きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「Aではない君と」薬丸岳 (講談社文庫)
誰に助けを求めることもできないまま、
無限に続くかと思われる苦しみから逃れるために、
14歳の子どもに何ができるのか。
正直、大きな何かが出来るわけではないと思う。
そもそも、
大人が子どもときちんと向き合って寄り添うことができていたなら、
多分、こんなことにはならなかった。
だが、それは理想論。
事件は起きてしまった。
「何故?」の理由が見えてくるにつれ、心が重くなる。
そもそもの発端はどこにある?と問われたのなら、
「ここ」と一点を示すことは決してできない事件。
親や友だちや世間に。
追い詰められる子どもがいなくなることを願ってやまない。
「心とからだと、どっちを殺した方が悪いの?」
修羅の渦中にある子どもに問われたら、答えることに窮する問い。
理屈では吉永の言うことは正しいとは思っても、
いじめに耐え続けた子どもに対して断言することは難しい。
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「疵 スキャンダル 1」かわい有美子 (B-PRINCE文庫)
出世と望んだ立場の確立のために、
どこまでのものを差し出すのが、対価として妥当なのか。
計算と打算の人生に齟齬が出始めたら、崩れるのは早い。
あまりも屈辱的な状況に追いやられ、
壊れる寸前の桐原にうっかり遭遇してしまった司馬にとっては
出会い頭の事故みたいな感じがしないでもないけど。
桐原を放っておけずに接点を持ってしまった時点で、
二人の間には新しい関係が構築される。
一度壊れかけ、だけど折れてしまわなかった桐原は、多分強い。
そして司馬の属性は捕食者だ。
めくるめくドッロドロの仄暗い展開にゾクゾクする。
ドキドキしながら次巻へ。
妻側に理由がないとは言わないけど、
それでもあの状態で家庭を維持して行けると思っていた男二人に、
頭にお花畑咲いてる?と問いたくなってみる。
深夜残業する身で子どもをひきとってどうするの?とも。
自分の手が空いたときに「甘やかす」だけじゃ子どもは育たない。
司馬の考えは甘い。と、説教。
まぁ、私も甥っ子姪っ子を無責任に甘やかすだけの立場だから
あんまり偉そうなこと言えないけど(笑)
「淡雪記」馳星周 (集英社文庫)
それが、場当たり的、或いは衝動的な行為だったなら、冷めた目で見て終わっただろう。
だか、彼が胸の奥に秘めた覚悟もしくは諦念、いや、言うならば虚無が、
やるせなさを滲ませる。
地に堕ち、闇の中を彷徨っていた天使が出会ったのは、
凌辱に塗れた妖精。
哀しい程に純粋無垢な魂を抱え、息苦しい世界でもがく彼女。
森の中で出会った二人の辿る道は、多分最初から分かっていた。
そもそもが、彼自身、もはや後戻りできないところに立っていたのだから。
だけど、出会えたことで彼らの人生に添えられた彩りがある。
だから彼らは幸いの中で眠りにつく。
雪のゆりかごと月の光に抱かれて。
600項越えてるわりには、サラッとしてるなーという読後。
馳星周の『不夜城』『虚の王』のツートップは揺るがず。
花村萬月も『ブルース』と『皆月』のツートップは揺るがず。
「ロイヤル・シークレット」ライラ・ペース (モノクローム・ロマンス文庫)
安堵と良かったねという想いが込み上げてきて泣けた。
王族に生まれつくことの閉塞感とプライバシーのなさに息が詰まりそうになる。
皇太子という立場と守らねばならない人の存在。
その中でも自分らしくあろうというジェイムスの葛藤。
セックスから始まったベンとの関係。
条件付けをしての付き合いだったはずが、
その枠を超えて深まっていく様がすっごく伝わってきて、
幸せそうな二人が伺えたからこそ決断を迫られた瞬間は苦しかった。
困難に立ち向かう日が人生最良の日。
そんな二人の前途に激励を。
そしてジェイムスを支え続けたキャスに祝福を。
本を読んで泣く時って哀しかったり辛かったりっていう場合の方が圧倒的に多いんだけど、
今回は良かったーって泣けてホント良かった。←語彙……(笑)
原書では続編があるようなので、是非とも翻訳していただきたい。
英語が堪能だったら……ってこんな時は思うわ。
「GIANT KILLING 52」ツジトモ (モーニング KC)
自分よりレベルの高い人たちの中でプレーすることは、
自分自身の実力を引き上げる糧になる。
メンタル面でどこまでモチベーションを上げられるかは個々人によるけど、
マイナスの影響はもたらさない筈。
若手の著しい成長は
ライバル不在の日本で常にトップを走り続けてきた花森にとっても良い起爆剤に。
総括して考えれば、監督(ブラン)が果たしている役割ってホントに凄いんだな、と。
UAEの監督と選手の関係も好印象。
信頼関係ってホント大事よね。
日本で練習しているETUの面々の姿が見れて嬉しかった。
彼らの試合が早く観たいなー。
地元チームがJ1残留を決め、そういえば感想UPしてなかったわー、
ということを思い出してみました。
しばらくラグビーに熱かったからね。←多分関係ない(笑)
「逆説の日本史 13 近世展開編」井沢元彦 (小学館文庫)
仇討ち。
弟が兄の敵を討つのは認められるけど、
兄が弟の敵を討つのは仇討とは認められない。
なんか不公平だ。
と思うけど、法制化されるのには何らかの決まりごとは必要なわけで
誰も彼もが敵討ちをしてオッケーだったらそれはハンムラビ?と、ぐるぐる。
鎖国は幕府の政策ではなく、後付けで使われるようになった言葉だということには目から鱗。
結果的に閉じこもること200年強。
他国の侵略を受けなかったのはものすごいことなのだと改めて思う。
その間に構築された徳川の支配と熟成された文化。
私、江戸時代には本当に興味なかったんだなーと思いつつの読了。
北方の『岳飛伝』未読なのですが、ここでネタバレを拾ってしまったようで
とりあえず忘れることにしました。びっくりしたわ(笑)
海底や地中に電話線を引く作業に従事した方の話を聞く機会があり
驚愕の嵐だったことを思い出しました。
■行った場所:島原・天草・神津島。
なかなか行く機会がなさそうだけど、よく行ったな、神津島。
歴史を学びに行こうと思ったわけでも、泳ぎに行ったわけでもなく、
砂漠が見たい!というのが私の動機でした。
「SF作家は担当編集者の夢を見るか 毎日晴天!17」菅野彰(キャラ文庫)
閉じこもっていたとても小さな世界の中から、
ようやく周囲に広がる「世間」の存在に気付いた秀。
一人で生きてきた彼が、大河と出会い、勇太と出会い、
今は決して一人ではないのだと気付けたことが尊い。
1巻から17巻までを一気に読んで、
まさかここで一番最初に投げかけられたことに対する答えを見出す秀に出会えるとは思っていなくて感無量。
大河と秀にとってはここのタイミングで公私を分けることがプラスに作用したんだね。
めでたく成人式を迎えた子どもたちには、頼もしさしかない。
この先何があろうとも、ここで培った絆はきっと壊れない。
1巻を手にしてから20年。
再読の醍醐味を味わった気がする。
この巻の表紙がとても好き。
当然ながら中の挿絵もとても良かったんだけど、一番最後の挿絵に泣きそうになった。
私が挿絵に言及することってとても珍しいんだよ。
そのくらいぐっときた。
「次男のはじめての痴話喧嘩 毎日晴天!16」菅野彰(キャラ文庫)
長い物語を読んできたからこそ、味わえる感慨深さがある。
紆余曲折を経て4年の時間を共に過ごした6人。
ここにきてまさか、ボクサーという長くは続けることのできない仕事を選んだ
丈の心の内面を聞かされて泣くことになるとは思わなかった。
悩める兄・明信に対して真弓が与えた言葉の数々。
龍に対して投げかけた勇太の言葉。
たくさん泣いて傷ついて、それでも前を向いて生きてきた
一番下の二人の成長に胸が熱くなる。
そして、失いたくない人にその想いを伝えることができた明信。
その変化に気付いた龍。
諦めることに慣れなくていい。
ウチの甥っ子ちゃん's。
一個しかないリンゴジュースを巡ってジャンケンでも揉め、いつもの如く
あわや喧嘩が勃発するかとおもいきや。
小4男子の「半分こ!」の一言で鎮火。
よくぞその言葉がでてきたと、褒めまくってしまった。
これも成長の証。
「スノーグース」ポール・ギャリコ (新潮文庫)
三篇収録。
「スノーグース」で描かれた美しさと悲哀が個人的には一番響いた。
惜しみなく与えられるラヤダーのあたたかな愛は、
彼を戦禍の中に取り残された兵たちの救済へと向かわせる。
いや、愛だけではなかったのかな。
彼が彼で在るために己に課した責務。
彼の傍を離れようとしなかったスノーグースが美しくもいじらしい。
「小さな奇蹟」と「ルドミーラ」で描かれた奇蹟は、
奇蹟ではあるけども、人(or牛)の想いが繋いだ奇蹟。
切なる願いがあってはじめて動く事象。
託された花束が人々の手を介して彼の人の元へ届いたのが感動的。
冬に甥っ子ちゃんたちをつれて白鳥を見に行けたらいいなーと思っているのですが。
その時は白雁も忘れずに探して来ようと思います。
【ガーディアン必読 88/1000】