きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「パブリックスクール -ツバメと殉教者-」樋口美紗緒(徳間書店)
酷い環境下で育ってきたにもかかわらず、
クリアでやさしい気持ちを損なっていない二人の恋。
立場がまったく違えど、自分を殺して他者の為に懸命に献身する二人の姿が痛々しい。
親の庇護がなければ生きられない子どもに対する、その親からの虐待は本当にやるせない。
そして、学校という世界の中に存在する差別や偏見による階級差。
なんとも息苦しい世界で生きる子どもたち。
そんな中でも諸般の事情を俯瞰して、裏で色々糸を引いていたメンベラーズに感服。
散々辛い思いをしてきたスタンとケイトには、今度はお互いの為に心を砕いてもらいたい。
甘やかな日が続くことを願うわ。
出来上がってみれば、スタンがヘタレで犬属性だったことに、微笑ましい気持になってみた。
最終的にはケイトが無自覚に手綱を握っている関係になるんだろうなぁ、という漠然とした思いは、
小冊子を読んで確信に変わりました。
アルバートには周囲の人たちにどれだけ感謝してもし足りないという事実を
胸にしっかり刻んで欲しい。
このシリーズ好きだわ~~、と改めて実感したお借り本。
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「ボビーZの気怠く優雅な人生」ドン・ウィンズロウ (角川文庫)
ザ・エンターテイメント!
諾でも死。否でも死。どっちにしろ崖っぷち。
へなちょこな泥棒が伝説の麻薬王になりきって、生き抜くことができるのか?
そして、自分の命すらままならない状況下で、庇護すべきものを抱えてしまったら?
それは、自らの行く手を遮るお荷物にもなり得るし、
持てる力以上のものを発揮できる原動力にもなる。
ティム(27歳)とキット(6歳)のコンビが殺し屋たちの魔の手を躱していく様が
とても楽しくて、時にホロリとくる。
キットを守るためにへなちょこを脱していくティムの成長物語……とは言いすぎか。
へなちょこが最後にみせた決死の覚悟。
おもしろかった。
顔に生涯癒えない醜い傷を刻むと脅され、
口紅でその傷を描くような線を引いたエリザベスの姿が印象的。
誰かのために戦える人たちの芯は容易には折れない。
あとがきの出だしの四行に大笑いして、そのノリわかるわ~、と納得の読了。
次のウィンズロウは、出版順通り『野蛮なやつら』→『キング・オブ・ルール』といくか、
前日譚の『キング・オブ・ルール』を先に読むか。
悩み中。
「氷刃の雫」水壬楓子 (ガッシュ文庫)
急逝した父に代わって組の代紋を継ぐことになった一生。
期間は二年。
せめてその間だけ、五年離れても想いを殺しきれなかった男の傍で。
諦念に塗れた想いがやるせない。
イギリスでのきままな独り暮らしから一転、柵を背負ったヤクザの世界へ。
懸命に頑張っていたけど、そりゃあ、逃げ出したくもなるよね、という事態へ。
そこからの巻き返しが凄かった。
囚われた想い人。
結局、蛙の子は蛙。
日本刀を手に秀島を救出しに行った一生。
その姿を目の当たりにした組員はそりゃあ、心酔するだろうね。
余りにも痛々しい一生の幕引きに、秀島からのまさかの反撃。
とても良かった。
ラストに全部持っていかれました。
本来は笑い処がどこにもないはずなのに、
最後の最後で「直江(@ミラージュ)がいる!」と思わず爆笑。
直江を彷彿とさせる狂犬がいたわ。
直江よりよっぽどソフトだけど。
直江ほどネチっこくないけど。
そもそも「直江がいる!」と叫んだ私もどうかと思うけど、
叫ばずにいられなかったほどの直江仕様。
秀島と直江が重なって妙な愛着が湧いてきました。
「三国志10 ~帝座の星」北方謙三(ハルキ文庫―時代小説文庫)
張飛の悲しみと声なき慟哭が最後まで聞こえてきて。
胸が押しつぶされそうになりながら読了。
再読でもダメージ半端ないわ。
その最中に落ちた巨星。
一つの時代の終息……と言い切るには早いか。
彼の存在感の大きさを改めて思い知らされる。
「冬に舞う蝶」この章タイトルがとても好き。
時を待つ時間は確かに必要だったかもしれない。
だけど、蜀に必要だった時間が呉に策を弄させる時間を与えたのだと思うと、
口惜しい。
酒に溺れた時点で、生じた隙。
だけど、悲しみを呑み込むにはそれしかなかった。
そんな一面があるからこそ、愛された彼。
張飛の名を呟く陳礼に涙が止まらなかった。
「長い旅だった。そして面白い旅だった」
曹操はある意味、やりきったと思う。
死に際にこう言えたら最高だね。
やり残したことはあっても楽しかった。
例えば明日死んでも、そう言い切れる人生であるといい。
「LOVE and EAT~榎田尤利のおいしい世界~ 」(SHYノベルス)
榎田さんの作品世界のお料理を実際に作った写真と、
懇切丁寧なレシピがついている上に、
その後の彼らの姿まで垣間見られるという、
眺めていて楽しくて、読んでとても幸せになれる本。
レシピの中のお料理が実際に作中に出てくる楽しいお話は
『ペットラバーシリーズ』の彼らと『交渉人シリーズ』の彼ら。
轡田とユキが大のお気に入りの私的には小躍りしたくなる感じでした。
フィルム映像を観ているかのような、奈良さんのカラーのイラストストーリーも素敵。
お料理本としても素敵だけど、これは絶対に榎田さんの作品を読んでから眺めると
幸せ度が倍増しになると思うの。
お友だちと一緒に半日かけてレシピ本を見ながらお料理を作って、
出来上がったお料理を食べながら存分に榎田さんの作品を語る会。
うん。
機会があったらやってみたいなぁ。
ものすごく楽しそう。
そして会話はものすごく脱線していきそう(笑)
「ラブセメタリー」木原音瀬(集英社)
想像、或は妄想の世界は当人の自由。
その中でどんな行為に及んだところで、誰にも咎められることはない。
だけど、その妄想をリアルに実行してしまったら、それは犯罪。
その中で踏みとどまることができるか否かが
ひとつの分岐点であるのだと思う。
辞めることのできない薬や煙草と同じ。
一度手を出してしまったら、次へ、次へと手が伸びてしまう。
禁断の味を知ってしまわないように、懸命に踏みとどまろうと自制する久世と、
欲望の誘うままに手を伸ばして堕ちてしまった森下の人生がとても対照的。
思考そして嗜好。
本当に、どこから生じてくるものなのかしらね。
最初から町屋が自分の素性を明かしていたら、
町屋と久世はせめて友だちになれなかったのかしら?
とチラリと思ったお借り本。
無理かな。どうだろう?
久世は自分のモノも汚いって思ってるのかな?
とも思ってみた。
「すみれ荘ファミリア」凪良ゆう (富士見L文庫)
美寿々の生き方はとても好感が持てる。
彼女の定義した自然体。
しんどいながらも自分が楽に呼吸できる環境って大事。
隼人の人との付き合い方は、納得できる部分と、そうじゃない部分と。
裏表のある人間は、私だったら切り捨てる。
じゃないと、自分が疲れちゃうから。
青子の執着は気持ち悪い。
それは他人に対する愛情じゃなくて、ただの自己愛と自己憐憫。
母になったことのない私は悦実を糾弾することはできないかな?
だけど、彼女の子どもに対する在り方は納得できない。
身に降りかかった理不尽の全てを許した一悟。
虚無の中から漸く立ち上がろうとした央二。
二人のこれからが穏やかでありますように。
引き算どころじゃなく、色々バッサリと切り捨ててしまった私は、
みんなやさしいなぁと思ったり、じれったかったり。
切り捨てるのは簡単なんだよね。
だから、曖昧なまま見ないフリをしてゆるく続けていくスタンスの付き合いが
できる彼らがすごいなぁ、と思います。
まぁ、自分がそうできるかどうかは別(笑)
軽く読める本かと思って読み始めたら、色々考えさせられたお借り本でした。
「B.B. con game」水壬楓子 (ガッシュ文庫)
庇護される者ではなく、共に戦い並び立つ者へ。
出たよ、私の大好きな「双璧」が。
先にその結論に達していた真砂。
直情型なだけに回り道しないところがイイね。
一方、その関係の心地の良さに気付くまで回り道した千郷。
気付かせるに至るまでの事件の縺れっぷりと男たちの立ち回りは
とても面白かった。
ここからが、二人で紡ぎだす物語の始まり。
ある意味、先代の腕の中からの巣立ち。
お互いに言いたいことを言いあって、全力でぶつかればいい。
新しく築きあげられた二人の関係をもうちょっと見ていたかったなーと、
名残惜しい思いで読了。
艶やかでゴージャスで妖艶。
朝倉の全力の女装、イラストで見たかった。
とても見たかった!
迫力ある美女、大好きです☆
「B.B. baddie buddy」水壬楓子 (ガッシュ文庫)
見た目は眼光鋭い大型獰猛犬。ガチ武闘派の本格ヤクザ。
腕っ節も十分で、暴力沙汰もお手のもの。
なのに。
なーのーに!
一つのカップを二人で分けあう夜明けのコーヒーに胸キュンですって!?
何なの、この可愛いイキモノ……というわけで、私が真砂に対してキュンとしました。(笑)
亡くなった先代の存在抜きに語ることのできない千郷の現在。
「這い上がれよ」
「自慢の男になれよ」
その言葉通り、ここまでの地位を築いたのは自らの才覚。
改めて極道として生きていく盃を交わした千郷と、極道以外の道などないであろう真砂。
最良のbuddyとして上り詰めてほしい。
漫画のカバー下すら確認することを怠ることがよくある私が。
小説のカバー下なんて確認したことがなく。
何気に捲ったら現れたとても楽しいSS……あら。
今からウチの膨大な小説のカバーを一冊一冊捲っていく根性はないよ~~(涙目)
「死の泉」皆川博子 (ハヤカワ文庫JA)
「生きる」ということが、とてもとても息苦しい世界を生きた彼ら。
それでも、精一杯運命に抗い、持てる力と知恵を振り絞って生きてきた子どもたち。
あらゆる事象を諦念と共に受け入れ、ひっそりと息をするしかなかった彼。
自らを「死人」と称する子ども。
護ろうと必死で伸ばした腕の無力さに打ちのめされる大人。
自らの思い描く歪んだ世界のなかで力を振り翳す男。
点と点が不可思議な文様を描く線で繋がれ、絡まりあっていく。
もはや、幸せを願う余地がどこにもないほど、捻じれてしまった彼らの人生。
だけど、生きようと躍動する命が眩しくて哀しい。
20歳そこそこの私の人生観に大きな一石を投じた「白バラ」。
ゾフィー・ショル。貴女にまたここで出逢うなんて、と。
本筋と関係ないところで泣いてしまった。
若くして散ったあなたたちは、永遠に私の痛みであり、宝でもある。
思いがけない邂逅に、皆川女史に感謝。
ありがとう。