないからこそ、幸せでいられる彼ら。
故に、知ることは不幸。
……本当に?
すばらしい新世界。
唱えるたびに背筋が寒くなる。
だが、彼らにとってユートピア。
私はこの作品がディストピアに分類される意味を考え続けられる思考でありたい。
1932年の作品。
本当に?と確認してしまうほど、時の隔たりが感じられるじられることがない。
不朽の名作と呼ぶに相応しい色褪せなさ。
素晴らしい。
「むちむちした肉体」「むちむちした椅子」
原書でこの「むちむち」はどんな単語なの?と興味津々。
オーウェルの『1984』よりもとっつきやすい作品。
けれども。
表現のソフトさに誤魔化されてはいけない。
描かれているのは紛れもないディストピア。
クドカンの映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』の天国の描写を思い出した。
【ガーディアン必読 97/1000】
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「革命前夜」須賀しのぶ (文春文庫)
「罪には罰を」
彼はその罪を糾弾したけれども。
罪のからくりを見抜くことはできなかった。
事後にはそれぞれが抱えた罪の意識と、自責の念が燻っている。
それが当時のその国の在り様なのだと。
言い切るには納まりが悪いやるせなさ。
旧体制下の東ドイツ。
音楽を志すために集ったはずの若者たちが、
壁が崩壊する直前の時代の濁流に飲み込まれていく。
掲げる信念は人それぞれ。
だが、それが許されない国での閉塞感。
その中で各人の信念の元、行動した彼ら。
「親愛なる戦友」
大きな傷を負った彼の
それは皮肉でも当てこすりでもなく、掛け値なしの本音。
なんだと思う。
脳裏で終始響き続けるピアノ。
そして、描かれる世界の熱気と迫力に圧倒される、読メ登録1600冊目。
須賀さん、おもしろすぎてヤバイ。
既に積んでるのもあるけど、少しずつ集めていこうと思います。
締め付け具合はソ連の方がよっぽど息苦しく感じられるんだけど、
同種の居心地の悪さを感じる東ドイツ。
好きな時に好きな所に行けて、
思ったことをそのまま口にすることのできる自由を噛みしめる。
ちなみに。
自由に口にしすぎて、独り言に対して返事や突っ込みが入るという事態が
時々社内で発生しています。
「スピンオフ」水壬楓子 (リンクスロマンス)
恋人と別れ、その傷が癒えずに一夜限りの相手との逢瀬を繰り返していた花戸。
そんな花戸の内情を知りながら近づき、繰り返し愛の言葉を囁いた箕島。
甘い言葉だけではなく、何のために近づいたかも悪びれずに口にする
駆引きのなさが好ましい。
箕島が野田にやらかした悪戯。
その顚末、知りたかったなー。
おちょくられて憤慨する木佐がみたかった。
そして悪戯された野田の意趣返し。
おかげで箕島と花戸はうまくまとまったわけだから、
野田、天使(笑)
既存キャラの親友ポジションの二人の物語。
各々の仕事事情が上手く盛り込まれていたのは流石。
ちゃらけた箕島の時折混ざる命令口調にときめく。
水壬さんの年上が年下に対するみせる懐の広さと鷹揚さがとても好き。
「クランクイン」水壬楓子 (リンクスロマンス)
穏やかであたたかい依光の想いに泣きたくなるのは、
千波を想う気持ちの真摯さが伝わってくるから。
今ここにいる、あるがままの千波を愛しているという想いが伝わってくるから。
焦らさず、強要せず。
千波が決断するのを待つ依光の懐の広さも好き。
そして、折れることなくしなやかに。
自分の歩む道を一歩一歩進みつづけた千波。
口さがない言葉は止まないかもしれないけれども。
分かってくれる人もたくさんいる。
だから、繋いだ手を離さないで。
それは千波の力になる。
依光の「約束」の提案はとても素敵だ。
言葉にして想いを伝え合うことはとても大事。
そして「デザート」ありがとうございます。
息子にあてられて、恋人を抱きたくなる親父の話(笑)。
多分当人には伝わらないけど、
木佐の息子を褒める言葉も嬉しかった。
「ファイナルカット」水壬楓子 (リンクスロマンス)
わかってた。
わかってたけど、わかりづらいよ、クソオヤジ!←絶大なる褒め言葉。
木佐がいたから野田が飛び込んだ世界。
木佐がいるから、野田が歩みつづけていく世界。
可能性の翼を広げてより大きな世界に飛び立つのではなく、
愛する男が写し撮る世界の中で、男の色に染まって変化を遂げていく。
そういうのも悪くないんだなぁ、と、素直に思える野田の想い。
その可能性を預けられた木佐は
吐露した不安と恐怖に呑まれることなく、
野田と共にさらに大きな存在になっていくんだろうね。
大人げないオヤジが挑発に乗って
箕島を蹴り飛ばすシーンがお気に入り。
水壬さんが楽しく書いているのがものすごーく伝わってきて、
こちらも楽しく読了。
「懐深くて腹黒い、できるオヤジ」私も好き好き。
「ラブシーン」水壬楓子 (リンクスロマンス)
劇団員の下積み生活を経て、売れっ子俳優へ。
そして憧れの監督の映画出演。
努力してステップアップしてきた千波が見舞われる、
悪意に塗れた出来事。
どうしてこの子ばっかり……と思うけど、
諸悪の根源は全部谷脇。
こんな卑劣な犯罪者には雷が直撃するといいわ。
傷ついた千波をずっと支え続けてきた依光。
絶望の底にあった千波の行為を「反則だ」と諭した依光の言葉に泣けた。
千波を信じた周囲の人たちの優しさが沁みるけど、
世間の目は優しいだけじゃないってことは容易に推察できる世の中。
千波の選択した再出発にエールを。
負けないで。
千波がカードデッキ(@仮面ライダー龍騎)を持ってたら、谷脇と戦えるのに!
と、相当ぶっ飛んだ方向に思考が流れた自分にびっくり(苦笑)
基本的に谷脇みたいな犯罪者にはハンムラビの法則を推奨したいところだけど、
今回は雷直撃でお願いしたい。
全く関係ないけど、龍騎では北岡先生と浅倉が大好きでした。
「悪寒」伊岡瞬 (集英社文庫)
事件が起きてから裁判に至るまでが淡々と描かれる第一部。
そして、少しずつ明らかになる真相に右往左往する第二部。
事件の根底にあった感情は憎しみ。
「一日も欠かさず嫌いなところを書いてきた」
これは、毎日ひとつ、良いこと探しをして書いている私にとっては衝撃。
他人を陥れることに注ぐ力があるなら、
自分が楽しむことに全力を費やしたい。
と、私なら思うけど、そこはまぁ、人それぞれ。
事件の渦中にあった藤井家、みんなそれぞれが頑張った。
間違った方向に頑張った人もいたけど、
それなりの代償を払って手にしたぬくもり。
もう、見失わないよね。
「家族は放っておいてうまくいくものじゃない」
とは、主人公の台詞。
コロナの影響で子どもも両親も自宅にいる時間が大幅に増えて。
つまりは一緒にいる時間が増えた分、もめ事が多発してるんじゃないかって
密かに心配していた家庭があったんだけど。
その心配は杞憂で、今まで絶えなかった家族間の喧嘩が勃発する頻度がかなり低くなった
のが実際のところ。
その理由を奥さんが「今まで話が出来なくてすれ違っていた分、ちゃんと話をする時間が増えて意思疎通が図れるようになったから」と分析していたことをなんとなく思い出しました。
「宝石商リチャード氏の謎鑑定 エメラルドは踊る」辻村七子 (集英社オレンジ文庫)
時として子どもは大人が思っている以上に物事をしっかりと見ている。
ごまかしたり嘘をついたりすれば、子どもの不信感を呼び込むことにしかならない。
だから大人はめんどくさがらずにちゃんと事情を説明するべきだったと思うの。
この時プリンを小さく連呼したリチャード。
言った甲斐があってよかったね。
正義の口のきき方は相変わらずどうかと思うけど、
リチャードの正義に対する見方に感化されて、
それが彼の在り様なんだな、と思えてきた。
甘いお菓子で懐柔されるリチャードが可愛い。
そんな彼の過去に対する興味が深まる2巻。
色々重い物背負ってそう?
牛乳寒天。
高校の時部室で時々作ってたわー、と、懐かしく思い出しました。
「クリソベリル」を「クソベリル」と読んで二度見したことはナイショです。
「こんなはずじゃなかった」
人生においてそんなふうに思う瞬間があったとしても。
「目指す場所があるなら根性をみせろ」
この言葉を思い出せる人間でありたいな。
「社史編纂室で恋をする」栗城偲 (ディアプラス文庫)
いくらポジティブ思考だからといって、
理不尽な目に合えば落ち込むし、誰かに慰めてもらいたくなる。
それでも仕事から逃げ出さずに前向きに頑張ってる志月、可愛いなぁ。
ストレス発散が走ること。
混乱した思考をまとめるためにもやっぱりランニング。
良い雰囲気いなったところで「ひとっ走り」に行かれてしまったら、
そりゃあ「何事!?」って思うよね。
問題が解決するまで志月に真実を話せなかった稲葉にはひたすらギャップ萌え。
稲葉がイニシアチブが取れるのはベッドの中。
日常は自称「察しが良い」志月に振り回されつつ、
決めるとこはビシッと決めてくれるのが最上。
スピンで塚原のお話ありですか。
そうですか。
ものっすごく楽しみ。
作家さんも絵師さんも宮城出身なので、妙な親近感(笑)