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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「君だけが僕の奇跡」千地イチ (ラヴァーズ文庫)



白黒のモノトーンしか認識できない視界の中で生きてきた慎吾の眼に飛び込んできた極彩色。
それは世界がひっくり返るだろう。
その色を与えてくれた武にすがるように執着するのも理解できる。
そんな色を慎吾に与えた武は、過去の出来事に囚われたまま、
世間から身を隠すように生きてきた。
慎吾の歌声はそんな武の閉ざされた世界を解き放っていく。
ミュージシャンと画家。
二人が出会った瞬間から織り成される奇跡の物語。
子どもたちや仕事仲間、友人知人。
彼らが多くの人との接点を持ちながら成長や変化を遂げていく様が良かった。
とても綺麗なおとぎ話。
なんだけど!→


基本的にはあるがままを受け入れる派だし、
リバも気にしない。むしろウェルカム。
でもどういうわけか、この作品に限っては読み進めるうちに右左勝手に固定化されちゃって、
ああ、私の中では逆だったの~~!と、呆然。
うっっっ、私が悪い。


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「ドリアン・グレイの肖像」ワイルド (光文社古典新訳文庫)



彼の人生における分岐は二つ。
一つはヘンリー卿に出逢ったこと。
ドリアンが自らの言葉に影響される様に悦びを見出し、
彼の精神を意図的にコントロールしようとし、それを楽しむ嗜好に
込み上げる腹立たしさ。
もう一つはそのことに気付きつつも、
ドリアン自身の意志でヘンリー卿の示した在り様に甘んじたこと。
その瞬間、彼の運命はすべて己自身の選択の上に積み重ねられていく。
彼の悪行を写し取って歪んで行った肖像画。
たった一度の善行で、何故今まで積み重ねてきた悪行が消化されると思ったのだろう?
変わらない絵に絶望したドリアンにはやるせなさしかない。


ヘンリー卿に天罰が下ればいいのに、と、
ギリギリとした想いを噛みしめた読み始め。
破滅に至ったのはドリアンの精神の弱さかな。
ヘンリー卿並み、もしくはそれ以上の精神力があったら、
全ての悪行を背負って微笑みの仮面をつけたまま生きていけた気がする。
思っていたほど練ったり凝ったりした文章じゃなく、
読みやすかったのは想定外。
これはまた再読したい。
その時はもっと時間をかけてじっくりと味わいたい。
←初読の時はどうしても先へ先へと駆け足になっちゃうので。
【ガーディアン必読 80/1000】


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「華の闇」榎田尤利 (SHYノベルズ)



「幸福になる勇気」という言葉が刺さる。権利ではなく勇気。
吉原で暮らす遊女たちの生き様はあまりにもやるせない。
男遊女として吉原に身を置く華嵐とかつて想いを寄せた貴師との再会から始まる物語。
離れ離れになってもそれぞれの心に熾火のように残っていた想い。
立場の違いも相俟って、
歪にゆがみ、素直になりきれず、露悪的に振る舞って強情を張る。
そんな二人の想いが次第に浄化されて濁りのないものになっていき、
ただ純粋に愛しさ吐露して永遠の愛を誓う。
そこに至るまでの二人の在り様が見事に描かれていた。
雪の中での貴師の告白、良かったなぁ。
ああいった形での男の弱音の吐露。
胸キュン以外の何物でもない。

一度読んで手放して、買い直しての再読。
内容全く覚えてなくて、どんな読み方してたんだ?自分?とガッカリというか、びっくりというか(苦笑)
おかげで楽しく読めたのは……いいことってことにしておこう。
宮木さんの『花宵道中』が読みたくなる。

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「暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出」綾瀬まる 新潮社



どんな災害に見舞われたとしても。
命ある限りその過酷な状況下で人は生活していかなければならない。
当たり前のものが当たり前でなくなった瞬間は、ただ必死だ。
明日に命を繋ぐために。
当時の状況を著者が見たまま、体験したままに綴られるノンフィクション。
自分のことで手一杯な時にでも、持てるものを誰かと分かち合おうとする人の優しさがあたたかく染み入ってくる。
その一方で、情報を隠蔽したり、差別をしたりといった行為も後を絶たないことがやるせない。
人は「自分の身に降りかからないとわからない」。
だからこそ、語り伝えていかなければならないことがある。
知ろうとしなければいけないことがある。

今年の震災関連本はこの本をチョイス。
そのタイミングで「あの日の星空」というドキュメンタリー番組を放送していて、
引き合うものってあるんだなぁ、と表紙を眺めながら思ってみました。
震災後しばらくはガソリンは1/3を切ったら給油していたんだけど、
最近はもうちょっと減らしちゃうこともあるので、そこはちゃんとしようと思った。
いざって時のガソリンの有無は生死を分けるくらい重要。
ウチはタイミングよく満タン近く入ってたから必要な時に車が使えて助かった。
そうやってちゃんと備えはする。
だけど、もう二度と、遭遇したくはないよね。




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「愛に跪く時」英田サキ (ビーボーイノベルズ)



素晴らしい筋肉!素晴らしい肉体美!
そのふくらはぎ……触りたい。
と、特別に筋肉フェチでもなかったはずの私にも眼福のイラストにうっとり。
古代ローマを模した時代に生きる剣闘士・ドミナトスと貴族・ルキアノスの物語。
そもそもが意地の張り合いから本心を押し隠して始まった関係は
なかなか甘い雰囲気に至らずにやきもき。
言葉足らずで自己内省ばかりの二人は過酷な環境下での擦れ違いから
今生の別れかっ!という危機に瀕するけど、
いろいろと間に合ってよかった。
死を覚悟したドミナトスがルキアノスの寝所に忍んでくるシーンが好き。

北方脳な私は、過酷の旅での馬の大切さは良くわかってる。
馬が倒れたらその先には思うように進めない。
だから馬と自分を比べる必要なんてないんだよー!
と、声を大にして言いたかったお借り本。
でも朝ごはんは一緒に食べてあげようよ、とも思った。
二人いるんだから一人で食べるのは味気ないよ~。

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「楠木正成 上巻」北方謙三(中公文庫)




北方フレーム(命名・私)ってあるよなーと思う。
国が潤い、人が生活をしていくために必要な物は何なのか。
戦うためにどんな準備をすればいいのか。
どんな想いをその胸の内に秘めているのか。
こういうテンプレがぶれないから、どの国どの時代の作品を読んでいても、
ああ、北方だわ~~、というホーム感がある。
鎌倉末期から南北朝へ時代が動く。
自らの在り様を見据え、どうすれば生き延びることができるのかを考察する悪党たち。
その在り様がたまらなくカッコいい。
熟考を重ね、市井に混じり、時代を読み続けた楠木正成の決意が明確になったところで次巻へ。

北方中国史は予備知識ゼロでものめり込めるけど、
本書は日本史に関する予備知識があった方が断然入り込める。
この本、積みっぱなしのまま何年も放置しちゃったけど、
『逆説の日本史』を鎌倉時代まで読み進めたらどうしても読みたくなって手に取りました。
うん。
言葉は関係性や背景が理解できるようになっていたので、そのタイミングで正解。
この勢いで『悪党の裔』と『道誉なり』も読みたくなる。
そして、公家が顕家にやらかしてくれたことを反芻して憤り……私、どんだけ顕家が好きなんだろう(笑)

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「貴公子司書の溺愛ライブラリー」伊勢原ささら (幻冬舎ルチル文庫)



フリーターだった愁が好きと適性を活かした図書館司書になり、
成長を遂げていく物語。
そのきっかけを与えてくれたのは図書館館長の都築。
この都築が私視点ではダメ男でした(笑)
仕事を一生懸命覚えて自分なりにこなしていこうと頑張っていた愁の態度は好印象。
与えられたチャンスをモノにしたのは自分自身の努力の賜物。
だからこそ、一社会人として
「公私混同しても無理はないだろう?」の台詞に「いや、ダメっしょ」と突っ込み、
ペーパーの「君を養わせてくれ」には「いや、違うっしょ」と言いたい。
本に対する愛情が溢れんばかりに伝わってきたのがとても嬉しい。

「美形司書たちが女性客を接待する執事カフェのような民間図書館」
なんだそれ??な帯だけど、まさにその通りの世界が展開されていました。
上手いなーとは思ったんだよね。
残念ながら私は図書館には行かない人なので、行きたい感は皆無でしたが(笑)

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「逆説の日本史5 中世動乱編」井沢元彦(小学館文庫):



鎌倉幕府の成立から滅亡まで。
何故源氏と平家は戦うことになったのか。
それは「源平の争乱ではなく独立戦争である」とする論拠を
展開していく著者の考察がとても興味深いし、頷いてしまう。
戦略に重きを置いた頼朝と、
戦術に長けた軍事の天才の義経。
共闘からの離反。
東北人だから義経贔屓になるのは致し方ない。
それを差し引いても頼朝にイラッとしながら読み続けたけど、
最終的には彼の在り様に納得してしまった。
時代の先読みができた北条氏。
そして、承久の乱を経ても朝幕が併存してきた要因は、
日本人であるが故に理解できてしまう。

情報量が膨大過ぎて、知識を定着させるためにすぐさま再読したくなる。
著者曰く・義経は日本史上初のアイドル。
私曰く・義経イメージは滝沢秀明。
著者曰く・頼朝と秀吉は「バカツキ男」(ツキがある男)。
友だち曰く・頼朝と秀吉は大っ嫌いな歴史上の人物。
友だちが二人の名前を出した直後に読んでいる箇所に二人の名前が出てきて、
更に別な友だちが修善寺温泉の話をした直後に読んでいる箇所に修善寺が出てきた不思議。
引きあうものってあるんですね~。
■行った場所:鶴岡八幡宮/中尊寺
■行きたい場所:屋島寺(香川)
■読みたい本:『義経』司馬遼太郎

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「弁護士は恋を自白する」榎田尤利 (SHY NOVELS)



プロのダンサーを目指して単身NYに渡った潤也と、
そこで出会った弁護士のアシュリーとの物語。
セオリーだったらこういくんだろうなーという想像を軽く飛び越えた、
想定外すぎた展開がおもしろかった。
すべての流れを良い方に導いたおばあ様のお言葉はとても素晴らしい。
後半はダンサー仲間のリックとショーンの物語。
考えが足りないなりに実は一生懸命考えているショーンがとても可愛いし、
臆病さを捨て、恋愛にのめり込んだリックは溺愛系で素敵。
こちらは王道展開。
ガツンとしたインパクトも王道も堪能できるお得な一冊。
共通項は勿論ラブ☆


アシュリーのメンタルが安定してなさそうだなーとは思ったけど。
それにしたってまさかの行動にびっくりよ。
一方で、単身でNYに移り住んできただけあって、潤也の肝の座り方は爽快だった。
現場に乗り込んだシンとジェレミーの誤解しまくった二か国放送も愉快。
潤也が英語を理解していないと思い込んでのアシュリーたちの会話と
それに対する潤也の突っ込み等々の、通じ合っていないやり取りも楽しい。
日本語と英語の使い分け(全部日本語表記だけど)がうまいなーと思ったし楽しかった。





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「親不孝通りディテクティブ」北森鴻 (講談社文庫)



まさか読後にこんなにやるせない気分になるとは思わなかったわ。
中洲の屋台を起点とした6編の短編連作。
本職は屋台のバーの経営者・テッキと結婚相談所の調査員・キュータが
事件に係り、その事件に纏わる人と係り、
最終的には自らの人生が大きく変わってしまう物語。
や、一方的に悪意を向けてきた過去と一本につながった必然……
と言ってしまうのはやっぱりやるせないし理不尽。
悪徳刑事もいい味出してたよ。
人間の弱さ、ずるさ、やさしさ。
人生のままならなさ。
コミカルな展開の中からじわっと滲んでくる。
「帰りたい」の言葉に抉られて読了。
うん。みんな待ってる。
でもキミはそこから動けないんだろうなぁ。



「これメニューね」とカクテルブックを渡されたバーが印象的。
「ここに載ってるのは何でも作れるから」とにこやかに笑う店主。
出てきたお酒は予想外にちゃんとしてて(ごめん・笑)美味しかった。
或は。
「XYZ」というオーダーに対して「すみません。作り方がわかりません」と
頭を下げたバイトの子。
このお店も好印象。
あー、バーに行きたくなったわ。




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