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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「コゴロシムラ」木原音瀬(講談社)




揺るぎない自己肯定。
作中から受け取ったものは、この一言に尽きる。
どんな姿であっても、どんな環境で生きてきても、自分は自分。
胸を張って言い切るその姿から伝わるのは、
圧倒的な美しさと力強さ。
そりゃあ、仁科も呑みこまれるだろうよ。
兄と二人、濁りのないとても綺麗な世界で生きてきたことが伺える世界観。
現実と折りあいながらも、
新には彼自身の住まう世界に君臨する唯一の神であり続けてほしい。
ある時点を境に起こった現象には、何らかの原因がある。
突き詰めるのではなく、考えることを放棄し、封じてしまった事こそが悲劇。


帯の「ホラーミステリー」はいらないかな?
ホラーじゃないから。
そもそもホラーに全く食指が動かないので、
自分では絶対に買わないであろうお借り本。
楽しく一気読み。

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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女I」



下町の家族に別れを告げたローゼマインは
上級貴族の世界で生きていくための努力の日々。
目的達成の為、我武者羅に突っ走ってきた彼女を知っているだけに、
お嬢様然とした姿に若干の物足りなさを感じる一方で
ルッツに遠慮なく抱きついて、
ベンノに「本質は変わっていない」と言われる姿に安堵したわけだけど。
そうじゃないんだと、ルッツと一緒に気付かされた読了間際。
やるべきことを懸命に努力してきた結果としてみせた
領主の養女としての立ち居振る舞いは不覚にも(何故?)カッコイイと思った。
でもやっぱり、神官長をぎゃふんと言わせるために暴走している姿が彼女らしいよね。



ローゼマインの推し進めたコンサートのプログラムやイラストの物販事情にはわかりみしかない。
そりゃあ、買うよね。
うちわもクリアファイルも何もかもが買ったきり使い道がなかったけど。
最後まで読み切ったパンフは数えるほどしかないけど。
そう。あれは確かに寄付だった(笑)



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「高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法」



その圧倒的なスケール。
機能的で無機的であり、美しくもある外観。
何より、それは人が設計して作り上げたもの。
眺めているでワクワク感が募る。
一言で言えば「超カッコイイ!」。←語彙……(笑)
写真の素晴らしさとかつての思い出が直結して二倍楽しい。
初めてレインボーブリッジを走った時の夜景の美しさに感動こと。
初めてアクアラインを走った時の爽快感。
そして、初めて首都高を走った時にそのルートの複雑さに半泣きになったこと。
(当時カーナビなんて搭載してなかった)
今度は走るんじゃなくて外側からゆっくり眺めてみたい。

首都圏の道路を走ってみると、車線の多さと車の多さに
東北との人口の違いをまざまざと思い知らされる。
目次で東北のジャンクション名を探したけど
規模の大きさの違いから、載ってなくても仕方ないよね、
と思ってみました。



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「金の小鳥の啼く夜は」かわい有美子 (リンクスロマンス)



凛とした文章が紡ぎ出す、繊細でやさしい物語。
左半身に重度の火傷痕があっても、両目が見えなくても。
その心根の優しさと美しさが損なわれることのなかった二人。
6年かけて二人が築き上げた幸せな閉塞世界。
そこにいることで満ち足りていた二人が
その世界が瓦解しそうになった時に感じた絶望。自覚した愛情。
そして、二人を更に大きな世界へと解き放って行った好意と経緯。
一緒に一喜一憂しつつで読みごたえあった。
英彬の良く響く艶やかなテノールが聴こえてきそうな描写が秀逸。
雪乃の告白の言葉はあまりにも鮮烈。刺さったわ。
そして高彬の策士っぷりに喝采を。

やけど治療のための皮膚移植。
あたしそれやってる~~!と、思いがけない親近感(笑)
背中の皮膚を右足に移植したそうです。←覚えてない。

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「人でなしの恋」かわい有美子 (リンクスロマンス)



時は昭和初期。
第一高等学校時代から仲の良かった三人。
仁科、花房、黒木。
共に過ごす年月が増すごとに、
複雑に絡み合っていく三人三様の想い、
時に感情が勝り、時に理性が勝り。
だけど、どうしても嘘のつくことができない心の底から込み上げる想い。
そんな彼らの心情が丁寧に描写されていて、引きこまれると同時にやるせなくもなる。
仁科から見た黒木と花房から見た黒木。
それぞれの解釈が全く違うところがおもしろい。
仁科の想いには胸が痛くなるし、
誠実で実直な花房もまた、捩れた想いを抱えている。
少し苦味の残る読後感が、また心地良い。



関東大震災、小石川、というワードは『はいからさんが通る』と直結。
私は隻眼の黒い狼が大好きでした。
仁科、花房、黒木の三人が別な作品にも出ていることをさっき知ったけど、
既にかわいさんコンプしている私は慌てない(笑)
積んであることの利点は「いつでも読める」
次は『金の小鳥の啼く夜は』にいきます。

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「世界の文豪の家」



美しい建物の写真を眺めているだけでもとても楽しい。
本読みとしては、その建物で生活していた作家たちの作品がいかにして生み出されたのかを
知ることができるのはとても嬉しい。
そして、簡単にではあるものの、紹介される作者の人生が大変興味深い。
ローラ・インガルスが『大きな森の小さな家』を
執筆し始めたのが還暦を過ぎてからだということに驚いた。
そこから9作品。人間の可能性は無限大。
一番インパクトがあったのがユゴーの家。
なんじゃこりゃ!?的なインパクト。
落ちつかない。
ヘッセの生活していた場所は作品イメージそのものの風景の美しい場所で嬉しくなる。→


読みながら何を思ったかというと、
部屋を徹底的に片付けて、綺麗に整えたくなってみました。
そんなふうに触発されるくらい、素敵な家がたくさん。
特に北欧の家は洗練されている気がします。
紹介されている作家は41人。
そのうち既読の作家は20人でした。

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「天平の甍」井上靖(新潮文庫)



西暦700年代。
命掛けで海を渡り、異国で学んだ遣唐使たち。
移動も誰かに会うのも写経をするのも。
今の時代とは費やす時間があまりにも違う。
それでも一つのことを探求しつづける彼らの姿勢には背筋が伸びる。
志半ばで道を逸れる者にも事情があることが汲み取れるのもリアル。
唐に渡った普照が高僧鑑真を伴って帰国するまでに費やした歳月は20年。
当時鑑真は66歳。
二度と故国には帰れないことを覚悟しての来日であっただろう。
彼らの熱意の根源は仏教への深い思い。
唐招提寺の落成で物語は終わる。
彼らの痕跡を実際に辿ることができるのは僥倖。


興福寺、東大寺の大仏。唐招提寺。
1400年程前の建立物を未だこの目で見ることができる事実に、
自分が悠久の時の流れの中で生きていることを実感する。
そして支倉常長がヨーロッパへ渡るのがいかに大変だったのか。
実際にそれをサンファン館で学んできただけに、
その時代よりもさらに古の時に荒波を渡っていった彼らの苦難の道を思う。
初読の時は業行が辿った運命に「ああ」と頭を抱えたくなったけれども。
今なら「リスク分散」を強く主張したい。

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「この夏のこともどうせ忘れる」深沢仁 (ポプラ文庫ピュアフル)




彼も、そして彼女も。
この夏に起こった出来事を決して忘れない。
それは、心の底に残された大切な宝物。
かすかな痛みと共に思い出す、ひと夏の想い出。
その夏の延長上に彼らはまだ共にいるのか。
いて欲しいと思ったり、いないだろうと思ったり。
そもそもありえなかったり。
それぞれの話の「ふたり」の関係が透明感のある文体で書かれた短編5編。
爽やかな青春物かと思って読み始め、
衝撃を受けた「空と窒息」。
やるせなくて涙が滲んだ「宵闇の山」。
二人の幸せを切に願った「生き残り」。
チクチクと胸が軋む読後感に浸っていたいお借り本。


暗闇の中に響くのは、寄せて返す波の音。
私がこの場所にいることを知っているのは私と連れだけ。
もしも今、この海に呑みこまれたら、
私がどこに行ったのかは誰にもわからないんだろうなぁと
ぼんやり思った過去の思い出。
ゾクッとしたときに繋いでくれた手のぬくもりがありがたかった。
あの時は頼もしいなぁって思ったんだけど、
あとから思えば、多分相手も怖かったんだろうね(笑)

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「GIANTKILLING 55」ツジトモ(モーニング KC)



ブラン、夏木の乗せ方よくわかってる。
流石監督。
そのブランの背中を押したのは椿と夏木を育てた達海。
こちらも流石監督。
拮抗する日本とオーストラリアの試合展開は手に汗握る好勝負で、
アジアカップを通して結束し、成長著しいメンバーたちの活躍がとても嬉しい。
完全に開花した椿ののびやかなプレー。
日本中が歓喜する逆転劇。
だけど。
こんな劇的展開は望んでいなかった。
血の気が引くってこういうことだよね。
特に彼が贔屓だったわけじゃないけど、
嘘でしょ、と真顔で呟く自分。
彼に持田のようにはなってほしくない。
その怪我が大事に至りませんように。


呆然としすぎて感想が書けずにここまできてしまいましたが。
来月新刊が出るので慌ててUP。
スポーツに怪我はつきものだけど、つらいね。

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「宝石商リチャード氏の謎鑑定 祝福のペリドット」辻村七子 (集英社オレンジ文庫)



ここでリチャードの過去が明らかに。
出逢った人によって人生が大きく左右されることがあるけれども。
もしもシャウルがリチャードを見つけることがなかったら?
どう頑張っても明るい未来が想像できなくて背筋が凍る。
シャウルと出逢い、後に正義と出逢い、
出逢いが更なる出逢いを呼び、
胸の内に秘めつづけた想いを解き放つことができたリチャード。
過去の出来事一つとっても
幾人もの人の想いが何層にも重なり、複雑に絡み合っていて
読み応えがある。
「諦めとは違う、現状の限りない肯定」
だから前に進むことができる。今この瞬間の、先にある未来へ。


「お鍋にミルクティ入ってるから」と言い置いて母親が出掛けた後、
寝起きの頭は鍋=コーンポタージュと直結し、
温めてスープカップに注いでスプーンで掬って口に入れて
「なんじゃこりゃ!?」と噴き出した思い出。
コーンポタージュだと思ってミルクティを飲むと
記憶にある味と直結せず、結果未知との遭遇になって慄くことになるのは経験値。

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