きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「八月十五日に吹く風」松岡圭祐 (講談社文庫)
十分な補給も与えられないまま、戦場で放置。
痩せ細ったその体でどう戦えと?
与えられた道筋は玉砕。
は?
ふざけんな。
と、当時の人たちは言えなかった。
言える風潮でもなかった。
人ありきで国がある。
人命は消耗品ではないのに。
そんなことも考慮されなかった戦争。
けれども。
北の地で孤立した五千人の兵たちを救出すべく力を尽くした男がいた。
彼に指揮権をた与えるべく尽力した男がいた。
正しいものは正しいと、叫んだ男がいた。
曲解された日本人像を正そうとした男がいた。
奇蹟は待っても起きない。
だから彼らは動いた。
たくさんの人に知ってほしい真実がここにある。
途中で脳裏を過った名前はヤン・ウェンリー。
彼も同じことをしたんだろうなぁ、という思いと、
彼にもこんな上官がいたら、という思いと。
泣きたくなった。
学生のころに読んだ『きけ、わだつみのこえ』を思い出し、
やっぱり泣きたくなった。
そして、作中で語られる彼らの言葉に涙。
うん。
戦争はやっちゃいけない。
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「罪の名前」木原音瀬
場当たり的に嘘をつく人は、それを「嘘」と認識しているのか?
少なくとも「後ろ暗いこと」だという認識はないんだろね。
だから平気で嘘をつく。
作中の嘘つき二人はどちらも質が悪い。
が、より醜悪な嘘つきがどちらかは明白。
その性根が気持ち悪い。
人の命をなんだと思ってる?
と彼に尋ねたところでまともな答えが返ってくるとは思えない。
一対一でついた嘘は、押し通せるかもしれない。
だけど、複数からの視点で見られれば、その嘘は破綻する。
何で気付かないんだろう?と彼女に問うのは愚問かな。
少年が衝動に負けて彼を噛み千切ってしまいませんように。
濡れた布を被せての窒息は私のトラウマ。
『ラストエンペラー』で西太后がやらせているのを見て、恐怖で寝られなくなった少女時代。
木原さん、つるっとしたカエルを口に含んだことあるのかな?
と、ふと思ってしまった。
私にはモグラを咥えた経験のある友だちがいます。
ビロードの感触が大好きで、
ビロード生地のものを何でも口に含んでいた延長で何故かモグラ。
幼少期の話で親が悲鳴あげたって言ってたけど、そりゃそうだ(笑)
料理したカエルは美味しく食べられるけど、生きてるカエルは……うん。無理かも(笑)
「破廉恥なランプ」中原一也 (シャレード文庫)
もう、二度と会うことはできないあなた。
だけどずっと愛している。
イシュタルの過去と現在。
そして匡の仕事事情。
点と点が綺麗につながる展開に喝采。
そして、おふざけとシリアスの緩急が素晴らしい。
戦闘クライマックスのどシリアスシーンで
まさか股間が光るとは思わなかったよ。
永遠の刻を生きる魔物と有限の刻に縛られる人間。
自ずと生じる苦悩があるわけで、
切なくて匡と一緒にキリキリしながら、
キファーフの想いの深さに包まれてほっこり。
ワンルームに人間1人とランプの精が4人。
これはぜひお引越しした彼らの日常も読みたいわ。
下ネタ比喩は後半になっていくにつれ
もはや意味不明になってきたけど、
個人的に「真っ赤なランボルギーニカウンタックがピットイン」がベスト。
身近にランボルギーニ乗りがいてびっくりしたことがあったけど、
私が乗りたいのは真っ赤なカマロ。
「淫猥なランプ」中原一也 (シャレード文庫)
しっとりとした雰囲気の漂う淫靡な千夜一夜物語。
……ではなく。
昭和臭漂うリーサルウエポンなおっさんランプの精と
純朴で無害だけどちょっと訳ありなサラリーマンと
成長途中のちみっこランプの精の物語でした。
ちみっこ可愛い。
掴みは相当なアホエロだったけど、
根底にあった諸事情はどシリアス。
平和な日本のワンルームマンションから
北アフリカの紛争地帯へ飛び、ど迫力な展開へ。
エンタメ要素盛りだくさん。
でも際立ったのは匡の無欲さと働くことに重きを置く姿勢。
そしてスパイシーチョリソーはホットじゃなくヒリヒリしそうだから
例えとしてはよろしくないと思う。
歩いていたら「無料で姓名判断してあげるよ」と怪しい勧誘をされたこと
私もあったなー。
話を聞きながらハンコを売りつけたいんだな、というのは透けて見え、
その時点で私の勝ち(笑)
同じく「無料診断」で石を売りつけたいんだなーと言う占い師の
不安を煽るような言い分に悉く言い返してたら追い出されました(爆笑)
「宝石商リチャード氏の謎鑑定4 導きのラピスラズリ」辻村七子 (集英社オレンジ文庫)
何もしなかったらこの手をすり抜けて何処かへ行ったまま、
もう二度と会うことができない。
それがどうにも納得できないことだったら?
動くしかないよね。
「やらないで後悔より、やって後悔」
本当にその通り。
やってハッピーな結末を手繰り寄せることができるかもしれないもの。
それにしても、由緒ある家の遺産相続の問題は息が詰まりそうになる。
過去に雁字搦めになって自由に生きられないって辛い。
リチャードの鎖を断ち切ったのは、そんな柵に縛られない正義。
でも、彼も祖母と母が背負ったものに縛られていた。
その身に絡まった鎖を外しあった二人。
これからが楽しみ。
それにしても正義の覚悟の決め方は半端なかった。
そしてみんな、相手が裏側に抱えた感情を読むのに長けている。
長けすぎている。
相手に関心を持つこと。
一緒にいたいと思うこと。
その根底の感情は全部「好き」でいいと思うんだ。
個人的にこの二人にはブロマンス止まりが希望。
「宝石商リチャード氏の謎鑑定3 天使のアクアマリン」辻村七子 (集英社オレンジ文庫)
真摯に相手を想っての言葉は胸に刺さる。
思わず耳を傾ける。
そして、受け止めてくれるとわかっている相手には
自分を語ることを躊躇わない。
謎多き美貌の宝石商、リチャード。
彼の過去の一端が紐解かれる3巻。
最初はイラッとすることもあった正義の言動だけど、
彼のまっすぐさと素直さにリチャードが少しずつ心を開いていく様が伺える。
リチャードの過去の傷がわかったからこそ、良い意味で正義に感化されているところがあるのね、
と思った矢先に……ちょっと、どういうこと!?という事態が発生。
そして私も途方に暮れる。
気になりすぎるのでこのまま次巻へ。
「親しき仲にもボーダーあり」は正義の言。
「親しき仲にも眉毛あり」は私の友だちの言。
え?なくてもいいじゃん!と言った私の意見は却下されました(笑)
そして昨日別件でメールしてた友だちがこの作品にハマっていることは知っていたので
話題を振ってみたら「身近で読んでる人がいなくて寂しかった!語れる人が出来て嬉しい!」
とキラキラメールが返ってきて私も嬉しくなりました。
今度語りに行かねば。
「虎を追う」櫛木理宇
過去に判決が下り、時効となった事件に対して、
退職した元刑事が胸に抱き続けた疑念。
犯人の一人が獄死したことをきっかけに、彼は事件の真相を探り出すことを決意する。
今は一般人となった彼が、どうやって?
今の時代の電子ツールの活用術と見事にマッチングしたアプローチが実に興味深い。
当然、若い世代の協力が必要で、彼の相棒は孫と友人。
その友人が抱えた問題も闇が深かった。伯母さん、キモチワルイ。
多くの人々の尽力で小さな綻びが広がるように明らかになっていく真実。
裁かれるべきは勿論犯人。
だけど、獣とわかっていて犯人を放しにした親の罪も重い。
夜更かし必須のお借り本。
ホームページを運営したり、会員制サイトに作品を投稿したことがある人たちには、
ああ、わかるわ~、なるほどなるほど、と共感したくなることがたくさんあると思う。
私がPCを初めて購入したのは……もう20年前になるのか。
ビルダーとHTMLと格闘しながらサイトを立ち上げた懐かしい思い出。
とても楽しかった。
「叛獄の王子外伝 夏の離宮」パキャット (モノクローム・ロマンス文庫)
命懸けの修羅場を潜り抜けた二人の後日譚『夏の離宮』
甘やかに色めく二人の逢瀬を丁寧に書き上げてくれたことに感謝。
幸せだ!
『色子語り』
持てる力を駆使して這い上がっていこうとする根性は嫌いじゃないよ、アンケル。
自分は真逆の性格のベレンジェ卿に惹かれていく様子が小気味よい。
その勝負の行方を私たちは知っている。
『春の青さは~』
楽しそうな彼らしか描かれてはいないけど。
永遠には続かなかった幸せな時間が切ない。
『布商人チャールズの冒険』
乱闘騒ぎの挙句、食べ物を手に逃走する王子二人に爆笑。
大事だよね。
彼らの治める国に幸あれ。
ずっと緊張しながら読んでいた本編とは打って変わって
楽しく読了の外伝。
貸出中の本編が返ってきてから読もうと思ってたけど、
戻ってくるまでもうちょっとかかりそうなので読んでしまった。
わーん。
本編読みたい!
それは戻ってきてからのお楽しみだわね。
アンケルの野心的な姿になんとなくスカーレット・オハラを思い出す。
映画が好きで何か見たけど、本編未読の『風と共に去りぬ』。
いつか必ず読むよ。
「ホテル・ルワンダの男」ポール・ルセサバギナ(ヴィレッジブックス)
「ルワンダよ、なぜこんなことに?」
100日で80万人が殺される常軌を逸した事態。
1日に8千人。
殺された人の多くは鉈で切りつけられて命を絶たれた。
国民を狂気に誘ったのは言葉による扇動。
その大本にあったのは権力に対する執着。
虐殺のために水面下で進められた準備。
意図的に導かれたものであることが恐ろしい。
そんな殺戮から自分の持てるあらゆる手段を使って1200人の命を救った男がいた。
学ぶべきことが多々あるその手段は本書に克明に記されている。
そんな彼が、嵐が去った後に抱いた諦念と願いに、胸が締め付けられる。
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ドイツにシンドラーが、リトアニアに杉浦千畝がいたように、
ルワンダにはルセサバギナがいた。
舌咬みそうだけど、覚えておきたい名前。
レビューは既定の文字数に無理矢理おさめたけど、
久しぶりに文字数全く足りないわ!と言いたくなった。
そのくらい色々なことを突きつけられて考えさせられる読書だった。