きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾 (祥伝社文庫)
弱さと強さを併せ持つのが人。
故に、一度気持ちが折れてしまっても、そこからもう一度立ち上がることができる。
一章ごとに増えていく仲間たち。
垣間見える彼らの人生。
岐路に立たされていたり、何かを抱えていたりする彼らは、
源吾に出会うことによって変わり、彼らに出会うことによって
火消しとして致命的な傷を負った源吾もまた変わる。
「人は何度でも立ち直れる」と叫んだ左門の言葉と、
源吾を支え続けた妻・深雪の情の深さにホロリとした。
業火に立ち向かう江戸の火消したちの物語。
ヤバイね。おもしろすぎ。
そして加賀鳶の勘九郎がが気になる私。
構成がとても親切。
江戸の火消しがなんたるものか、全く分からずに読み始めてもすんなりと理解できるように
しかも説明くさくなく示されている。
それにしても……あんなに燃えた町を再建するのにどのくらいの時間がかかるのかしら?
建材は必要な分、すぐに集められるものなの?
と抱いたクエスチョンはチラ見した次巻冒頭でしっかり記されていました。
はい。
既刊全部そろう日は遠くないかと……(笑)
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「毎日晴天!3 子供の言い分」菅野彰 (キャラ文庫)
肉親の情愛とは著しく縁遠い他人同士が家族になった秀と勇太。
二人で寄り添いあって生きてきて、そして勇太が見失ってしまった距離感。
本来の家族の在り方に気付いたのは秀。
それを不意打ちで突きつけられ、
自らが突き放されたと感じた勇太の絶望と孤独が痛いけど、
人はそうやって大人になっていく。
一方、兄たちからの愛情を一身に受けて育ってきた真弓。
真弓の振り翳す容赦ないまっすぐな想いが勇太を在るべき家族の元へと引き戻し、
勇太の帰りを待っていた帯刀家の面々が、ここが彼の家だと伝えてくれる。
だからもう、見失わない。
疑わない。
自分に向けられるその想いを。
「家族っていつでも手を離せるもののこと」
秀の言葉通り、子どもは親元を離れ、いつしか自らの家庭を築いていく。
その子どもたちも然り。
誰に倣わずとも自ずと知っていくことをああして言われるまで気付けなかった勇太。
手を離しても、そこで関係性が途絶えるわけではなく、
一つ屋根の下で暮らしていなくたって「家族」としていつまでも繋がっていられる。
そう言う大切な事、彼らは勇太にに教えてくれる。
秀と二人だけでも幸せだったかもしれない。
だけど、真弓と、そして帯刀家の面々と出会うことによってより大きな幸せを知ることができた勇太。
よかったね。
「私の消滅」中村文則(文春文庫)
「あなたはここにいていいの。ここにいれば怖いことはなにもないの」
抱きしめて、そんなふうに囁きかけたい。
この世界が、すべての幼い子どもたちが安心して過ごすことができる環境ならいいのに。
だけど、現実はそうじゃない。
「これまで経験することのできなかった、この世界の何かの平穏を」
この一文に抉られる。
「経験することのなかった」ではなく「できなかった」。
涙が零れた。
そして大人は己のしでかした愚かしい行為について、容赦なく断罪されるがいい。
だけど、その行為が意識下で操られたものだったら?
戦慄するしかない。
私は私。
迷いなく言える自分でありたい。
文庫化待ってた!
久々の中村文則作品読了後に深いため息。
感覚的に馴染んだ彼の作り出した世界に浸れる幸せ。
「色悪作家と校正者の多情」菅野彰 (ディアプラス文庫)
亭主関白を地で行くような男だと思っていた大吾が見せた子らしさ。
というか、勝ち目のない相手に戦いを挑む愚行。
それは嫌いじゃない。むしろ好き。
挑んできた大吾を撃沈した瑤子さん、カッコいいなぁ。
大吾の気持ちを勝手に慮って、見当違いな痛みを募らせていく正佑。
自らの想いは言葉にしなければ伝わらない。
初めての恋愛に戸惑う正佑が必死で口にした胸の内。
他人に共感する力が低いと自覚のある大吾が、正佑を理解しようと歩み寄る。
この二人、一緒にいることでちゃんと成長している。
同時に愛情も深まっていっていることが汲み取れるのが嬉しい読後。
私にとってのネズミの国は誰だろう?
問われたら迷わず即答。
一秒だって時間はいらない(笑)
オスカー・フォン・ロイエンタール。
そして氷室上総。
拗らせてると言われても、彼らが私の双璧。
「血涙・下」北方謙三 (PHP文庫)
何のための戦いか?
と、己の中で問いかけながら読み続け、
最重要な局面での、味方のはずの軍からのあんまりな仕打ちに
「またかよ!」とギリギリとした思いを噛みしめる。
なんなの、この理不尽。
使い捨てられるとわかっていながらも
全力で戦いに挑んだ楊家の者たちが痛々しい。
これが「国家」という柵に縛られるということ。
やりきれない。
国の在り様を真摯に論じる次世代を担う若者たちの姿が唯一の救い。
二人の偉大な父を持った彼の苦悩と再生が
個人的にはクライマックス。
誰も彼もが結局は父の遺志に殉じた。
滅びの美学。
そんなものはいらない。
生きて欲しかった。
個人的には白き英雄を見送ったところで「完」で良かったわ。
ああ、でもそうすると副題が『新楊家将』ではなくなってしまうかしら?
楊家の男たちの死が理不尽すぎて、憤りとやるせなさしかない。
この作品で北方登録数100冊!
記念すべき節目(?)の作品で何故か憤っている私(^^;
「毎日晴天!2 子供は止まらない」菅野彰 (キャラ文庫)
きっちりと整えられた襟元。
シャツの下に隠された業。
寂しかっただけなのに。
招いた事態が後に誰にどんな影響を及ぼすのか。
思いめぐらせるには、彼はあまりにも子どもだった。
「他人やから」と。
それが自分の役割だと、
帯刃家のアンバランスさを看過できずに叩き壊した勇太。
生まれながらに一緒だった家族は、いつか離れ離れになっていく。
それを惜しむ真弓の心情が刺さる。
少なからずの別れを繰り返して、人は大人になっていく。
だけど。
一生の宝となる出逢いもある。
そうやって人は「家族」を築いていくんだね。
でも彼らはまだしばらくは一つ屋根の下。
そのことに安堵する。
この巻を読み終わり、そして5巻のタイトルを見て、
こんなに展開早かったんだ~、とちょっとびっくり。
なんかもっとゆっくり進行していたイメージだけど、
10年以上続きが出なかった時期があったからね。
そりゃあ、時間間隔わからなくなるわ(笑)
止まっていた時間が動き出してくれて本当に良かった。
「血涙・上」北方謙三 (PHP文庫)
過去は失くしたままの方が幸せだったかもしれない。
だけど、貴方は思い出さなければいけない。
自分が何者なのかを。
そして、選ばなければならない。
自らが、どう、生きるのかを。
彼の苦悩も辛いけど、
耶津休哥と簫太后の対応が素晴らしすぎて泣ける。
それに比べて宋!
勝手な事ばっかり並び立てるくせに、苦しいところは楊家軍頼みすぎて腹立たしい。
人材不足のくせに、何故戦おうとする?
楊業の後を継いだ六郎が頼もしく成長しているのが嬉しい。
七郎と九妹の連携した戦い方が好き。
なんの柵もなく、彼らが自由に原野を駆けることができたのなら、と思うけれども。
それは戯言。
出てきましたよ、吸猛犬。←何この変換!
正しくは吸毛剣!
ここから『水滸伝』そして『楊令伝』へとつながると思うと、感慨深い。
「男は自分がどうあるか、自分で決めればいい」
北方の美学。
女だって自分で決めたいと思います。(笑)
「毎日晴天! 1」菅野彰 (キャラ文庫)
初読は20年前か~、と思うと、なんだか感慨深い。
菅野さんの文章も若い。
ドタバタ始まりのシリアス展開。
どんなに言葉を尽くして説明しても、届かないことがある。
誰かの言葉ではなく、自ら気付かない限り、そうだって認識はできない。
だから、秀と帯刀家の面々との距離感がやるせない。
最初から幸せを諦めてしまっていた秀。
幸せを望む事すら思いつかなかったかのように。
そんな秀と共に過ごしてきた勇太の老成っぷりに涙出そうになるわ。
帯刀家には「寂しい」人を寂しいままにさせないパワーがあるけど、
それはみんなが秀を好きだから。
ちゃんと伝わってるといいね。
というわけで、このシリーズの再読に着手。
16冊+外伝。
今まで一冊一冊、どんなに間があいても追いかけて読んできた作品を
一気読みできる幸せ☆
最大5人いた我が家も今は一人抜け、二人抜け……でだいぶ静かになりました。
帯刀家の賑やかさを懐かしく想いつつ……と回顧してたら、
夏休みがくるんだわ。
ちびっこたちがやってきて、総勢6人での生活が暫し。
あら?増えてる(笑)
「逆説の日本史9 戦国野望編」井沢元彦(小学館文庫)
いざ戦国!と勢い込んで頁を捲ったら、
最初は「琉球の興亡」次が「倭寇の歴史」。
ここで、あれ?戦国どこ?とはならずに大変興味深く読ませていただきました。
こういうところを取り上げてくれるのが井沢節。
鉄砲伝来、すぐさまの国産化、欠かせない硝石を巡る国際貿易の重要性。
現代にも通じる商業ルートの発展の原理。
なるほど、と頷くことしきり。
三章以降で時代は戦国へ。
北條早雲、毛利元就、上杉謙信、武田信玄、そして織田信長。
各々の武将にスポットをあてつつ、展開してくれている論旨がとても面白い。
川中島の合戦で決着がつかなかった理由に納得。
「三本の矢」の真実にはびっくり。
馴染のある名前が続々と。
とはいえ、私のこの時代の知識って『炎の蜃気楼』に寄るところが大きいから、
史実かどうか胡散臭いことこの上ないのです(笑)
■行った場所:今帰仁城跡・中城城跡・首里城・小田原城・宮島
■行きたいところ:建勲神社(御朱印帳欲しい!とても欲しい!)・石見銀山・
沖縄は色々踏まえてもう一度ちゃんとまわりたい。
■読みたい本:『下天は夢か』島津陽
「光の雨 ―贖罪―」かわい有美子 (幻冬舎ルチル文庫)
猟犬とか尖ってるとか称される剛毅な男が見せる
きめ細やかなやさしさと包容力。
たまらなく素敵。
野々宮という支えを得て自分を取り戻し、
堅実に仕事と向き合う伊能もやっぱり素敵。
ラストの被疑者と向き合うシーンはとても良かった。
だけど、決して光の中を歩くことはできないと、
自らは深海魚なのだと諦念と共に達観している原口の気持ちを想って
なんか泣きそうになってしまった。
うわーん。
検事の仕事ぶり、ヤクザ世界の理不尽さ、人が人を想う気持ちの奥深さ。
どれも丁寧な描写で読ませてくれた地に足のついた物語。
ガッツリ楽しませてもらいました。
欲を言えば、原口視点の話が読みたいなぁ。
って、私、どんだけ原口好きなんだろう?
かわいさんも地道にコツコツ攻略していきたい作家さん。